魔女アルティミシア10
とぎれとぎれの言葉が聞こえる
所々の聞き取ることの出来ない言葉
嘆きの言葉
“魔女”の口から言葉が零れる
おぼろげに浮かび上がる遠い昔の記憶
もう、無くしてしまったと思っていた記憶
私がまだ私で
ただの人だった頃の記憶
魔物達の中から初めに見た“魔女”の姿が現れる
耳に聞こえる問いかけの言葉?
とぎれとぎれの言葉が止み、“魔女”の口元に微笑みが浮かぶ
再び姿を現した“魔女”を貫いた幾つもの………
流れ出していく幾つもの記憶
幾代にも渡った“魔女”達の記憶
彼女達が残した怨嗟の記憶
―――人々に、世界に否定された私達の絶望
そして繰り返される安堵と罪悪感
―――次代の魔女へと力を引き継ぎ漸く時を終える事の出来る安堵感、力を引き継いだ相手を同じ境遇へと突き落とすことの罪悪感
蓄積されていく感情の数々
世界に対する絶望、怒り
魔女という存在を作り出したモノへの強い憎しみ
―――平穏に過ごした幼い頃の記憶が遠くなればなるほど、全てに対する憎しみの感情は強く
時を重ね、代を重ね、暴走する感情
―――“魔女”は個の存在では無くなり、力の継承と同時に“魔女”という存在そのものも引き継いだ
世界に否定されたが故に、自分以外への憎しみは強く激しく
“魔女”を支配した滅びの願い
滅ぼすために必要な巨大な力
より強い力を手に入れる為に取り込んだ幾つもの“魔”
暴走する思考
全てを失い、残されたのは“滅び”への願い
………私が知らなかった事の数々
長い間引き継がれてきた記憶と感情
“魔女”へと変わった“彼女”へ向けて放たれた否定の言葉
救いの無い言葉の数々
―――全ての始まり
“私”自身に深く食い込んでいた“魔”の存在が1つずつ離れ落ちていく
“私”から何もかもが取り払われて………
身体の四方に感じる強い衝撃
“私”の存在が分離する
“私”と私ではない私へと………
一呼吸分の間を置き
“魔女”の身体から大量の魔力が放出される
辺りを染める強い光
“魔女”を中心にして広がっていく衝撃
目に見える光景が白く染まる
僅か、目を瞬く間に消える光景
―――未来に在る魔女の城の崩壊
「………終わった?」
力無く零れ落ちた誰かの言葉
つい先ほどまで戦っていた存在は、居ない
「―――終わったな」
魔女は倒れた
To be continued
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