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時々刻々と変化する、「LOVE FADERS」 全曲レビュウ。

01 LOVE FADERS/02 Everybody say love/03 FUNK 一途 BEASTS/04 CREPE/05 MIX JUICE/06 Butter/07 此れ 其れ/08 Kun Kun Yeah!〜Muscle Commander〜/09 AGE DRUNKER
/10 I'm just me/11 Super miracle journey!!!/12 Wedding Funk/13 Oh.../14 あなたへ生まれ変われる今日を/※Excuse me I'm Honey/※Bubble dancer


01 LOVE FADERS
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
 元々多作な人ではありますけど、前2作のヘビー級フルアルバムリリースが続いた後のさらにこれ。一体いつ作る時間があったんだろう?という感じでした。 昨年のツアーをやりながら生まれた曲も多いんでしょうね。そういう意味ではコンセプチュアルなアルバムというよりも、 生まれも育ちも違った曲が詰め込んであるという感じなのかも。
 タイトルのインスト曲はピアノとベースがとてもきれい。何となく海辺にいるような気持ちになります。

(20/06/25)






02 Everybody say love
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ つんざくエレキギター。前2作のダウナーな入りとはあまりに違いすぎて、ええっとなります。 聴きなれないアッパーな音色…と思ったら、ギタリストはマサ小浜さんという方なんですね。いやかっけえ。以降の展開も、メロウな聞かせどころもありますけど、とてもダンサブルでノリがよい。新鮮。
▲ しかし歌詞をみると…これはある意味「人類補完計画」ですよね。苦しみから解き放たれるために何をすべきか?という宗教的な提示だと思います。 決して重たいばかりのメッセージではないのですけど、核心的な説法だからこそ、ビートにのせて淡々といく、みたいなバランスも感じる。
▲ しかし個人的には後半連発される「アーン」とか「ウーン」っていう、気のないお色気ボイスがエロかわいすぎてそこばかり聞いてしまう。いや気があったらそりゃエロすぎなのだけど、 気がない感じがなんともかわいい。そのエロカワを聞きたいがために説法をきいてしまう。こ、これは高度な戦略…!ファンキーエロ説法ってそういうことだったのか!

(20/06/25)






03 FUNK 一途 BEAST
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、竹内朋康
▲ これまでにもケリー名義でこりゃラップだよね、って歌い方の曲は結構あったんだけど、やはりHIP HOPという感じはしなかったんですよね。この曲は結構HIP HOPに振ってきたなという感じ。タケちゃんのアレンジかっこいいよねえ。好きです。
▲  「一途」って「いちず」かと思ってたら「いっと」なのね。「it」にも通じる日本語。あと「Funka fox」って何だろう…きつね…?歌詞はどこかおバカっぽいところがなんか助かる。


(20/06/25)






04 CREPE
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ このアルバムの割と中心にある曲というか、とても強い祝祭感に満ちたサウンドですね。 しかし歌詞はとても不思議。「CREPE」は何かの比喩とかじゃなくてまんま自分なんですよね。クレープみたいに僕を食べてよ!おいしいよ!という曲です。Mr.味っ子かっ。
 「愛する」に類する言葉として「食べる」という表現を、それこそファーストソロアルバムの頃から剛さんは使っているわけで、 むしろ「食べる」が「愛する」より上位に置かれている感すらある。そして「よーし食べちゃうぞ!」みたいなオヤジ的なアレでは勿論なくって、むしろ主観は「eat me」なんですよね…。 「食べてよ」だけでも相当のパンチラインなのに、この曲では「濡って」(!)、「弄って」(!)、「(白いクリームを)かけて」(!!!)、とかまでついているのですから大変!それでこのお祭り感満載サウンドですので、ライブでやったら大変な乱痴気騒ぎになるんだろうなあ。

(20/06/25)






05 MIX JUICE
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
 これはすごくプリンスっぽいんだろうな。と流石に洋楽リテラシー皆無なワイでも何となくわかる。
▲ 
ミックスジュースからS〇Xという連想は割とたやすいかなと思うんですけど、 「交じる」が区別がついたままざり合うことであるのに対し、「混じる」は区別がつかなくなってまざり合うことなんですよね。で、ミックスジュースってのは「混じる」もの。 ここにつよっさんのS〇X観みたいなものを感じなくもない。互いに飲みあって区別がつかなくなって、ついには飲み干しあって世界から消えてしまうような…。
▲ それにしてもさっきまで「食べて」とか言ってたのに今度は「飲んであげる」とか言ってますよ!えろっ! でも「飲んで“あげる”」なんだよねえ。「飲みたい」じゃなくて、「(飲んでほしいんでしょ?だから)飲んであげる」なんですよねえ…。 「〇〇してあげる」ってワードはとても剛さん的だと思っている。

