(事件)
室内には、届いたばかりの報告書を読み上げる声が響いていた 報告は先日姿を消した船に関する物 「船底に穴?」 「はい、……いえ、穴というよりは亀裂の様です。船体を前後に二分する形で……」 ラグナはその言葉に眉をひそめた 「……船からはなんの報告も無かったんだよな?」 「はい、付近を航行していた船からもそのような報告は入っていません」 連絡をする間もなく沈んだ? 船体にそれほどの亀裂が入るならば衝撃は大きい 徐々に亀裂が大きくなったのだとすれば、浸水する水に気がつく 「初心者だったのか?」 長い間、外との関わりを断ってきたが為に、船の乗組員が初心者で構成されていた可能性がある それならあり得るかもしれないが…… 「それが…………」 「ベテランだと言う訳か………」 キロスの言葉に肯定する 沈黙しているその間も、全く外部との交流が無かった訳ではない 国籍を隠しあくまで個人取引の名目で、外に出ていた船が多くはないが存在する どうも嫌な感じがする 「その船は、簡単に穴があく様な船だったのかな?」 「まさか、そんなはずはありません!」 キロスの質問に悲鳴の様な言葉が返ってくる 「いくら軍船ではないといえ、簡単に穴があくような材料を使った船であるはずがありません」 ラグナは、提出された報告書へ目を通す 理論だった矛盾 あり得ない事故って訳か…… 室内に重い空気が降りる 「……まだ、事故ではないと決まったわけではありません」 力ない声が響いた 「調査船が沈没しました」
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