足音


 
夜の暗闇が深すぎる夜
隅の方から何かが現れる様な気がして、緊張に身体が強張ったまま
眠れないまま、時間が過ぎていた
 
足音が聞こえる
ゆっくりと近づく音
真っ暗な室内に不気味に響いて
身体を硬直させて、息を潜める
ドアの開く音
隙間から漏れてくる灯り
明るくなった事にほんの少しだけ安心して
続いて聞こえた声に、ちょっとだけ不機嫌になる
来るなよっ
力を込めて、一生懸命祈る
「つまんねーな」
吐き捨てるような声と同時に乱暴にドアが閉まった
 
そして、部屋の外から聞こえてくる騒々しい音
うるさいっ
音が聞こえないように布団の中に潜り込んで
起こさないように静かにするのが当たり前の筈なのに……
そういった気遣いが全く感じられない様子にむっとして
騒々しさに眠れる筈がないのに
声が聞こえる事にどこか安心して
いつのまにか眠っていた



 
 

 
END