(20/06/30)






06 Butter
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ この曲は衝撃的でした。レコードが針飛びしているように 正確に繰り返される「I'm butter…」。時間がループしてるような感覚になってちょっと頭がおかしくなった(笑)。しかも[a-i]って剛さんの発音がとんでもなくピュアなんですよね。 近年の剛さんの曲って、何と歌っているのか一聴しただけではわからないような発音で敢えて歌っていることが多いと思うんですけど、 そういうなかにあっても[a-i]はどうにも誤魔化しようがない。ピュアな[a-i]の繰り返しと、この曲の退廃的な雰囲気のミスマッチにものすごいムラムラしました。 可愛い声してこのどスケベが!みたいな。実質のメロともいえるロイエーなギターがまたイイ。ギターと「I'm butter…」が並行して鳴っていくところは、人声とギターが1:1でせめぎ合う感じでムラムラがますます盛り上がります。
▲ バター一辺倒でいくのかと思いきや、終盤に突如登場する歌詞はとても謎に包まれてますよね…。 この謎を解くにはやはり「4 10 CAKE」を改めて紐解く必要があるでしょう。あの曲は、今曲とは真逆で「You're butter…」と歌い、さらに「I'm hot cake」と宣言したうえで、 「僕の上で溶けて逝っていいよ」と歌っていたわけです。 となれば、「I'm butter…」な今曲は、「僕が溶けて逝く」模様を歌っているということになる。死ぬ。そして、「朧げに煌む河」とか「水面」ごしに「あなた」を見てる感じというのは、 なんとなく目の中にある河であり水面なのかなと感じる。潤んだ目越しに「あなた」を見ながらどうしようもなく「僕が溶けて逝く」。そんな情景。死ぬ。
▲ 「CREPE」からここまでのフードファンク3部作。昨年のツアーでも、「4 10 CAKE」が生まれるに至って、 「フードファンク、新しいねえ!いいねえ!」ってバンドのメンバーとキャッキャと 話してましたけども、「君を食べたいよ」ならまだしも、「僕を食べて」というメッセージの方が前に出てきてしまっているのが業の深さというか。 誰にも縛られず自由にいたい、という気持ちと、食べられて誰かの一部になってしまいたい、という気持ちが共存しているのが剛さんなんだろうな、と思わせるものがある。

(20/06/30)






07 此れ 其れ
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ なんだかどこか歌謡曲みたいに感じる…これが90年代R&Bっぽさということなんですかね。 メロドラマを歌いまっせという雰囲気が最初からぷんぷんしているのですけど、後半になってしつこく繰り返されるリフに「なんだこの曲は?」と油断したところで、 「戻れないで いい?(超ぶりっこ)」というワンフレーズで息の根を止められる。「戻れないで いい?」の後のブレイクって、絶対「ジュリーーーーーー!!!!!」とか、「ヒデキーーーーーーーー!!!!」とかいうファンの絶叫が入るところですよね(断言)。 やっぱりスタアが歌う歌謡曲感があるんだよなあ。曲調というより、“本物の歌手”感が歌謡曲を感じさせているのかも。
▲ 歌詞としては、フードファンクという形をもって歌ってきたような内容を、その形をとらずにスパーンと直球で出してきたという感じ。 特に出だしの「蕩む僕を 君の瞳で触って もっと 好きだよって」辺りのストレートさは、エロいを超えてもうなんか、泣ける。 そしてその後をたどると、何だかそれなりに一緒にいた二人が一線を超える歌、みたいなイメージが湧いてくるんですよね。「最初の煌めき 忘れないで 何度でも 耀こうよ」とかまんまJ-POPみたいなフレーズも、 どエロい意味に換骨奪胎されてしまうんだけど、でもやっぱ泣ける。切実なものがある。
▲ 「此れ」「其れ」という謎めいた指示詞は、「彼れ(あれ)」にしてみるともう疑問の余地がないくらいアレのことなんだろうな。 「此れ」は僕の彼れで、「其れ」はあなたの彼れということなのだろうか。それを「綴じる」、一つにする。いや、それ”で”「綴じる」と歌っているのか。 「綴じる」は「綴る」「繋がる」「連なる」にもつながっていく語感があって、とても上品な表現だなあと思う。「閉じる」だったらねえ!いろいろ大変!

