Endless SHOCK
at 帝国劇場 2009.02.14 / 2009.03.07
○ 前回のパンフレットがものすごく美麗だったので、異常に期待レベルが上がっちゃってたんですけども、今回は至ってオーソドックスな感じでした。カムバック!レスリー・キー!○ リカ役の佐藤めぐみさんは、テレビや映画などでよく見かける女優さんだという意識はあったんですけど、何で見かけたんだか肝心なところが思い出せてませんでした。始まって間もなく思い出した。映画「L Change the World」に出てた、環境保護団体のおっかないネーちゃんだ。あれはかなりのホラーでした。
OVERTURE
「大桜」「Endless SHOCK MEDLEY」「CONTINUE(Opening ver.)」
○ 「昨年は菊田一夫演劇大賞を受賞しました」と毎回のオープニングで律儀に言う光一さん。・・・・カーテンコールならまだしも、オープニングっていうのが通常はありえないことなんじゃないかと。これ誰が言い出すんだろうね。「ここに『菊田一夫演劇大賞・・・・』って台詞入れようヨ!」とかって。何にせよ、ロビーにいらっしゃる菊田先生(胸像)には、毎回しっかり聴こえていると思いますので、それだけでも言う意味はあるのかな。○ 今回は生オケ投入というのが大きなふれ込みの一つでした。しかし、オープニングでせり上がってきたオケピの中の面々は相変わらず弾いてる「雰囲気」。実際はストリングス4人、ブラス3人ぐらいの生音がオケテープにカブって演奏される、といった感じでした。
OFF Broadwayの劇場のショー ........ バックステージ
「So Feel It Coming*」「NEW HORIZON」「Yes We Can!」
○ 屋良君は、2008年のSHOCKのDVDを見て、殺陣のシーンなんかでは自分でも「オレこんな恐い顔してたの!?」って言ってましたけども。昨年見たときは、ここのショーのソロダンスシーンですらちょっとイっちゃってるような顔でした。自分を大きく見せようとして力が入りすぎてたんでしょうね。でも今年は全然安心して見れたなあ。それから、屋良君というかツバサもトウマも、これまでここで水色のスーツで踊ってたと思うんですけど、紫のスーツに変わってましたね。流行りを意識したんだろうか。そういや後半のシェイクスピアでもハムレットの衣装が紫になってたような。○ 新ナンバーの「Yes We Can!」はとっても爽やか。横一列に並んで座って歌うところなんてすごくミュージカルっぽい。思えば「SHOCK」ってミュージカルっぽいところは少ないですからね。
劇場の屋上
「N.Y. Night」
○ 生歌の光一さんの歌いっぷりはもう堂に入ったもの。でも、なんだかときどきエノケンの歌とかを思い出すのは気のせいだろうか・・・・。劇場の神様が座長を憑依させてるのかしら!? 佐藤さんは映像畑の女優さんなのに、歌もダンスも上手いですね。ここの歌も素敵でした。○ 素敵といったら米花くん。いやー、なんかKinKi youツアーを経てから、米花君に対する見方がすごく変わってしまいまして。一気に好青年キャラになってしまいました。そう思ってみると、立ち居振る舞いがすごくキリっとしてるんですよね。ダンスも芝居もやりすぎないし。落ち着いてるし。動きの品がいいなあと思って今回注目して見てました。
Broadwayの街 ........ Broadwayの裏の路地
「It's a Wonderful Day」
