思い立ったら居ても立っても居られなくなった
気がつけばラグナロクの操縦席で………
引き返す訳には行かなくて、勝手に運転してこの場所を目指していた
ウィンヒル―――
最愛の存在の眠る場所
村の近くにラグナロクを降ろし
夜更けの村の中を足早に歩く
無意識に向かう足が“家”を目指そうとして
苦笑して足を止める
もう随分前のことだってのにな
この場所は俺が在るべき所だから
身体が覚えている
でも………
目指すはずの“家”に明かりがともっている
彼女じゃない
俺を待つ明かりじゃない
他人が灯す明かり
あの“家”はもう俺の家じゃない
“彼女”の眠る場所へ向けて
のろのろと足が動き出す

冬のこの季節には花も咲かない
夜の暗闇と合わせて
ここにある光景は
「寂しいよな………」
掛ける言葉が見つからない
「なぁ、レイン………」
言葉をなくしただ立ち尽くすラグナを慰めるように、風がとまる
背後から、懐かしい“におい”がした