(おまけ)
「テロリスト達は、偶然居合わせたSeeDの手により取り押さえられた、と……」 ラグナの手が、ガルバディア国内発行の新聞を楽しげにめくる 「その辺が無難なところだろう」 至極当然というように、言いながら、キロスもまた、記事へと目を通す 新聞には、偶然ホテルに宿泊していたSeeDが、ガルバディア国政府が要請していた治安維持の依頼を忠実に守った結果、と記されている ……ま、ガルバディアの面目も保たれた事だし、無難な結末ってとこだな 報道された情報のどこにも、ラグナ達、エスタの人間が、テロの鎮圧に関わっていたという記述はない 「……なんだ、結局組織の壊滅にはこぎつけなかったのか」 ガルバディア軍が踏み込んだ時には、誰1人として、残っていなかったと、記事の最後に小さく付け加えられている 「これは、ガルバディアが単独で処理にあたったんだったか?」 新聞から、顔を上げ、ラグナは、先ほどから黙ったままのスコールに問いかけた 「………………」 そんなに怒るなよ……… すべての報道にエスタの名前は出てこない そればかりか、ガルバディア国内の事件の記録にさえも“エスタ”の文字はどこにも乗っていない あの日、ラグナ達は、故意に自分達の存在を消してしまった いなかった事にする訳ではなく、事件を解決した者達と認識をしっかりと植え付けながら、その存在を消し去った 「ま、おまえ達が参加してたら、テロリストを捕らえ損なうなんてことはなかっただろうな」 「…………………」 …………悪かったよ…… ラグナ達は、SeeDのガーデンの存在を使って、エスタの名を隠した SeeDであると名乗り、警官や軍人達の不審を取り払らい、後から合流したキスティス達の存在をキロス達は利用した、彼女達の名前を呼び、知り合いであるという事を強調し、自分達がどこの誰であるか名乗らずに…… 現場の担当者はさほど身分の高い者でもなく、状況説明に参加しなかった3人をSeeDではない、ガーデンの関係者として、認識した 「…………スコール………」 ずっと黙ったままのスコールに、ラグナはおそるおそる声をかける 「エスタの名前を出すのがまずい事位解っている」 キロス達がさりげなく、退席していく …………解ってるんなら、もうすこし、さ……… スコールが怒りを抱いているのが、解る ラグナは、椅子ごと僅かに後退した 「それなら、はじめから手を出すな」 静かな声 ………それは、そう言われればそうなんだけどな……… 「でもさ、1人で解決するのは、ちょっと大変だったんじゃないか?」 人質かばって、犯人捕らえて……… 援護のタイミングだって、結構大変だぜ ………よけいなこと言ったか? 無言の圧力を感じる 「できない、わけじゃない」 ……そりゃ、そうなんだけど……って、これ以上言わない方が良い、よな……… 微かに表情が変化する …………… なんでこんな時だけカンが良いんだろうな…… ラグナは、視線を巡らし逃走ルートを探す 「いや、それは、その通りだろうけど、ほら、1人より2人っていうし………」 ……っていうか、手助けしたことが気にくわないって訳じゃないんだよな? ………やっぱりよけいなこと言ったな…… 「問題が違うだろ!」 言葉と同時に、ガンブレードが振り下ろされる ぎりぎりのタイミングで、ラグナは、その一撃をよけた あっぶねぇ? っていうか、いつまにガンブレードを準備してたんだろうな? あの段階では、スコールはなにも言わなかった やっぱり、ガーデン関係だと思われたってのでなんかあったみたいだな…… いや、気づいてなかったってのもありそうだけどな…… ………ガーデンの方々の協力でって相手も言ってたもんな、気づかないってのはやっぱりないか…… ……やっぱり自分達がやっていない事を、ほめられると頭にくるものなのか?単に半分手伝ったってだけで、自分達が全く関与してないってわけじゃないだろうにさ…… スコールってそういうところ、変にこだわるよな…… やっぱり、プロのプライドってやつか そういや、報酬って出たのか? ラグナがのんきに考えている間にも、刃先が目の前を横切っていく おっと、そんな場合じゃなかったな……… 「だから、暴力に訴えるのはやめろって」 振り下ろされる切っ先をかわして、スコールの背後へと回り込む やっぱり、話の流れとはいえ、ガーデンってのがやばかったかな 通りすがりの一般人……なんかしっくりこないよな…… やっぱり、派手に壊したのはまずかったか、ガーデンの信用問題につながるもんな 新聞の片隅に小さく、ホテルの一部が崩れたという記事が載っていた 人質の救出が終わり、犯人護送の最中、気絶から目覚めたテロリストの1人が、隠し持っていたリモコンを押した為、残されていた爆弾が爆発した 必要経費も修理費も出しておいたんだけどな…… それに、あれは、捕らえた時にチェックを怠ったガルバディアの責任だと思うんだけど、な 「………話を聞かないだろう………」 いや、ちゃんと聞いてるんだけどな…… 仕事をするなら、最後まで責任を持てってことだろ? いい加減な仕事のやり方をガーデンの名前でするなって……… ………でもさ、お前達のミスでもある気がするんだけど、な…… スコールの攻撃をかわしながら、ラグナは扉を開けた 「ちょっと、ストップ、な」 気持ちは解るけどさ、ちょっと八つ当たりはいけない スコールの一撃を受けた椅子が真っ二つに割れている それと、また部屋の中壊したりしたらしゃれになんねーって…… そっと、扉を閉めると、ラグナは一目散に逃げ出した 数時間後、ラグナとスコールは二人で静かにお茶を飲んでいた
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