○ 「オン(ブロードウェイ)の先に何が見えるのか、それを考えなきゃな」というコウイチのセリフ。今回はオーナーが問いかけることによって、コウイチがどういう気持ちでこの台詞を言っていたのか、ということが明らかになります。本人としてはオンとかオフとかには興味がないけれども、カンパニーの皆のためになるならやろう、と。ワタシは正直、「そんな気持ちだったの?」とビックリしました。自分の理想をなかばエゴイスティックに追い求めるのがコウイチというキャラクターだと思ってたのに、なんでカンパニーの皆に変な気を遣ってんのかなと。○ 深読みすれば、コウイチと他のカンパニーメンバーとの力の差は歴然としてて、そこにコウイチのフラストレーションが無いわけは無い。しかしカンパニーとしてやっていく以上、自分のエゴをなるべく押しとどめていかなきゃいけない、とコウイチ自身が強く意識していたんじゃないかと。だからそんなふうな発言になったのかな、なんて思いました。でもこれはダメですよね。コウイチも、カンパニーの面々も、お互いがお互いに遠慮してる部分があるということです。だからこそ、その「遠慮」というタガが外れた時、カンパニーは悲劇的な事件を起こしてしまうことになるんですね。
Broadwayの劇場 第一幕『World Adventure』
「AMERICA」「Jungle」「Tap」「Love and Loneliness」「Shrine」
○ 「AMERICA」は前回から振り付けが変わりましたが、それでもやっぱり華やかで好き。腕を右、左と広げて上にクーッと持ち上げる振りは残ってるんですね。「Jungle」は相変わらず光一さんのアフリカンダンスがかっけー。○ 「Tap」。ChineseとBrasilがなくなって植草オーナーのソロダンスが入ったただけなんですが、この直後の「Love and・・・・」の前半まで合わせてみると、タップコーナーはなんだかとってもなんげーな、という印象。短いコーナーが沢山あった方が目移りして長く感じないということなんでしょうね。でもこの後の台詞で、「なんだかタップリやってた人(植草オーナー)がいたけど・・・・」と光一さんも言ってたので、長いということには自覚的なんだなと思いました(笑)。British(?)はナニゲにずっと変わってないと思うんですけど、町田さんの登場の仕方が今回なんか目に付いたなあ。あのトゥーマッチな感じ。町田さんって本来エキセントリックな性格なんじゃないかと思った。○ 「Shrine」。逆さ吊りになってグルグル回るロープアクション。下でロープを回しているのは秋山君から米花君に交代しているわけですが、やっぱり体重がないからか安定感を欠く感じ。それで逆にスリリングさが増してました。光一さんの衣装はノースリーブの白黒からひらひらした白い王子様ブラウスに変更。ギリシャ神殿っぽいセットに合わせたんでしょう。しかし、二の腕が見れないだけでこんなにも残念な気持ちになるオレって一体・・・・。
バックステージ(Intermission)
○ 前々回、ここでのコウイチの怒り方にある種身勝手さを感じて、人間くさい部分があるんだなー、なんて逆に好感した覚えがあります。何かのインタビューで光一さんも言ってましたけど、コウイチがヤラに言う、「出る前に(セットのトラブルを)わかれって言ってんだよ!」っていう台詞は、よく考えれば無茶苦茶だと。そんなのわかるわけない。コウイチならわかるのかもしれないけど、他の人間にそのレベルを要求するのは無理なことなんですね。コウイチだってそれはよくわかってて、普段は抑えてる。でも、ヤラがスタッフに責任を押し付けるようなことを言ったから、つい逆上して言ってしまったんでしょう。「オレならそこまで責任を持ってやれる。それがオマエにはできてないんだろ?」と言っているも同然です。ここで双方が心の中にあったタガが外れてしまうわけですね。○ コウイチの立場に立ってみれば、なんでそんなことがわかんないんだという怒りも当然。しかしカンパニーの立場にしてみれば、そんなの無理だよ、ってことになる。この時、観客はどっちの立場に立つのか非常に微妙です。ワタシは素直なので(笑)、100%コウイチが正しい、と思って見てたんですけども、いつからかだんだんカンパニーの方に共感するようになってしまいました。そしてしばらくは、コウイチのことを「この人なんでこんなんなんだろ」とか思ったりしてた。それが前々回あたりから、「誰もついてこれないレベルにあるが故の、苛立ちとか、孤独(=弱さ)がこの人をこうさせるのかな」なんてことをボンヤリ考えるようになりました。