「誕生日おめでとう」
真夜中
眠ったままあなたへと語りかける
深い眠りについているあなたからは当然返事は無いけれど
気配を感じたのか少しだけ身を捩って
何かに気づいたみたいに、力が抜ける
「ほんと、困ったわ」
安心している
信頼されている
心に広がっていくじんわりとした温もり
そっと傍を離れて横になる
明日―――今日―――はどうしようかしら?
どんなお祝いをしてあなたを驚かせようかしら?
驚きながら喜ぶあなたを想像しながら、いつしか眠りについた
家族と友人と
余分な人は中に入れずに
いつものように集まったメンバー
人の輪の中心で楽しそうにラグナが笑う
いつも以上にまとわりついて離れない子供達を上手に相手をして
―――ああ、プレゼントの時間
いつも通り
エルオーネがもったいをつけてプレゼントを手渡す
それを見て慌てたようにスコールが動いて
大人達の出番は子供達が終わってから
一つ一つのプレゼントを受け取って
一つ一つを丁寧に開けて
満面の笑顔
―――子供みたい
喜ぶ姿に嘘は無くて
その様子にそう思う
そうして………
「お母さんは?」
きらきらした目がプレゼントを渡さないのか問いかける
「お母さんのプレゼントはこの料理」
毎年の様な決まり文句
がっかりした顔をするスコールと困ったように笑うラグナ
二人の様子に私はまた笑いが零れた
賑やかな時間が終わって
夜遅く
ラグナの手にそっと小さな包みを一つ
「ありがとう」
柔らかい笑顔とお礼
「どういたしまして」
お互い顔には笑みが浮かんでいた