呼びかけ
何処までも澄んだ青空
シンの居なくなった平和な世界
二度と復活する事が無いという事実を信じられずにいた人達も、ようやく実感出来る様になった
些細な問題が起きたりするけれど
以前に比べたらどれも大した事が無い
そういう風に思えるみたい
海を渡る風が髪を撫でる
ユウナは、穏やかな海を見つめる
「全部、君のお陰なんだよ……」
語り掛ける言葉を波がさらう
スピラの為に一生懸命だった人
シンを倒す為に、その存在を賭けてくれた人
君に見て欲しかった
今のスピラの事
スピラに住んでいる私達よりもずっと、この世界の事を考えてくれた君に……
沈み行く夕陽が海を朱く染めていく
波の音が高く響く
「もうすぐプリッツの大会が在るんだ」
君が居なくなったから、君の事を知っている人達が大会を開きたいって、そう言ってた
「みんな張り切ってるんだよ」
そして、君が帰ってくるのを待ってる
遠くから、ユウナを呼ぶ声が聞こえる
「今、行くから」
ナギ節が訪れて、最近忙しくなってきました
安心したら、旅の事が聞きたくなったみたい
シンを倒す旅の事……
皆私の事をありがたがるけど
本当は違うのにね
本当は君が……君達が…………
呼び声が近づいてくる
そうそう、最後に1つだけ
最近ワッカさんが、君の事怒ってるよ
『こうなる事を見越して居なくなったんじゃないか』って
もし、もしそうなら、早く戻ってきた方が良いよ
きっと帰ってきた時に大変な事になるから!
人影の消えた海岸に、高く低く波の音が響く
月明かりの下で幻光虫が舞った
END
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