理解遅っ。○ しかしそんなことは植草先輩はとっくに見抜いてて、「コウイチ(=光一)がストイックすぎることが、「Endless SHOCK」の構造自体をストイックな作りにしてしまってて、観客が感情移入できるとっかかりが少ない」と看破していたようです。どんなインタビュー読んでも、植草先輩の「Endless SHOCK」に対する見方は的確、かつ、光一さんに向ける想いがとてもハートフルで、なんでこんなにいい先輩なんだろうと不思議に思うくらいです(ホント失礼)。○ 「走り続けるって、疲れないか?」という台詞は、今まで後輩がコウイチにかけ続けた言葉ですけども、それにコウイチが本心で答えるなんてことはありえない。しかし、この言葉を心許せる先輩がかけたときに、そこに絶大な説得力が生まれました。さらにそこから続くやりとりもいいです。コウイチは、「あなたはそうやって(エンターテイメントの勝負の世界から)逃げたんだ!」と、さっきのヤラとのやりとりよりも更にオーナーを感情的に糾弾していきます。でも、オーナーはその言葉すら受け止めるんですね。その懐の深さ。ここでは、コウイチの若さというか、青さ(=弱さ)がさらに印象に残ります。コウイチだって様々なものを抱えている。それでも必死に、ステージに立ってるんだ、ということを強く印象付けます。
Broadwayの劇場 第二幕『Japanesque Show』
「プロローグ」「武士」「死闘」「罠」「落城」
○ 本身の刀が渡された時、大音量で鳴っていた音がピタっと止みます。その瞬間に明らかになる光一さんの息遣いの荒さに、毎度ながらドキっとさせられます。あれを芝居でやろうったって無理だ。あんな状態になるまで動き回ってるなんて、想像を絶する。光一さんが開演前に毎回「俺の身体、もってくれるのか?」って思うのも頷ける。○ 今回、刀を渡すのは町田さん。前回もそうでしたっけ?なんか今回はこの時の町田さんに妙に注目してしまいました。マチダは、あの距離で、コウイチの事故を目撃することになるんですね。ものすごいショックに違いない。町田さんの芝居もそれを感じさせるだけの臨場感がありました。あの距離でみるあの事故ってどんな感じだろう?と思って、想像でカメラアイをマチダさん目線に設定したりしながら見てました。
Prologue
「死への招待」「In the Cemetery」
○ いきなり植草オーナーの登場。どこともわからない森の中で、コウイチの墓穴を掘っています。ガイコツ(=コウイチ?)に向かって話し掛けたり。これはオーナーの夢の中なんでしょうか。抽象的というか示唆的だ。オーナーはすべてを達観しているというか、コウイチが亡くなったと知らされた時も、「わかってる」としかいいませんが、このシーンを踏まえると、オーナーはもうコウイチの死を受け入れてたんだな、ってことがすんなりいく感じがします。
シェイクスピア・シアター
「ハムレット」「リチャード三世」「ロミオ&ジュリエット」
○ 「リチャード三世」では屋良君の演技が変わったのが明らかにわかりましたね。悪党・リチャード三世とは思えない弱々しさ。でもこれこそが屋良君というかヤラというキャラクターということなんだろうなあ。○ ヤラは、「Endless SHOCK」においては一応憎まれ役になるわけですけども、憎まれ役ってのは強くなくちゃいけない。でもヤラはなんだか「可哀相」というのが見てて先に立ってしまうなあ・・・・というのが2008年のワタシの感想でした。でも今回はそんなに可哀相とは思わなかったんですよね。芝居は全体的に前回よりもトーンを落としてるくらいなのに。それはきっと、屋良君が等身大の自分を出してきたからなんだと思います。無理をしていたからこそ痛々しく、可哀相に感じられたんじゃないかな。
ウエクサの劇場のバックステージ
「Don't Look Back*」「Reunion」
