英雄達の舞台裏
(2 SideK)


 
奪い取った通信機から、僅かな情報がながれてくる
すでに倒れた人数は半数……
ふむ、数が合わない様だ……
キロス達以外にも人が動いているということだろう
考えられるのは、SeeDといったところか
できるならば、連絡を取りたいところだが
だからといって、呼びかける訳にもいかない
偶然の出会いを期待するべきか
「終わったかな?」
テロリスト達はご丁寧に各階に爆発物を仕掛けていた
建物の中でこれ程の爆発物を爆発させれば自分達も無事で済むはずはないのだが
目的の達成の為には、自分達の生死は、重要ではないということか……
とても正気だとはいえない
確実に爆発物を撤去する必要がある
彼等が仕掛けた爆発物は、自動的に爆発するものなのか、スイッチに連動して爆発するものなのか、詳しい事は解っていない
『これで最後だ』
解体した爆弾をウォードは無造作に捨てた
通信機から、微かにくぐもったうめき声が聞こえた
テロリスト達の事は任せた方が良いかもれんな
「そろそろ、管理室に向かうとしようか?」
ホテル内各施設の位置は、先の従業員に詳しく聞いている
地上5階……
この建物には、他に保安室も存在する様だが、この際、管理室に向かう方が、役に立つ事も多いだろう
『建物の中すべてが見える訳では無いようだがな』
ウォードの言葉にキロスは肩をすくめる
「様子が解るならば私達の行動も筒抜けということだ」
通信機は、敵が存在しているという情報も、警告も伝えていない
まだ相手は何が起こっているのか、把握していない
扉の外の様子を伺う
気配は感じない
視線を交わし廊下へとすり抜ける
身を隠す場所のない、一本道の廊下を素早く走り、階段へと移動する
キロスは、階下を、ウォードは、廊下の人の気配を探る
階下に人の気配
音を、気配を殺し、キロスは静かに階段を下った
男の体が宙を舞い目の前を横切っていった
ほんの一瞬の内に、それがテロリストである事をキロスは、見咎めた
「あんまり派手な事はしちゃダメだって」
聞き覚えのある、若い男の声
『どうも派手だな……』
ウォードが苦笑いを浮かべながら、階段を下ってくる
どうやら、無事に合流する事ができるようだ

彼等の気配が緊張するのが分かる
「おっと、攻撃はしないでもらいたいものだな」
声をかけながら姿を現した私を彼らは驚いた様に見ていた

「じゃあ、スコールとラグナさんがいるんだ」
私達は、近くの一室で、情報を交換していた
キスティス・トゥリープにアーヴァイン・キニアス
ホテル内に進入してきたのは、この二人らしい
スコール君の残る2人の友人を思い浮かべ、キロスはそれが的確な判断である事を理解した
あの二人には、今回の様な出来事は向かないだろう
犯人の要求、現状、目新しいと言える情報は何一つ入ってはこなかったが、私達の持っている情報は、彼等には重大な事だった様だ
「スコールなら、ほっといても大丈夫ね」
「そうだ、最終的な判断はあの二人に任せて問題はないだろう」
もっとも、あの二人が動きやすいように、動いても問題がない様にしてやらなければならない
「まずは、爆発物の扱いだ」
危険であるが故にできる限り撤去を進めたいが、どれだけの数があるか解らない物の撤去を待っていたのでは、時間がかかり過ぎる
「すべてを撤去してからでは遅すぎるわ」
「まずは建物内のテロリストを一掃するにとどめておくべきだろう」
気づかれず、爆発させる隙を与えずに物事を終えてしまえば良い
「保安室に管理室だったね?」
重要施設ならば、テロリスト達もいち早く制圧しているはず
「そうだ、我々は、管理室に向かうつもりだったが……」
「それなら、私達が保安室に向かいます」
そうして貰えると、助かる
「ひとつ作戦を思いついたのだが……」
ラグナ達への合図、同時に多少有利に物事が進むはずだ……
思いついた作戦をキロスは、速やかに二人へと伝えた
『客が現れた様だ』
扉の外に再びテロリストの気配がした
 

 
 
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