8月23日は大切な日、スコールの誕生日
最愛の命がこの世に生まれた日
ラグナはそっと計画を立てた

朝、いつも通りの食卓で
「今日の夜は出かけような?」
ラグナは、小さく確認した
スコールはほんの少し不思議そうな顔をして、黙って静かに頷いた

ラグナがスコールに内緒で用意したのは静かな街のレストラン
数ヶ月も前から予約をして
スコールが好きな料理ばかりを注文して
誕生日のケーキを用意してくれるよう頼み込んだ
それから、官邸の子供がいる職員にプレゼントはどんなモノが良いのか聞いてまわって
昨日ようやく買ったプレゼントは職場に隠してある
長い間出会うことの出来なかった息子の為に、出来る限りの事を………
ふたりだけの静かな誕生日パーティーを準備した

灯りの消えたレストランの個室
「……お父さん?」
真っ暗な中椅子に座ったスコールの不安そうな声
「うん?」
暗闇の中苦労して蝋燭を立てながら、ラグナは伸ばされたスコールの手を握る
どこかに消えたりはしないから……
声に出さない言葉
そして、ラグナはほんの少し後悔する
「今終わるからな……」
思わず呟いた言葉
慌てて蝋燭に火を灯す
淡い光の中にテーブルに置かれたケーキが浮かび上がった

誕生日おめでとう
静かな声が部屋いっぱいに響く
「………たんじょう、び?」
呆然とスコールが繰り返す
「今日は、スコールの誕生日だろ?」
静かに話しかけラグナはプレゼントの包みを差し出す
スコールは差し出されたプレゼントと、ラグナを見比べ
そして、嬉しそうに微笑んだ

初めて祝う事の出来た誕生日
生まれてきてくれた事を無事でいてくれた事を感謝して
今日は2人で静かにお祝いをしよう

 
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