○ 「Don't Look Back」は植草オーナーの歌とダンスのソロ。そこにコウイチの姿が影となって二重写しになります。ステージ上に掃除夫姿になった照明さんが上がって、至近距離からライトを当てるという斬新な演出付き。そういえば、ここで植草オーナーが喋ってる時、BGMの中に「ファーーー」ってキーボードが押しっぱなしになっているような音がずっと鳴ってて、音響のトラブルかなと本気で思ってたら、生ストリングス(バイオリン)の音だった、ということがありました。うーん、アレは雑音にしか聴こえないぞ。○ 一方その頃、リカは病院で或る知らせを受けていました。父である植草オーナーにこの事実を告げようとするリカ。でもオーナーはリカにみなまでは言わせず、「わかってる」とだけ言います。2幕の始まりのシーンも含めて、この伏線の張り具合が絶妙だなあと思いましたね。コウイチが実は息を引き取っていたという事実は、この後、リカがコウイチをナイフで刺すシーンで明らかになるわけなんですけども、植草オーナーはそれまで全然気付いていなかったわけではなく、薄々わかってたというレベルでもなく、しっかりとコウイチがもうこの世の存在ではないということがわかっていた。オーナーは全てをわかってる存在でなければならないんですね。だからこそあの包容力、あの優しさが出る。そう考えると、存在としては初期SHOCKのゴーストとなったコウイチの兄さんのようでもありますね。○ そこに突然現れるコウイチ。それに驚くリカとのやりとりはお約束のアドリブコーナーですけれども、佐藤さんはなかなか冷静に光一さんをさばいてた印象。しかし相変わらず「へへっ」と言いながら芝居をするのはオヤジくさいと思います>光一さん(笑)。そしてオーナー、ヨネハナ、マチダとの再会ダンス。このナンバーでぐっときたことは今までなかったんですけど、今回はきたなあ。多分、オーナーは今どういう思いでコウイチと一緒に踊ってるんだろう?とか考えちゃったからだと思います。
ヤラのショーのステージ ........ バックステージ
「Watch Me!」「Why don't you dance with me?*」「What 10 wanna say」
○ 「Why don't you…」は相変わらず盛り上がるなあ。一見、客は静かに見ているだけですけども、ボルテージが上がってくるのがわかります。しかしなんでしょう、このコウイチ、ヨネハナ、マチダの3人の威圧感。急激にMA2人の存在感が増してると思う。ヤラとMADは5人なのに、「オレたちは3人で十分だぜ!」みたいな圧倒的な余裕が感じられてカッコよかったです。それから、ヤラたちが踊る様子をじっと見ているコウイチの佇まいはやっぱり素敵でした。○ ヤラが自分のしたことを告白するシーン。やはり屋良君は芝居を抑え気味というか、弱いトーンできましたね。コウイチに対しては、反感、対抗心、嫉妬、憧れ、・・・・色んな思いがあるとは思うんですが、ヤラからは、コウイチに追いつけない“哀しさ”や“寂しさ”みたいなものを一番強く感じましたね。個人的には“嫉妬”とかをバーンと出してくれる方がスカッとして好きですけども、屋良君に一番合っているのはこういうテイストなんだろうなあ。○ ヤラを刺さずにコウイチを刺したリカの独白。ここ、佐藤さんの芝居は上手かったんですけども、なんか泣けなかった。なんでだろ。まりかちゃんの時はすごい泣けたのに。前のシーンからの感情の蓄積とかもあるんだろうけど。今回はなんだか、リカは元々、コウイチよりヤラの方が好きだったんじゃないかしら、とかボンヤリ思ったりしてた(笑)。だって女はやっぱりカッちゃんよりもタッちゃんの方が好きじゃないですか。○ この後、ヤラがコウイチの手を取って「もう一度同じステージに立たせてくれ」というシーンでは、一度触れたコウイチの手の冷たさに驚き、反射的に手を離すも、改めて決心しもう一度コウイチの手を取る、という芝居があります。これは今までもずっとあった芝居ですけど、手を離してからの間が今回は随分とタップリでした。この間、ヤラの「ああ、オレはなんてことをしてしまったんだ!」みたいな心情の変遷がみえてきて泣けたなあ。ここで泣かせるのは屋良君ならではだったと思います。