誕生日だから
という理由で言い渡された休日
別に、誕生日を向かえた奴は皆が皆休みに成る訳じゃないから、と辞退したんだが……
…………俺が知らない所で、誕生日は休日に決まったらしい
どうも納得いかねぇんだけどな
っつーかさぁ、大統領に内緒で決定される事項があるってのは、問題あるんじゃねーのか?
………いや、休みが貰えるならそれはそれで良いんだけどよ
それなら久しぶりにスコールと出かける事にでもするからさ

ただの家族旅行だからと、決定した普通のホテルの普通の部屋
勿論煩わしい、護衛なんか一つも頼んでない
ただ遊びに来て居るんだ、そんな所で別に良いだろう?
個人的用事に、まさか兵士をよこせなんて馬鹿な事いえる訳がない
………ってのは常識だと思ってたんだけど
今夜の宿について、スコールに怒られた
大統領をを狙うような人は、私用も公用も区別する事は無いからだそうだ
そりゃまぁ、それは正論だと思うぜ?
だけどさ、なんか違うって気がするんだよな
とりあえずここはエスタ国内だし
……ひょっとしたら国外の方が安全だったか?
俺の事知ってる奴なんて一人も居ないだろ?
まぁ結局
『スコールが居るなら問題無いだろ?』
って事で、どうにか落ち着いたんだけどな

ラグナは大きくため息をつくと雪原をゆっくりと歩き出す
背後から慌ててついてくるスコールの気配
さほど人が居ない場所を選んだとはいえ、全く人が居ない訳じゃない
それなりの所を選んだお陰か、俺に気が付いても声を掛けて来る様な奴は居ない
いないんだけどな……
側を離れ無いスコールの姿に苦笑が浮かぶ
“軍人”という職業
役割を果たそうとして、一生懸命なのは良い事なんだろう
だが、力が入りすぎている
そんな懸命に守られるようなモノじゃないんだぜ?
ゲレンデを抜け、人気の無い林の中へと辿り着く
ラグナは足を止め、スコールを振り返る
「だからな……」
数歩下がった所で、慌てて足を止めたスコールに手を伸ばし
「今日は休みだって言ってるだろ?」
スコールの頭の上の雪を払い落とした

「だいたい親が子供に守られるってのはなー」
斜面を滑り降りていくスコールの姿に聞こえないように文句を告げる
「間違っている以外の何者でも無いだろう」
乱立する木々の間を上手にすり抜けていく姿
「仕事以外の時は素直に守られてろよ……」
就職してから何度か繰り返した言葉
公私の使い分けが上手く出来る様になるにはまだ随分かかるだろう
遠くから人の声が聞こえる
とりあえず人目の無い場所なら、問題は無いんだよな
あいつら見たいにさ、普通に………
「っていうか、キロスもウォードも公私の区別なんてつけて無いよな」
通りで違和感が強い筈だぜ
脱力のあまり雪をかぶった木の幹へと寄りかかる
「うわっ」
頭上から、勢いよく雪の固まりが落ちてきた
ラグナの声に振り返ったスコールが、明るい笑い声を上げた

立場なんてのは関係なく、ごく普通の親子としてこれからもずっと……

 

 

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