英雄と契約
(おまけ)
大統領官邸内―――私邸
壁際に並んだ書棚の数々
棚からあふれ出し、床の上に無造作に積み上げられた本の山
書庫の片隅、申し訳なさそうにおかれたテーブルセット
テーブルの上に置かれたコーヒーを手にスコールは、部屋の中を動き回るラグナを睨み付けるようにして、見ていた
ラグナは、あちらこちらの本の山を崩している
「……っかしいなー?確かにあったと思ったんだけどな……」
先ほどから何度も繰り返される言葉
部屋の中を動き回る足音
「…………まだ見つからないのか?」
いらだったようなスコールの声が低く響く
『なんか、読んだことがあったような記憶があったんだ』
任務を果たし、帰還の際にラグナがふと漏らした言葉
その言葉の内容が気になり、スコールは、仲間達と別れ、エスタまでついてきた
どこでどんな内容を見たのか
何度目かの問いで、ラグナが思い出したのは
自分の書庫にあるはずの一冊の本
当然、スコールはその本に興味を示し………
すでに何時間かの時間が経過している
見渡す限りの本の山
はじめは時間がかかっても仕方がないと思っていた、が……
「確かこの辺だと思ったんだよ」
関連性も何もなく、無作為に並べられた本
幾重にも重ねられた本の数々
手伝おうにもラグナはタイトルを覚えておらず、手の出しようが無い
冷えたコーヒーを一気に飲み干し、スコールは、側にあったお湯を注ぐ
いらいらした気分を通り越し、今にも爆発しそうな空気をはらんでいる
パラパラと、本をめくる音
「あ、コレだ」
のんきなラグナの声が響くとほぼ同時に、ラグナの手の中から本が奪われた
…………………
いくら、待たせたからって奪い取らなくてもいいんじゃねーか?
恨めしげなラグナの視線に気づく事もなく、スコールは、本をめくる
―――子供向けのおとぎ話
何も知らずに読んだなら、たわいの無い話だった
描かれているのは、G.F.の王と、人間達の約束
話の最後には子供向けの本らしく教訓めいた事が書かれている
スコールは、本を元の場所
………らしきところに戻し、ソファーへと座り込む
タイミング良く出される暖かいコーヒー
ゆっくりとコーヒーに口を付ける
何かを考えているかの様な長い沈黙
………今回、なんかしたかな……
ラグナは、スコールの様子をうかがいながら、自分の行動をなぞる
移動した視界に、そのまま持ち運んでいた一振りの剣が映る
剣を持ちさりげなく立ち上がる
「……どこに行く気だ?」
スコールの低い声
……やっぱり気がついたか……
契約の為に必要なアイテム(剣)を持っていたということ
これがただの偶然だと思い見逃すことは無い様だ
でもな、コレに関しては言える事は何もないからな……
「どこって、言われてもな」
今回ばかりは、ここまでなら教えられるという範囲が無い
スコールの視線が、睨みつけるようにして動かない
こういう場合は……
ラグナは、勢いよく扉を開き、その場を逃げ出した
「っ!待て!!」
反射的に叫ばれるスコールの声、追ってくる足音
ここでそういわれて逃げるのをやめるってのはいないと思うんだよな……
どうでも良い事を考えながら、ラグナは、広い官邸内を走り抜けた
数時間後、どう決着が付いたのか中庭で、ラグナとスコールは穏やかに話をしていた
穏やかな笑みを浮かべる2人の様子に
側を通りかがった人々は背筋に冷たいモノが流れるのを感じたらしい
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