●●だまり
冬の寒い日
朝からぐっと気温が下がった日
自動的に入った暖房でほのかに暖かい廊下を歩く
最初は驚いて
自動化された空調に感謝したりもしたけれど
いつの間にかコレが当たり前
同じ様に暖かい館内を歩いて、いつものリビングの扉を開く
まだ他の住人が目覚めていない朝
一番乗りでたどり付いたこの場所も同じ様にほのかな暖かさ
暖かくはあってもここでこのまま過ごすには温もりが足りない
室内の暖炉に火を入れて、しっかりとした暖をとる
機械化された仕組みのお陰で、すぐに暖炉の中で火が揺らめく
「ここはこれで大丈夫」
最後に近くに燃え移りそうなモノが無い事を確認して、次の場所へ急いで向かった
食事の準備を終え、リビングの扉を開く
「………………」
開くと同時に閉めた扉
一度深呼吸をし、ほんの少しだけ扉を開く
隙間から覗いた室内は、さっき見たモノが見間違いでは無いと告げている
そっと扉を閉めるとエルオーネは足早に上階へと階段を上がった
休日の朝、いつもならまだのんびりと寝ている時間
勢いよく扉が開いた
「猫だまりの中に違う生き物が混ざっているんだけど」
「…………え?」
早口で告げられた言葉に、首をかしげたが
良いから早くの言葉と共にベッドから引っ張り出される
「ちょっと、ねーさん………」
抗議の声も無視されてパジャマ姿のままリビングの扉の前まで連れてこられた
「一体なんだって」
扉の前に押し出され、扉を開けるよう指示される
ため息と共に一応の警戒をしながら扉を開く
暖炉の前、エルオーネが言うように、何匹かの猫が集っている
その中に見え隠れする赤い色
「あれ、ムンバじゃないか」
スコールの声に猫達の中で埋もれる様に暖炉に当たっていた彼が顔を上げる
「すこーる」
言葉と共に上がる手
「………知り合い?」
背後から覗うような声
「父さんの友達」
「………そうなんだ」
力の抜けた声が聞こえた
ムンバはムンバという一つの種族、らしい
昔いろいろあって、おじさんと友達になって
それからときどきこんな風に遊びに来る、らしい
「そういう人がいるなら先に言って欲しかったな」
なんて文句を言っても、それはまぁただの八つ当たり
楽しげに話をする彼等の様子を盗み見る
私にはムンバの彼が話す言葉はわからないけれど、おじさん達とはちゃんと会話が成り立っている
他にも変わった友達がいないかどうか、今の内に確認した方が良いかもね
言葉を理解できるかどうかも含めて、スコールに聞いておこう
そう心に決めて、そっとリビングを後にした
End
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