はじまり2
他の人が誰も持たない力
誰よりに強い力
欲した力は近くに存在した
身近に在る人ではない存在の元―――モンスターの中に―――
聞こえた声の主が、死に行こうとしていたモンスターだったのか
それとも、見ることも叶わない別の存在のものだったのか
今はもう知るすべの無い過去の事
今更知っても意味の無い事
手に入れた力はモンスターの持つ力
―――魔法の力だった
潮騒が聞こえる
穏やかに回復する視界に映るのは海
サイファーは足を止め、辺りを見回す
視線を向けた先、眼下へと映る海辺へと立つ小さな建物
遠い記憶のままの姿を留めた、孤児院
風に乗って声が聞こえる
建物の中から現れる人影
薄れた記憶の中の光景
子供の頃の自分たちの姿
―――昔、か
サイファーは見知った時代にどこか安堵を覚える
身体の強ばりが解け
無意識のうちに息を吐きながらサイファーは何気なく視線を動かした
孤児院へと続く道
自分たちが駆け抜けたその場所に蹌踉めきながら歩く人影が見えた
人の持たない力
強大な力
手に入れた力はあまりにも絶大で
人は―――私は―――その力に溺れていった
その力の意味も知らず
その力に込められた呪いも知らず
“敵”となる者へその力を見せ付けた
力を手に入れた事によりさらなる力望んで………
幾重にも積み重なるモンスターの死骸
倒れ伏すモンスター達の中に見える魔法の輝き
モンスターの上げる声が聞こえる
さらなる力を手に入れる為
モンスターを屠った
幾百というモンスターの中から魔力を奪い取り、自分のモノへと変えた
今にして思えば、何故そんな事が出来たのかも謎のまま
あの時ばかりは力を奪い取り、己のモノへと変えることが出来た
そうして力を手に入れ
手に入れたのが力だけではないことに気が付いたのは何時のことか………
辺りに見えていた凄惨な光景が消え、スコールの周囲に静寂が戻る
暗闇の中に存在するのは“魔女”ただ1人
「あなたは“魔女”にかけられた呪いを知っているでしよう?」
先ほどの光景の中の人物と同じ姿をした“魔女”は穏やかに言葉を綴る
「“魔女”は死なない、ソレが私にかけられた呪い」
魔女の視線がどこか遠くを見つめる
「幾代もの“魔女”達が絶望を抱き私を憎む理由」
何者かの絶望の叫びが聞こえた
To be continued
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