年が明けて2日
外は少し賑やかだがいつもと変わらない夜
部屋の隅ではぜる暖炉の炎と
ぽつりぽつりと続く会話
本を読みながら
あるいは
わずか一口アルコールを含みながら
静かに過ごす夜中の時間
時計の針が小さな音を立てる
「誕生日おめでとう」
いつもと同じ様にかける言葉
毎年、年に一度の行事
ずっと昔、この日が誕生日だと知ったその時から時計の針が動くその瞬間にかけてきた言葉
「ああ、ありがとう」
嬉しそうに笑う顔
「明日―――今日―――は、お………エルオーネも一緒だから」
スコールの言葉にラグナがより一層笑みを深くする
「そうだな、楽しみにしてるぜ」
ラグナの言葉に無言で頷くとスコールは自室へと戻った
「忙しいけど、楽しいね」
嬉しそうに笑いながらエルオーネが言う
「そう、だな」
キッチンに二人で立って料理をする
指示する声に答えて
逆に指示を出して
………まだ慣れない
この日“家族”が居るという事
長い間家族は1人だけで
この日のお祝いもスコールが―――小さい頃はキロスやウォードが手伝ってくれたが―――していた
なんだか変な気分だ
嬉しそうに、楽しそうに話をするエルオーネに返事をしながら
スコールは落ちつくような落ち着かないような、不思議な気分を味わう
「………大丈夫か?」
扉から顔を覗かせてラグナが問いかける
「だいじょう………………ぶ」
「いいからおじさんは向こうに行ってて」
答えようとしたスコールの声を遮っての言葉
一瞬ラグナがなんとも複雑そうな顔をして
「なんか、寂しいぞ」
スコールへと目を向ける
「もうすぐ出来るから」
苦笑して、肩を竦めて、名残惜しそうにラグナが扉を閉めた
「さ、もう少しだからがんばろう」
エルオーネが腕まくりをして笑った
「誕生日おめでとう」
言葉と共にラグナへと渡されるプレゼント
「おう、サンキュ」
少し乱暴に渡されるプレゼントを軽い様子で受け取って
開封したプレゼントの中身に文句を一つ
彼等の間で遣り取りされるプレゼントは大抵“悪ふざけ”な代物だ
どうしようもないくだらないものだったり
開けた瞬間笑いを誘われたり
包みを開けるたびに零れる楽しそうな声
「いつも思うんだけど、アレどうするのかしら?」
傍に居たエルオーネがそんな様子に呆れたような声を上げる
どうするのか?
なんて言われても
「別にどうもないんじゃないか?」
今この一瞬の笑いを誘うモノだとしても
プレゼントはプレゼント
それに、食べ物や飲み物も含めてそれが使えない訳じゃない
「………そういう意味とは違うんだけどね、とりあえずプレゼントを渡しに行こうか」
エルオーネの言葉に首を傾げながらも、後を追ってラグナの傍へと近づく
「誕生日おめでとう」
エルオーネの声と差し出されるプレゼント
「おめでとう、父さん」
同じようにスコールもプレゼントを差し出した