始まりの戦場


 
命令が届くまでの間の僅かな休息
これから何が起きるか分からないという緊張感
せめて戦闘に出るまではという、安らぎ
相反する感情を抱えながら、兵士達は、森の奥深くに居た
押し殺したような笑い声
聞こえない程小さな会話
そんな中で、ラグナは陽気に会話を交わしていた
雑談が交わされる中、ラグナは傍らのマシンガンを引き寄せた
音を立てて、弾丸が撃ち出される
横合いから飛び出してきたモンスターが地面へと落ちた
「気を抜くなよ」
「その言葉、君にそのまま返そう」
もう一匹、切り裂かれたモンスターが地面へと落ちる
「俺のは、キロスに対する信頼じゃないか」
遠くで、銃声が聞こえる
「そう言うことにしておこう」
側の木々へと身体を預ける
ラグナ達の中心には、火が消えたたき火の後
戦場の片隅で、ラグナ達は命令を待っていた

始まりは、エスタの突然の侵攻だった
世界の中の国々は、その行為に、怒り、戸惑い、そして、恐怖した
エスタを支配したのは、狂った魔女
エスタは、その科学力と、魔女の不思議の圧倒的な力で、軍事力を持たない国々へ侵略していた
エスタへ対抗できる軍事力を持つ国は、ガルバディアのみ、周辺の国々はガルバディアへ救援を求めた
求めに応じ、ガルバディアは派兵を始めた
それが、やがて………
エスタの攻撃の手が弱まり出した頃、昨日までの同胞へガルバディアは牙を剥いた

『ティンバーを制圧せよ』
告げられた命令をラグナは信じられない思いで聞いていた
否定する言葉を期待して、辺りに視線を巡らす
ざわめきからは、否定の言葉は聞こえない
「ティンバーを制圧ってのは、俺の聞き間違えかな?」
「残念ながら」
「ティンバーを制圧しろって聞こえたな」
現実を告げる二人の声からも、陽気さは失われている
昨日まで確かに、共に戦っていた相手に、戦争を仕掛ける
冗談じゃないな
息を詰め、彼方を見つめる
知り合いを相手に戦いたいと望む者はいない
「デリングの野郎、何考えてんだろうな?」
「さてな……」
呟きに返事が返る
……どっちにしろ、これで評判は悪くなるよな………
戦闘に関わりのない国民がどう思うかは分からないが、兵士達の評判は確実に落ちる
「何をしている!命令に従わないか!」
高圧的な命令が躊躇う兵士達の元へ飛ぶ
ラグナ達は、顔を見合わせた
こういう、いやな奴もいるけどな……
「……行くか……」
重苦しい空気を纏い、彼等はデリングシティを目指した

「ここは君に任せよう」
各班ごとに別れた後に、キロスは、ラグナへ地図を渡した
「って……」
「確かに、それが筋だな」
ニヤリと笑みを浮かべ、ウォードが答える
………なるほどな
ちっとばかし卑怯かもしれないが……
「分かったよ、まったく………」
文句を言いながら、地図を見て、いい加減に歩き出す
自分達3人が抜けたところで、大して変わりはないかもしれない
だが、こんな些細な抵抗をする者が居ても良いはすだ
そうして、3人は森の中を彷徨い歩いた
 
 

 
END