消えない真実
しっかりとした意志を宿した眼をする黒魔道士達
ほんの少しずつ意志を持ち始めたジェノム達
本当の真実
すべての一番の元凶だった人間は、故郷と呼ぶしかない星と共に消え去った
そして、残されたのは悲しい現実
すべてを知っていた人と
何も知らずにいた人と
利用したモノと
利用されたモノ
すべて終わってしまえば、残されたのは酷く複雑な事情、感情
目覚めた僕が見たのは
怒りと悲しみが入り交じった、黒魔道士達の顔だった
「よく考えて見ればさ、普通の人達なんていうのは、何が起きてたのかなんて知らないんだよな」
僕の枕元で、お見舞いに来たジタンが自分が持ってきた果物をかじりながらぽつりと呟いた
「……?、なんの話だい?」
彼の言葉は、時々主語が抜けていて酷く解りにくい
「……だからさ、実際の所あんたが、何をしたのかってこと」
……ああ、その事か
「他国に侵攻したのは、あの女王様だろ?その後の事だって………」
「そう言われれば、そうかも知れないね」
あまり表だって行動はしなかったからね
「それで?それがどうしたんだい?」
ジタンは、すごく複雑そうな顔をした
「別に、それだけだよ」
窓の外から赤く染まる夕日が見える
遠くで、誰かが話す声が聞こえる
笑える程平穏な……平和な光景
造られた生き物のはずのジェノム達も、黒魔道士達も、しぶとく生きている
周辺の国々を侵略したのは、アレキサンドリアの前女王
そして、その手足となったのは、ここにいる黒魔道士達
普通に暮らす人々が知っているのは、それくらいだということ
アレキサンドリアは、女王が死んであの子が必死で国を纏めている
………僕の事は何も言わないで
黒魔道士達の事も必死でかばって
言ってしまえば楽になるのにね?
誰のせいなのか………
僕のせいだってすべてぶちまけてしまえば楽になれるのにね?
空が赤く赤く、染まっている
流れる風が冷たく変わる
彼女が何を思ってそんな事をしているのか、なんて知らない
過去の事も、いろんな事をすべて知らされて同情しているのか
それとも、何かそうしなければならない事情があるのか
……ああ、ジタンの為っていう線もあるね
ジタンが僕と同じ生き物だ、なんて知れたら何をされるかわからないものね
空が暗く染まっていく
窓の外で聞こえていた明るい話し声は聞こえない
本当はね、何が言いたかったのか解ってる
必死で受け入れようとする彼等の事も
どういった心境なのか、僕の事を認め
すでに受け入れてしまった彼等の心の動きも
ホントは全部知っている、……気づいている
けどね、そういう訳には行かないんだよ
それは君も解ってるんだろ?
家々に灯る小さな明かり
窓から流れ込んでくる空気が夜の気配を伝えている
小さく切り取られた窓から見える空には
テラの姿は見えない
END
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