時々刻々と変化する、「H album -H・A・N・D-」 全曲レビュウ。

01Arabesque〜千夜一夜の夢〜/02 Anniversary/03 恋涙/04 【AOZORA】/05 キミハカルマ/06 Love Me More/07 Breath
08 WATER SCREEN -theme of H-/09 ビロードの闇/10 ダイヤモンド・ストーリー/11 駅までは同じ帰り道/12 未完のラブ・ソング/13 99%LIBERTY/14 In My Heart


track01 Arabesque〜千夜一夜の夢〜
lyrics&compose:井手コウジ arragement:鈴木雅也
* 少々「やりすぎ」かなあと思ってましたけど、今聴くとカッコイイですね。エスニックかつダンサブル、ってのはこれまでありそうで無かったアプローチのような気がします。「アラビアンナイト」というモチーフも劇的。冬コンでのパフォーマンスは大変妖艶でした。

* 「Alf Layla wa Layla」っつーのは「千夜一夜物語」という意味だったんですね。なんの呪文かと思ってたら。

(07/04/30)




track02 Anniversary
lyrics:Satomi compose:織田哲郎 arrangement:家原正樹
* 今となっては大変ファンに愛されている曲ですが、この曲はやはりコンサートで「化けた」んだと思うんですよねえ。「KiSSU」とのセット売りでの底上げ効果はあったんでしょうけど、年明け以降もオリコン上位にいたし。何よりそれはワタシ自身の実感です。いい曲だなあとはボンヤリ思ってたけど、CD聴いたり、テレビで歌ってるのとか見てただけの時と、アニバコンを見た後では、この曲に対する思い入れが10倍違いました。

* 光一さんも歌詞絶賛でしたけど、やっぱBメロの詞がいいですね。一緒にいるのがあまりに当たり前の存在。だけど、それがどんなに素晴らしい奇跡的かってことを、今しみじみと実感している。ただ甘々なんじゃなくて、一緒に歩んできた道のりを踏まえてこそ、の「愛してる」だからたまらない。釣った魚にこそ餌をあげましょうということですよ!

(07/04/30)




track03 恋涙
lyrics:堂本剛 compose:堂本光一 arrangement:石塚知生
* 「恋涙」というタイトルを見たときに、「『こいなみだ』って読むんだよね…間違っても『れんるい』じゃないよね…」と戦々恐々としていたら、まんまと「れんるい」でした。造語自体に拒否反応を示してしまう昔の人なもんで…。しかしタイトルに持ってくるのはやっぱナシだろー。

* 剛さんの女性(ギャル)視点の詞に、光一さんの耳馴染みの良い曲、っていう黄金の組み合わせは、「愛のかたまり」と「恋涙」の2曲だけなんですけど、なんか既にパターン化してしまったようにも感じられます。というのも、「架空の女性視点の恋愛ソング」というものに対しては、2人が作ったという事実以外にファンのニーズはないんじゃないかと。だからワンパっぽく感じられるんじゃないかと。厳しいようですが。以前だったら、「剛さんはこういう詞を書くのか」とか、「光一さんはこういう曲調が好みなのか」というような、2人の嗜好とかを受け取るメディアとして重要な役割があったわけですけど、今となってはそういうのはソロ活動でいくらでも吸収できるわけなんで。そういう現状でこの曲をKinKi Kidsが歌う意味って何かあるのかなあ?なんて思うんですよね。

* そんなことはキンキさんは重々承知で、だからこそ「i album」の「futari」が出てきたんだと思います。ただ、剛さんのギャルな部分ってのは、E☆Eでは逆に出しづらくなってるような気もするので、たまにどこかで垣間見せて欲しいなとも思います。

(07/04/30)




track04 【AOZORA】
lyrics:高須光聖 compose:大智・宮崎誠 arrangement:佐藤泰将
* 高須さんが作詞をするなんて珍しい。「新堂本兄弟」の作家さんとしてKinKiさんにはお馴染みの存在なんでしょうが、どういう経緯でそうなったのかが知りたい。それ以外には特に興味がない曲だったりします。サワヤカすぎて特にひっかかりドコロがないんだもん。最後に「ふたり」とか慌てて入れたところで別に引っかかりませんよー。

(07/04/30)




track05 キミハカルマ
lyrics:前田たかひろ compose:大智 arrangement:家原正樹
* かなり好きです。「忘れたい?忘れない?…忘れられない」とブワーッと広がるサビがたまらない。あとキーの高さも聴きごたえがあって好きです。歌謡曲っぽくない(と思う)し。リズムとしても16を使ったりしてて。光一さんの「ない」と、剛さんの「あい」が重なるAメロ終わりもニクイですね。