(20/07/01)






08 Kun Kun Yeah!〜Muscle Commander〜
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ ねっとりぐっしょりな曲が続いたもので、 この辺でナンセンスな曲がきたね!と思ってニヤニヤしながら聴いている。主な「Kun Kun」と、中盤のゆったりした「Kun Kun」、両方とも「剛さんは一体何を一生懸命歌ってるんだ…」という気にさせられるところがすごくイイ。真面目に聴いてるとちょっと頭がおかしくなりそうなので (特に途中から入ってくる東南アジアの民族楽器の木琴みたいな音色の不協和音とか)、ニヤニヤ、ゲラゲラしながら聴いていいんだと思う。 しかしこれのどこがマッスルコマンダーなんだ?
▲ 付属のMVみたら笑えるトレーニング動画というよりも笑えるIVだった。どうしてもこのアルバムではエロからは逃れられない!

(20/07/07)






09 AGE DRUNKER
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ この言葉数の多さとアップテンポでEDM風なところ、 「TU」の「魂サイダー」とかを彷彿とさせる。こういう曲調なときってのは割とストレートに世の中に物申したい時なんじゃないかと思う。「怒り」の表出というか。 逆に前2作にはこういうストレートなお説教曲(言っちゃったよ)はなかったかも。関心が内に向かっているか外に向かっているかの違いなのかな。耳を患ったこともあって、 近年は自分がどれだけFUNKできるのか、というトライアルのほうに焦点が合っていたのかもしれないですね。
▲ AGE DRUNKERって、なかなか幅のある解釈のできる造語だなあ。「飲みすぎ」ってのはある意味「過剰適応」ともとれる。“時代”を飲まされるのは確かにウンザリする。
▲ しかし何回聴いても「♪エイジドゥラン〜…(??)」としか聞こえないのだけど、(??)部分の譜割りは一体どうなってるんだろう?

(20/07/08)






10 I'm just me
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ 「ディアンジェロっぽい」と言われたりしているみたいですけど、 とにかく歌の説得力がないと成立しない曲だなということはわかる。こないだラジオで、ギターの音とかがぶつからないように歌をレイドバックすることがある、 みたいなことを剛さんは言ってましたが、この曲はギターもレイドバックしてない?音同士が「お先にどうぞ」「お先にどうぞ」をやっているような感じもあって、すごくセッション感がある。
▲ 「今日も明日も良き日になるよ」「僕を愛するよ」と、至極ポジティブな内容の歌詞なんだけど、 どうしようもなく漂ってくるこのもの悲しさは何なんでしょうね…。思えば、「自分は自分でしかない」と認めるということは、救いであると同時に、可能性の断念でもある。 でもそこからしか始まらないものがあるのも確かで。「Funky レジ袋」にも通じるような、やるせなさのなかに息づく強かさをとても感じる。

(20/07/14)






11 Super miracle journey!!!
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ この曲を聴くと一気に2019年の6月〜7月を思い出す。 もっと正確に言えば6月18日〜7月9日。まさにソロツアーの真っ最中だった「あの時」が刻印されている感じがします。病に臥せっていたジャニーさんを励ますために作られた曲ですからね。 音的にもやりすぎなくらい色んな仕掛けを詰め込んで、歌詞の全部に「!!!」がついているのを見るにつけ、「!」の一つ一つが、 「ジャニー!」「戻ってこい!」「ッシャオラー!」と叫んでいるようでぐっときてしまう。
▲ これまでにジャニーがくれた言葉をそのままジャニーに返すことで、もらったエネルギーを彼に還元したいというような思いを感じる歌詞なのですが、 後半はジャニーへの思慕があふれ出てしまっているというか、感極まっている感じもする。ジャニーがくれた言葉のなかでも、特に深いところに刻んでいる言葉を、 自分がジャニーとなって自分に言い聞かせているようでもある。オレがジャニーでジャニーがオレで…。

(20/07/08)






