最初の決断


 
意識し始めたのはいつからだっただろう?
目が覚めてすぐに彼女を意識したわけじゃない
目が覚めて本当に初期のころは痛みのためにそれどころじゃなかった
痛みがだいぶ落ち着いてきたころも、2人の友人のこと
任務に出る前に約束をしていた彼女のことで頭が一杯だった
………いつからだったんだろう
“今”が何よりも大切になり
“今”がこのままずっと続くことを願い始めたのは
いつからだろう、彼女がかけがえのない存在となったのは
そしていつからか、友人のことも、彼女のことも脳裏から薄れていった
何よりも重要になったのは、ここでの暮らし
何もない退屈な小さな村で、彼女たちと共に暮らすということ
ずっと抱いていた漠然とした夢
世界を巡るということ
………それもいつの間にか重要な夢ではなくなった
ずっと忘れていたんだ
夢も、大切だと思っていた様々なことも
思い出したのは、キロスが現れたから
本気でずっと忘れていたんだ
ここでの暮らし以外は重要じゃなくなっていた
このままずっと続けばいい
それだけが望みだった
望みだったんだけど、な
その望みは絶たれてしまった
キロスが現れたことによって、すべては変わってしまっていた
キロスに責任があるわけじゃない
キロス達に連絡をとることすら忘れていた俺の責任だ
………ここでの生活を壊したくない、そう思いつづけていた
無意識でもそう思っていた
けれど、もう知らないふりはできない
さまざまなことを先送りすることはできない
そろそろ覚悟をきめなければならい
このままこの時間を続けるのか
それともこの地をでて、デリングシティへ戻るのか
………考えるまでもない
始まりはわからない
けれど、それが一番重要になっていたことは事実だ
もう先送りにはできない
“今”を続けたいなら、それなりの態度を示さなきゃならない
「そうするかな」
どうすればいいのかだいたいのところは分かっている
後はきっかけと、決断
「相談するようなことじゃないしな」
そうじゃないか、相談したくないんだ
このままここで、平凡で平和な生活を
何よりも、大切だと思う人とともにあるために………
「まずは準備をしなきゃな」
とりあえずは、デリングシティか
今後の予定を思い描きラグナは夜空を見上げた
END