魔女アルティミシア2



 
辺りを吹き抜ける憎悪
正面から容赦なく吹き付ける感情に、気分が悪くなる
絶妙のタイミングで解き放ったはずの攻撃
それのいくつかは魔女の身体をとらえ
いくつかは魔女へと届かなかった
辺りを吹き荒れる嵐
魔女から解き放たれる魔法が、嵐の中に閃く雷の様に辺りへ散る
魔女の笑い声が、高らかに響く
周囲に反響し幾重にも響く声
声に阻まれ、スコール達が互いへと向ける声が聞こえない
嵐の中心に、魔女が姿を現す
蹌踉めきながら、不安定な足取りで、ゆっくりと近づいてくる姿
スコール達は、まるで申し合わせたかのように武器を構える
魔女の歩みが止まる
笑い声が止まる
何事かを呟く声
低く微かな声
何を言っている?
意識を向け耳を向けるのとほぼ同時にに魔女の声が響き渡る
「恐怖を、お前達に最高の恐怖を」
再び歪み始める視界
“魔女”がなんらかの魔法を発動する
「お前達がもっとも見たくはない光景を、お前達がもっとも逢いたくは無いものと逢わせてやろう!」
憎悪に満ちた言葉が、身体を取り巻いた

戦場に見合わないモノが見える
色とりどりの花
戦場に見合わない香りがする
あまやかな花の香り
―――これが魔女の術?
ふわりと意識の憶測で浮かんで消えた言葉
スコールは戸惑いながら、花々の中へ足を進める
―――これが見たくはないモノ?
―――そんなはずはない
浮かんだ事を意識するよりも早く消えていく言葉
スコールは右手にガンブレードを引き下げ、何かに導かれるように足を進める
どこまでも続く花の中
スコール以外には何もない、誰もいない
ここは、どこだ?
わき上がった疑問に答える者は居ない
ここで、何をしている?
思い浮かんだ疑問に答える記憶は無い
困惑した表情を浮かべてスコールは花の中を歩く
そして、歩き続ける足にふと触れた感触
足の先に当たって跳ね返る、堅い石の感触
自然、スコールの視線が足下へと向かう
目に映ったのは一枚の墓石
―――誰の
目をこらし名前を見ようとしたそのとき、三度視界が歪んだ

目に見える光景は枯れ果てた花畑
どこまでも続くその中に見える幾つかの人影
逃げまどう影が1つ
追い立て取り囲む複数の影
次第に大きくなる姿
判別出来た顔に、スコールは弾かれるように走り寄る
悲鳴が、上がる
すぐ近くで上がる赤い色
のばした腕は届かない、血を流して彼女が倒れる
枯れ果てた花が次々と赤く色づいた

 To be continued


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