○ 自らの死を知り、「俺も全てを受け入れるさ!」と言うコウイチ。そしてオーナーと視線を交わし、頷きあって、「だから・・・・思いっきりやろう!」と宣言します。これまでこのセリフにずーっと違和感を持ち続けてきたんですが、オーナーが、「それでいいんだよ」って目で語りかけてくれることによって、コウイチがすごく励まされているのが伝わってきた。今回のSHOCKでは一番泣けるシーンになりました。ここで最も戸惑い、不安なのはコウイチなんですよね。だって自分が死んでるってわかってなかったんですから。それでも、舞台がやりたい。その気持ちは死んでない。でも、この気持ちのまま走っていいんだろうか?と思ったときに、オーナーが「それでいいんだよ」って背中を押してくれた。わーん。光一さんの芝居も、泣いてるんじゃないかしらと思うぐらい感情がこもってました。○ 「What 10…」では、植草オーナーが一緒に踊るのを楽しみにしていたんですけども、踊らず(笑)。その代わりに抱きついてきたリカをしっかり受け止めてました。2月に見たときはリカがだーっと走っていって、オーナーがそれをばしっと抱きとめるのがとってもドラマチックでぐっときたんですけど、3月に見たときはそんなに勢いはなかったですね。その代わり、「悲しいんじゃない。嬉しいの」というリカの言葉がいいなあと思いました。
『It's a New World on the Earth』
「KOICHI vs NAOKI 2009」
○ 直さんのソロステージがなくなり、最初から光一さんのステージになってしまいました。リボンフライングがあって、直さんとのセッションへ。大太鼓でのセッションが長くなってましたけど、客席に思いっきり背中を向ける形なのが斬新。「光一さんの大太鼓を叩く背中がイイ!」という意見が多かったからこそ実現した演出なんではないでしょうか。ワタシもそう思ってた一人ですし。○ ドラムセッション自体はもう完成された内容で、これ以上いじりようがないと思ってたのですが、今回はこれに生ブラスを加えてきましたね。ステージ上にはサックスとトランペットとトロンボーンの奏者の方が上がって一緒に演奏。迫力はありますがますます「BLAST!」化してます。
「Ladder Flying」
○ もう、ラダーフライング見たさに2階席で見るのが常となっているほど、ワタシにとってはここが山場ですね。3月に見たときは久々の1階席で、下から見上げる形でしたけども、それでも光一さんの表情はこれまでよりもさらに気迫がこもってるのがわかりました。G-Rocketsの方々の間を分け入るように前進して、最前線に出て行くトコロとか。ただファーっと飛んでいるフライングとは全然違う緊迫感。しかもそれが年々高まっているように感じられます。これだからSHOCKはたまらない。○ ラダーフライングの出だしのところについて、「月刊ミュージカル」が米花君にインタビューでつっこんでたのがなかなか良かったです。米花君が光一さんにワイヤーをつけ終わると、光一さんは後ろの米花君にちょっとだけ顔を向けて、互いに頷くような仕草をみせるんですよね。これは通常のフライングの段取りではやらないことなんだけれども、ここでは演出としてやっているとのことでした。コウイチのフライングはこれが最後になるかもしれない、という万感の思いをもって、ヨネハナはコウイチを送り出し、コウイチもその思いを共有しながら飛び出している。それをあの僅かな頷きによって表しているということになります。一瞬だけどとても印象深いシーンです。
