時間圧縮



 
歪む景色
身体の側を流れていく光景
様々な場所や時間が、幾重にも重なって見える
視界の隅を掠める見知った人や見知った場所に気を取られそうになりながら、スコール達は歩みを進める
未来へ
時間圧縮の終点、魔女の元へ
「おい………」
辺りの様子が徐々に変わる
幾重にも重なっていた光景が見えない
けれど歪んで見える光景は、見知ったもの、見覚えのないもの、僅か面影を残すもの
終点は近い
そう感じた瞬間に、遠く人影が現れた

見覚えのある景色と見覚えのない魔女
ずっと戦いの間中、言葉にならない魔女の声を感じる
恐れ、不満、憎しみ、そして悲しみ
誰かへと向けた感情が真っ直ぐに突き刺さる
感情のままに繰り出される様々な魔法攻撃
幾人目かの魔女の姿に、彼等は機械的に武器を構え、武器を振るい戦いを続ける
「きりがねぇ」
“魔女”を倒し足を進める毎に変わる景色
新たに出現する“魔女”
同じようにぶつけられる負の感情
性質の違う魔法の攻撃
手際良く戦い魔女を倒す
それを幾度か繰り返す内に浮かぶうんざりした表情
際限なく繰り返される戦闘に、武器を握る手が汗ばむ
身体が疲労を感じる頃、唐突に視界が変わった

空一面を覆う黒く厚い雲
風も通らないよどんだ空気
重くのしかかる陰惨な………
「ここが未来?」
破棄の無いけれど嫌悪勘が滲む声
何処までも黒い世界の中にただ一つ浮かぶ色彩
中空に浮かぶ巨大な城の姿
―――あれが“魔女”の居城
「ここから行けるようね」
城へと続く1本の鎖
留めるように繋がれた鎖の元を1人の兵士が両腕で抱え込んでいた
「………行こう」
息絶えたそのすがたに黙礼し、スコールは“魔女”の居城へと足を踏み出した
 

 To be continued


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