時間圧縮の魔法 その効果を説明され魔女を倒す為の作戦が立てられた時 思い至った事があった 意志の力1つで未来へ行くことができるならば過去へもまた、行くことができるんじゃないかということ “魔女アルティミシア”がどの時代までさかのぼる事を願っていたのかは解らない だが、少なくともアデルの若い頃まで、エルが力を振るうその瞬間まではその対象になる……… そこまでの時間が全て含まれるのだとしたら、それは過去へと行くチャンス もしかしたら、もう一度やり直す事ができるかもしれない 一度だって忘れたことのない平穏な光景 愛しい時間の数々 ずっと続く事を願っていた、あの優しい風景 望まない訳がない もう一度取り戻せるというのなら 過去を変える事を レインを救い出す事を望まない訳がない 時間圧縮の魔法の中で好きな時間へと移動出来るということは、全てを失ったあの瞬間へと、過去の俺が間に合わなかった場所へ直接乗り込むことが出来る ―――ずっと長い間の後悔を取り返すことが出来る 未来の魔女を倒すことよりも、世界を平和に導くことよりも、“今”の時間を守る事よりも……… あの瞬間脳裏を占めたのは、長い間抱えていた想い あまりにも甘美な幻想 想い描いたソレは、今にも現実になりそうな、幻 ―――そう、幻 できる事ならばあの時に戻りたい それを想う俺の心は偽りのない真実 だが、それと同時に、決してその時に戻れないことを知っている 戻ったところで、どうしようも無い事も……… 何も考える事無く思い至ることなく、ただ感情のままに行動出来れば幸せだったのかも知れない 起きてしまった過去を強引に変更したら、無くなるのは“今” 今も自分も、ここにいる友人達も全てをなくす事になる ―――全ては幻想 過去が変わることはなく、変えてはいけないと知っているから、後悔し嘆いている “もしもあの時” それは戒め 願いながらも、心の底にあるのは諦め 強い思いが身体をその時間へと運ぶのなら、もしかしたら無意識の内に移動してしまうかもしれない そう、他の全ての何よりも強い思いだというならば ほんの少しの期待と、そうはならないという確信 歪む空間の中、消えていく子供達を見送りながらラグナは目を伏せる 空間がぶれ幾重にも重なる めまぐるしく変わる光景に耐えられなくなり膝をつく 幾つもの世界が解けるように混ざり合う だが、そんな光景はほんの一瞬で終わった 目の前にあるのは、いつもと変わらない空間 変わらない位置に居る友人達の姿 戦いの気配を濃厚に残す空間 何も変わらない世界 ―――ほら、な 時を超えることもなく全ては終わった 視線を逸らせた先に、戦いに傷ついた子供達の姿がある 生まれた変化はただそれだけ 「―――おかえり」 ここにあるのは何一つ変わらない世界 だが、これが全てが終わった合図 世界に平和が訪れた瞬間 幾つもの時間がほぐれ
To be continued
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