* でも一番気に入ってるのは歌詞かなあ。全体を覆う悲劇的なトーンがなんとも。更に言っちゃえばワタシの中ではSFの世界だったりするんですよね。萩尾望都の「モザイク・ラセン」とかを連想させる。あー、やっぱコンサでやって欲しかったな。

(07/04/30)




track06 Love Me More
lyrics:白井裕紀・新美香 compose:Marcus Demulf・Marit Woody arrangement:ha-j
* 英語なんで歌詞が邪魔にならないのもありますけど、単純に「聴く」楽しみがあります。いろんな音に耳を澄ましていると、あっという間に曲が終わっちゃって、もう1回聴こうか…みたいな感じ。あーでも自作でない光一さんのソロ曲って、割と全部好きだったりする。これは光一さんと嗜好が近いということなんじゃないかしら!?←ただファンだってだけじゃないかしら。

* それにしてもまんま洋楽ですよねえ。いや、それがダメってわけじゃなくて、光一さんってやっぱりチャレンジャーだなと。こういうループ系の音楽っていうのは、日本ではやはりなかなか受け入れられにくい面があると思うんですが。でも、「カッコイイし、好きだから」ってんでそれをやっちゃう。音楽的な冒険、というと剛さんがやはりソロで目立った活動をしているので、それに目を奪われがちですけど、今の立場とか国内の音楽シーンを考えれば、光一さんもかなり趣味的(マニアック)なことをしていると思います。これくらいのものが自作できるようになったらもっとカッコいい。

(07/04/30)




track07 Breath
lyrics&compose:河口京吾 arrangement:武藤良明
* うーん、どっからどう聞いても河口恭吾の曲だよなあ。だったら河口恭吾が歌えばいいんじゃないかしら。…というツッコミは取りあえず置いといて。改めてKinKi Kidsのアルバムにこういう抽象的というか観念的というか、アーティスティックな曲が入ってくると、アイドルの曲ってわっかりやすいんだな、ということを逆に思い知りますね。

* 編曲の武藤さんは河口さんと長年組んでるアレンジャーの方のようですが、今回は演奏も全部一人で手がけて下さってるんですね。最近ではドリカムのサポート(ギター)なんかもしてるらしい。朴訥な音の使い方なんだけど、やっぱり要所要所オシャレ。

* 誤解覚悟で読み解けば、過去の苦い恋の経験を、わかっていながらいまだに繰り返してしまう、ダメな、気だるげな日常が浮かんできます。…ホントダメだな〜(笑)。しかしここで「あの日々」を思い出しながらつく「溜息(=Breath)」ってのは、本当に深いですね。一言では言い表せないものが込められている。オトナだな〜。

(07/04/30)




track08 WATER SCREEN -theme of H-
compose&arrangement:十川知司
* これまでオーバーチュア的な物がインストとして入ったことはありましたけども、ど真ん中に入ってきたのは初めてですね。E☆Eの音楽面では中核的な存在となっている十川さんの曲。なんて素敵なんでしょう。「theme of H」とありますが、「ビロードの闇」の発売イベント向けに作られた曲…でもなかったんだろうか。なんかちょっとこのアルバムには勿体無いぐらいの佳曲だ。ちゃんとしたコンセプト・アルバムだったらもっと映えたのに。

(07/04/30)




track09 ビロードの闇
lyrics:Satomi compose:林田健司 arrangement:CHOKKAKU
* 確かにキンキさんじゃなきゃ歌えない曲。キンキさんじゃなきゃ踊れない曲。そういう意味でこれをシングルカットした意義ってのは大いに理解できる。理解できるけど…そんなに好きでもないッス。ちょっと濃すぎるかなあ。ワタシの中では「情熱」とかと同じ扱い。

* 林田氏による曲の提供は、正式にはこれが初めてとなるわけですが。何故このタイミングなのかなあと、ちょっと疑問でしたね。林田氏はこの曲のアレンジャーでもあるCHOKKAKU氏とのコンビで、1990年代半ばにSMAPに多くのヒット曲を提供したことで知られますけど、2000年に表立った活動を停止。その後は主にインディーズで活動しているようですが、メジャーアーティストへの曲提供ってのも、随分久々のはずです。

