野営


 
問題は食事の支度だった

旅に出て数日
少しずつスピラの事が判ってきて
旅を楽しむ余裕っていうのかな?
そういうのが出てきた
そんなある日の出来事

太陽が沈み辺り一面を夜の闇が覆っている
ザナルカンドと違って、スピラの夜は月と星の灯りしか無くて
暗くて、でも明るい
いつもの様に焚き火を焚いて、野営の支度をする
っていっても、火をつける道具もろくに無いここでは俺の出来る事なんてたかが知れている
今だって、キマリが火をつけるのを見てただけだ
勢いよく燃え上がる炎
「後は任せる」
充分に燃え上がったのを確認してからキマリが焚き火の側を離れる
「任せるっす」
ここで俺のやれる仕事はこんなモノだから気合いを入れて引き受ける
焚き火って野営するのに重要なんだよな
料理にも必要だし、暖もとるし、モンスター除けにも必要だっていうし……
…………たまに灯りに惹かれて来るモンスターってのもいるけどさ
そんな事を考えながら、火をかき回していたら
「あーーーっ」
突然リュックの声が響きわたった
「な、なんだ!?」
モンスターが出たとかそういう危険な感じがする声じゃなかったけど、顔を見合わせる様にして
リュックの元へ集まって
「どうしよう、食べ物が全然ないよー」
………は?
言われた言葉を理解するまで少し時間が必要だった

「今日までには宿に泊まるはずだったから」
不慮の事故で日程が狂っていた事も事実で
前に立ち寄ったところで、多めに食料を買い込んでいたのも事実
だから、ルールー達に落ち度は全然無い
「………居ないな」
「そうっすね」
んで、食料が無かったら食事が出来ない訳で
夜の闇の中松明の明かりを持って、こうやってさっきから彷徨い歩いている
目標は………食料の確保
「獣どころか、モンスターも居ないな」
…………食料の現地調達に手っ取り早いのは狩り
そう思って、こうやって武器持って彷徨ってるんだけど
「モンスターはともかく、動物って夜寝てるんじゃないか」
思わず呟いた言葉に
「……だろうな」
いつもと変わらないアーロンの声が返ってきた

タンパク質の焼ける匂い
そして、甘い果実の匂い
焚き火の周りには、魚の切り身が並んでいる
明日にはちゃんとリンさんの店にたどり着く
そうしたら、まともな食事にありつけるよな……
俺は見たこともない形をした果物と、切り分けられた見覚えのある魚から視線を逸らした
 

 
END