「MASK」「夜の海*」○ ここのインターミッションからマスクイリュージョンという流れは、いまだ未完成といった雰囲気。他のシーンが随分定着してしまったので、それがかえって目立ちますね。今回はマスクイリュージョンは随分簡素化していましたけども、アレだけだったらもうやらない方がいいんじゃないのかなあ。マスクを取って、素顔を見せて、「夜の海」へ、という流れは美しいと思うんですけど、そこだけ欲しいんだったら確かにマスクはもう1枚でいい。その1枚のマスクを生かすダンスなりがイリュージョンなりが入ればいいなあ。○ 今回の「夜の海」でエポックなのは何といってもリカ。リカがMAと共にコウイチのバックダンサーを務めています。単に、これまでオーナー役が踊ってたポジションに誰かが入る必要があったということなのかもしれません。でも、どうしても「みんなの妹」という印象が強かったリカが、コウイチの最後のステージを支える一員として、他のカンパニーメンバーと同じぐらい重要な役割を担ってるんだ、ってことが端的に伝わってきた。それから、「私は現実を受け入れて生きていく」という間奏でのセリフが別のものになってたのも、個人的には良かったなあと思いました。○ 「夜の海」のラストで一人になったコウイチは、桜の花びらを仰ぎ見ながら倒れ込みます。2007年までは、コウイチは事切れるときにちょっと笑みをみせていたことが多かったと思うんですけども、このところは笑顔を見せなくなったような。2006年までは、メンバーに囲まれながら最期の時を迎えていたので、あの笑みは彼らに向けたものだったと思うんですけど、一人でその時を迎えることになったことでそこに心境の変化があったのかな。2007年はそこらへんの演出が過渡期にあったということでしょうか。
フィナーレ
「大桜」「CONTINUE*」○ 白い衣装に替わり、天に召されていくコウイチが語るモノローグ。以前は「自分が走ることによって、皆を一つにできると思っていた。でも、それは違っていたのかもしれない。皆がいたから走ってこれた」というような内容だったのですが、今回はコウイチ自身は多くは語らず、その語りはオーナーに託されました。でも、コウイチが「皆がいるから俺は走ってこれた」と言うのと、「皆がいるからお前は走ってこれた。お前は一人じゃなかった」と言うのとでは、大きく意味が変わってきます。孤高の存在であったコウイチが、この言葉でどんなにか救われたことか。ちゃんと見てくれてる人がいた。それが自分のことのように嬉しくて、泣けてきました。ここまでくると、自分としては、「コウイチ、よかったね」だか「光一さん、よかったね」だか正直もう区別がついてないんですね。「月刊ミュージカル」の対談で、ニッキが「ジャニーさんは舞台で、フィクションか現実か、そのギリギリのラインを歩かせる」というようなことを言ってたんですけども、まさにそれこそがジャニーズの舞台の醍醐味なんだよなあ。
○ 今回はとにかく、オーナーに泣かされてしまいました。2回目見たときなんてもうオーナーが出てくるだけで泣きそうになった(笑)。でも、単にオーナーがいい人だったから、ということではなくて、オーナーを通してコウイチの心の機微が見えてきたことで泣かされた部分も多かった。植草先輩がSHOCKのことを考え抜いて下さって、かつ、出演者としてアイデアを体現してくれなければ、こういう改定はできなかったと思います。ただ裏方で出すアイデアレベルでは無理。また、事務所の先輩ではない、他の年上の出演者が入ったにしても、コウイチ=光一に対してこんなに慈愛に満ちた目線を投げかけることはできなかったと思います。ジャニーズ事務所って深いなあと改めて思いました。○ 今回は特にジャニーズファンではない友人と観たのですが、だいぶ楽しんでくれたようです。ステージから発散される光一さんのパワーってのは、細かいことはわからなくてもダイレクトに伝わってきますからね。「Endless SHOCK」という演目が、余計なものを可能な限り削ぎ落とした作りになっているからこそ、それが可能になっている。そこに今回は植草オーナーというハートフルな要素がプラスになったということなんだろうな。だからこそ、もっと多くの人に見てもらいたいですねえ。チケットが取れないこととか、全員スタオベとかが、その障壁になってる部分はないかしら。固定客は勿論、最も大事にしなきゃいけない上客。でも理想は、リピーターと新規客のバランスがうまくとれることだよなあ。余計なお世話ですが、何か勿体無いなと思って。
以 上