英雄と幻影
(おまけ)
どこへとも無く出かけていた大統領が、ご子息を連れて帰還してから数時間
高官達は、2人が消えた1室を何かを恐れる様に、遠巻きに伺っている
SeeDの手を借りるような作戦が行われたという事実は無い
そんな事実は無いのだが……
戻ってきた大統領の手にあった剣の存在と、2人の間の空気が何かが合った事を告げていた
「……大丈夫なんですかね……」
無意識の内に扉を見つめながら、誰かがポツリと呟いた
壁1面の大きな窓の外に、青い空が見える
ゆっくりと流れていく白い雲
言葉するなら“平穏”と呼ぶに相応しい様な光景
その光景を、ラグナは声も無く見つめている
まるで、存在さえも忘れられたかのような、無言の時間
冷え切った、コーヒーを手にじっと窓の外を見つめている
何か感じる所でもあったのか、長い時間が経っているはずなのに、誰も顔を出さない
どこか居心地の悪い気分を感じながら
スコールは、ラグナの様子を見ている
………………
物音1つしない室内
身動き1つしないラグナが、何を考えているのかは判らない
けれど、遠くを見つめる視線が悲しんでいる事だけは判る
多分、彼女達の運命を悲しんでいる
スコールは、空になったカップを見つめる
ラグナはもとより、G.F.にも、話したい事、確認したい事は山の様にある
けれど………
どこか遠くを見つめる眼差しため息が零れる
G.F.と自由にコンタクトを取れないスコールとは違い、ラグナの方は好き勝手に話が出来る、らしい……
……いったい、何を聞かされていたんだ?
想いに沈むラグナを気にしながら、スコールはコーヒーを入れ直す為に席を立った
窓の外に広がる夕闇
赤く染まる空の裾野を藍色の闇が覆い始める
ラグナが手の中のカップを窓辺へと置く
ガラスに触れる小さな音
「……こんな日、なんだそうだ」
はっきりとした声が告げる
…………?
「……何の……」
「彼女が次元の隙間へ消えた日」
ラグナが持ったままの剣が微かに色を変える
ゆっくりと振り返ったラグナの表情は逆光に隠されて見えない
「知ってるか?セントラでは、彼女を救い出す事が重要事項に掲げられてたんだぜ?」
ラグナがゆっくりと近づいてくる
「それで、聞きたい事があるんだろう?」
不思議に穏やかな声が問いかけた
暗闇の中、静まりかえった室内
目の前で、黙り込んだままのスコールが居る
何か言いかけては、止める……
先ほどから繰り返される行動
ラグナは気付かれる事のないように苦笑を浮かべその様子を見ている
まさか、こういう反応が返ってくるとはな……
そんな躊躇う程の態度をとってたか?
………そう見えたかもしれないな
意図していた訳では無い自分の行動
でもな、聞かれたからって言って、答えられるとも限らないんだぜ?
暗闇の中、静かに時間が流れていく
静寂が破られるまで、後少し
|