バラムガーデンが存続の危機らしい そんな噂が流れてきたのはずいぶん前のことだと思う その話を聞いたところで、自分たちに関係のあることじゃなく はっきり言ってしまえばどうでもいいこと だから、その噂話を耳にしたあとすぐにそのことは忘れていた その話はその場限りで終わったこと 今更、ちょっとした知り合いだから、なんていう理由で助けを求められても困る そもそも、自分たちにはガーデンに対して援助をしなければならない理由なんてものは存在しない ここは“バラム”ではない ここには“ガーデン”なんてものは必要がない 「帰れ」 “バラムガーデン”からの使者を名乗った彼女へ、スコールは冷やかに言葉を投げつける そもそも “友人”としてエルオーネに会いにきた 入国が制限された状況で彼女たちがこの場所を訪れることができた理由はソレだったはずだ 顔見知りの1人として顔をあわせるくらいならかまわない どうでもいい思い出話につきあうこと位も乗り気にはなれないが仕方ないと思う けれど、これは“友人”にする話じゃない “バラムガーデン”に対する援助 財政難にある“バラムガーデン”に対して資金援助をしてほしいなどという願いは、明らかにその範囲を逸脱している 「そんな、帰れだなんて………」 何事かを言いつのろうとする彼女の言葉に、スコールは表情を硬くする 「………あなた、そんな話をするためにここまで来たの?」 ―――それが目的だったの? エルオーネの声が冷やかに響く 目の前にいる知り合いたちの表情はそれを肯定している 「………なら、帰って」 エルオーネの言葉に、彼女たちが驚いたような顔をする 「ごめんね、スコール」 「知らなかったんなら仕方がないから」 スコールは立ち上がり彼女たちへと背を向ける 引き留めるための慌てた声が聞こえてくる そして、それを遮るエルオーネの声 “バラムガーデン”の為 スコールが手を貸すはずのない理由 一個人では到底不可能な額の援助 スコール個人への頼みではないことは明白 “エスタ”という国への要請 一国への要請であるならばそれなりの手続きをとるべきだ もっとも 「“ガーデン”に援助なんてことはあり得ない」 それに、今の世の中にガーデンが存在する意味だってない 存在が必要だというのなら バラムという国 もの好きな金持ち エスタにはとって“ガーデン”という存在はいつ敵になるともしれない存在 なによりも……… ガーデンは、ガーデンの持ち主は憎むべき存在 「あなたたちがこんなことをするなんて思わなかった」
End
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