「ねぇ、今年はどうするの?」
「そうね………何をしたらいいと思う?」
「うーん?」
「どこかに出かけるなんてどう?」
その提案に一も二もなく乗ったのは随分前の事
「出かけるよっ」
早朝まだ眠っている所をエルオーネの奇襲で無理矢理起こす
「いったいどうしたっていうんだ?」
驚きというよりも、途惑いの声を上げてラグナがエルオーネに手を引っ張られてくる
「おはよう」
説明を求める視線を無視してまずは朝の挨拶
「あぁ、おはよう」
ラグナの声に続いて、寝ぼけながらスコールが挨拶をする
「準備は出来てるわよ」
私はスコールをラグナへと預けて、わざとエルオーネへ話しかける
「それじゃあ遅れないように出発!」
エルオーネの声にスコールが微かな反応を見せる
「出発ってどこに行くんだ?」
ラグナの途惑いの声は聞こえないふりをして、私達はさっさと玄関の扉を開ける
「列車の時間があるんだから、早くしないと乗り遅れちゃうよっ」
エルオーネのせかす声に、ラグナが釣られたように歩き出す
扉には自動的に鍵が掛かる
人の気配が無くなれば5分後には自動的に防犯システムが作動する
………こんな時は便利よね
なおも問いかけているラグナの声を無視して私は一人先に歩き出す
後ろの方からエルオーネの声が聞こえる
話の内容は解っていないはずなのに、エルオーネに賛同するスコールの声
やっぱり、エルオーネに任せた方が正解ね
ラグナの諦めたような声が聞こえる
そして、近づいてくる2人分の足音
私の手から、荷物が減る
「よくわかんねぇけど、とりあえず行くか」
私の手をエルオーネが掴み、ラグナが並んで歩き出す
「そうね、少し急いだ方が良さそうだけれど」
そして、湖畔の別荘地
凍り付いた湖の上で楽しむ人の姿が幾つか見える
私達は用意された別荘へとラグナをせかす
扉を開けると同時に
「誕生日おめでとう!」
の言葉と、室内に用意された華やかな飾り付けがラグナを出迎える
驚いたように私達の顔を見回して
そして、少し照れながら笑ってお礼を言った