机の上に置かれた写真立て
収められている何枚かの写真
ここに置かれたのは、大切な“家族”の写真
指がそっと、一枚の写真を撫でる
「誕生日なんだってさ」
家族は4人
けれど、この中には4人で映っている写真は一枚もない
それどころか
家族4人が一緒にいたことは一度も無い
ここにある写真は、誰かがかけた写真
欠けたままの写真はこれから先も埋まることは無い
「また一つ年をとったんだってさ」
話しかける声に返事は返らない
年を重ねる事が嫌な訳じゃない
生きていくことだって楽しい
だが………
指先が彼女の輪郭をなぞる
「なぁ、レイン」
子供達二人と毎日賑やかに暮らしてる
けれど、こんな風に無性に寂しくなる時がある
会いたい
声が聞きたい
叶わない願いだとわかっているが
こんな日は無性に会いたくなる
記憶の中の笑顔がやけに鮮明に浮かんだ

静かな空間の中で、小さく語りかける
最近起きたこと
そして今日の出来事
子供達の言葉
写真から指が離れる
そばに置かれたグラスの中の氷が音を立てて崩れた