忘れていた訳じゃない
……ただ、忙しさでタイミングを逃しただけだ
行事には五月蠅い程に詳しい奴が、唯一口を噤む日
1月3日
……どうすれば良い?

祝賀会だの、今年の抱負だの、会談だの
年が明けてから、様々な場所で開かれる行事
年明けを迎えて、国民は元より世界中の大半の人々が休んでいる時間にいつも以上に働かされている
平和に成って何が困るかというと、今まで通用していた、無言の了解って奴が効かなくなった事
ようやく落ち着いた真夜中
見るとも無しにテレビを見ながらボンヤリ思う
それも自分だけなら、適当な言い訳や理由をつけて行事をシャットダウンする事も不可能じゃないかも知れない
でもな……
自分一人が暇になった所で余り意味が無い
勿論エルオーネは家に居るが、日中はそれなりに友達の付き合いがあるし
何よりスコールは、自分と同じくらいには忙しい
休日を確保した所でやる事が無い
「まぁ、こんなんでもマシなのかもな……」
このただ広い家の中で一人寂しく過ごすよりも
仕事だろうとなんだろうと、人に囲まれている方がマシ………
テレビの中で楽しそうな笑い声が起きる
楽しそうだな
なんて、無意識の内に思って、ふと気付く
―――贅沢になったな
つい最近までたった1人で過ごしてきた長い時間
ことある毎に後悔していた1人の時間
あの時を考えれば、今例え1人で過ごす事になるとしても幸せだって言うのにな……
いつのまにか慣れていた幸せに苦笑が浮かぶ
ふと目入った時計の針は23時55分を廻ったところ
「明日の事もあるし、さっさと寝るか」
やがて明かりが消えた

深夜
時計を見るのも遠慮したくなる時間
高く響いた着信音にラグナは飛び起きた
どこかから届いた連絡
届くと同時に聞こえる甲高い音が、緊急の連絡だと言う事を告げている
今度は何が起こった?
駆け寄って、流れ込んできた情報へと眼を向ける
……メール?
映し出されているのは、封をされた手紙
緊急事態、だよな?
手の込んだ仕掛けに首を傾げながら、メールを開く
―――誕生日おめでとう
飾り気のないシンプルな文字
……誕生日?
日付は0時を廻っている
廻っているが……
差出人の書いていないシンプルなメッセージ
「バラムは0時になった頃、か?」
こんな回線に、こんなものを寄越すのは一人しか居ない
嬉しさに笑みが零れる
今度礼を言わないとな
幸せな気分に浸りながら、ラグナは再び眠りに落ちた

躊躇いつつも書いたメッセージ
忘れていた訳じゃない
最近の忙しさで何をしたらいいのか、考えるだけの時間が無かった
今から何かを見つけて送ったなら間に合わない
だから……とりあえず
お祝いの言葉

 

 

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