* いろいろな巡り合わせ、みたいなものがあったのかもしれませんね。これが林田氏の復活のキッカケになれば、という、林田氏サイドとKinKiサイドの双方の想いがあったのかもしれません。林田健司といえば、「青いイナズマ」を巡って、SMAPがKinKiの曲を取ったの取らないのということがありましたので(つーか元々は林田氏のシングル曲なんですけどね…)、そういう過去の欲求不満を、ほとぼりが冷めた今になってKinKiサイドがやっと解消しているのかな、なんて勝手に考えていたんですが。そんな浅い話じゃないんだろうな。

(07/04/30)




track10 ダイヤモンド・ストーリー
lyrics:松本素生 compose:飯岡隆志 arrangement:CHOKKAKU
* ロック色の強いナンバーではありますが、ただ押せ押せじゃなくって、リズムにも落ち着きがあるし、なにより叙情があるのがいいですね。GOING UNDER GROUNDの松本さんの詞のおかげもあり。

* しかし光一さんのボーカルの音程がブレ過ぎだなあ。ハモもイマイチな感じに聞こえます。ハモリについては多分音程が悪いってわけじゃなくて、そもそもこの曲には不要なんだと思います。だからなんか耳につく。前から思ってたけど、キンキってレコーディングでボーカルの修正をあんまりしませんよねえ。ライブで聴いた方が上手いなと思うことが多々ある。

(07/04/30)




track11 駅までは同じ帰り道
lyrics:久保田洋司 compose:飯田建彦 arrangement:長岡成貢
* 一聴すると、まるで「C album?」と思っちゃうような爽やかアイドルソング。歌詞も「高校生?」って感じ。だからここでこれを「イイ!」と言ってしまうと、いかにもオールドファンの狭い了見って感じで嫌なんですけど。でも案の定好きです。よく聴いてみると、アレンジもなかなか小技が効いてるし。

* 何よりもキンキさんのユニゾンが堪能できるところがイイですね。一時期重なりが悪かった時期もあったように思いますが、近年は年を経るごとに声の一体感が増してる感じがします。剛さんの声でもない。光一さんの声でもない。どちらの声よりも素敵。なんか別の生き物みたい。この「音」が聴けるのがファンとしては至上の喜びだと思います。だからユニゾンの無い曲ばっかりだとつまんないんですよねー。

(07/04/30)




track12 未完のラブ・ソング
lyrics&compose&arrangement:Gajin
* 確か光一さんがこの曲について、「挑戦」って言い方をしてたんですね。これまでには無かったタイプの曲へのチャレンジだったと。確かに、何と言ったら良いのか…古ぼけたアメリカン・ロックのようにも聴こえるし…とにかくイマっぽくはないんですよね。track10と曲調でちょっとカブる部分もありますけど、こっちのほうが断然男性的というか、硬派な気がします。

* とってもシリアスなんで、歌唱力が問われるという部分もあるだろうな。ただ、Gajin本人によるコーラスが全体的にブ厚いので、track11みたいにキンキさんのユニゾンを堪能する、という面ではちょっと物足りない。

(07/04/30)




track13 99%LIBERTY
lyrics:前田たかひろ compose:織田哲郎 arrangement:家原正樹
* PVまで作られた、準シングル待遇の曲。シングルリリースを競った「ビロードの闇」よりも、今後ライブで演奏される機会はきっと多いでしょうね。とにかくどの曲にも似ていないのがスゴイ。そしてリズムのハマリ方がスゴイ。おそろしく「ノリ」の良い曲です。歌っている人はさぞ気持ちいいだろうと思います。だからキンキさんの評価がすごく高いんじゃないかな。

(07/04/30)




(Bonus track) In My Heart
lyrics&compose:オオヤギヒロオ arrangement:石塚知生
* すごくいい曲なんですけどね。Bメロのハモリとかたまりません。でも、「Love is…」とかに比べてどうにも扱いが悪い。やっぱライブでのパフォーマンス如何で曲って変わるよなあ。この曲もやれば良かったのに。

* 「H album」ってどうにも影が薄いもので、最初は大いに文句をつけてやろうと思って書き出したんですけど…なんでこの曲が入ってるのかわからない、というような曲があまりないですね。スタッフも、「G」みたいに挑戦と言う感じではないけど、本当に信頼のおける人たち任せてる感じで。特にtrack08のインストから、この「In My Heart」まで通して聴くと、なんかしみじみとした味わいが後に残ります。多分、track03と04がちょっと自分の中で許せないんだと思う(笑)。うん、後半イイです。

(07/04/30)


以  上