12 Wedding Funk
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、Gakushi
▲ 結構な謎曲だと思う。Wedding(結婚式)というテーマもしかり。シンプルなメッセージもしかり。 曲の長さもしかり。誰かの結婚を祝って作ったのかな?とも思いましたけど、それにしてはどうにもお祝い感が薄い。結婚行進曲のフレーズなんかも入ってますけどね。 FUNKと結婚します!という曲にもとれる…?いつか謎が解けるのだろうか。
▲ 「どれだけ低音で歌えるかチャレンジ」みたいな低いボーカルと、 まるでデュエットしているようなギターフレーズはなかなかシブイ。これもマサ小浜さんなんだなあ。ギタリスト変わるとやっぱ新鮮ですね。

(20/07/14)






13 Oh…
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、十川ともじ
▲ すごくストレートなラブソング。一目惚れというか、恋に落ちるために出会った運命の人のことを歌ってる。 そしてそこにはいつも音楽がある…と。とても言葉少なで、変拍子がまじる譜割りもとても特殊だし、大事なところは「Oh…」で聴く方のご想像にお任せしちゃう。 ラブソングに対する照れもみたいなものをちょっと感じます。でも、照れてフィクショナルな恋を綴るのではなく、研ぎ澄まされた言葉だけで、潔く短く終わるのがイイ。 そこに勝手に真実味を感じてしまう。剛さんの短い曲って大体名曲。
▲ 「もうきみのことをいま以上愛せないよ」って歌詞は、J-POPにありがちなレトリックの最たるものだと思っているのだけど、 「そう何度逆らってもまだきみのことを好きになるよ」と続けて、レトリックを超越していく感じが、とても感動的に響いてくる。 陶酔感など全くなく、好きすぎて苦しい、けどどうしようもない、という情感が強く出ている、すごいボーカルだと思う。サビ後のアウトロがそれをさらに後押ししている。
▲ あと「気づけば歌っていたね」、って歌詞の主語が「二人」にとれるところがタマラナイ。

(20/07/17)






14 あなたへ生まれ変われる今日を
lyrics&music:堂本剛 arrangement:堂本剛、十川ともじ
▲ この歌詞には2つの「あなた」がいる。 何故なら「あなた」が「あなた」へ生まれ変われる、と歌っていると感じるからです。前者の「あなた」は日々を生きる「あなた」で、後者の「あなた」は内なる「あなた」なんじゃないかなあ。 実は、「あなた」は「わたし」にそっくり入れ替えても全く意味は同じになると思う。でも敢えて「あなた」と言っているのは、我々に対する呼びかけでもあり、 内なる「わたし」への敬意も込められているからのような気がします。内なる声に耳を傾け、内なる自分を尊重せよ、というメッセージなのかなと。ちょっと現状否定的ですけどね…。 まあ肯定できるような世の中ではないことは確か!
▲ 「これだけの日を跨いできたのだから」を端々に彷彿とさせるサウンドで、 明らかにアンサーソング的な位置づけなんだけど、あれから14年が経って、一体何が変わったんだろう。「これだけの…」って、実は諸行無常を歌っていて、でも達観しきれずに光を求める、 みたいなアトモスフィアを感じるんですよね。それはライブで歌う中でどんどん付け足されていったアウトロ部分に強く表れていると思う。 でも、この曲では「生まれ変われるよ」と歌っているわけですよ。諸行無常、だからこそ、あなた(わたし)も生まれ変われる、という一つの「答え」。正真正銘のアンサーソングということなのかもしれない。
▲ 最初このレビューを書こうと思った時、「Greatful Rebirth」という見事な予告からのエンドリケリー復活で、立て続けの「HYBLID FUNK」、「NARALIEN」、「LOVE FADERS」リリースを、エンドリケリー誕生からの「Coward」、「Neo Ax Raibow African」、「I and 愛」の3部作になぞらえてみる気マンマンだったのだけど、聴いているうちに「TU」をすごく彷彿としてしまったのでした。エンドリケリーを復活させるにあたって、FUNKというジャンルを強く意識したということはあったんだろうけど、やはり2016年、2017年、2018年というのは、SMAPの解散だったり、剛さんが突発性難聴を患ったりと、思いがけない世界線にきてしまった感があった。そういう意味でも、前2作ってのは割と特殊な位置づけになったのだと思う。だからこそすごいアルバムになったんですけどね・・・。それに対して、「LOVE FADERS」の明るさ、多様さ、自由さ、(あとエロさ)ってのは、前2作を経て行きついたものというよりも、剛さんが元々持っていたものなんだろう。「あなた」へ生まれ変わったんだろう。

(20/07/17)








以  上