優れてアーティスティックな部分と、めっちゃ演芸な部分と、全部勢いでひっくるめちゃうっていう、 なんともはちゃめちゃなショーでした。ツッコミどころは満載だったけども、 「稽古してもっと詰めれば良くなるのに」っていう考え自体、「貧乏くさい」と考えているのかもしれないですね。寛斎氏は。以下、順番とかうろ覚えですが雑記。


・入口で、使い捨てのレインコートと、大きなビニール袋、そして協賛広告のパンフレットをもらいました。

・普段テニスコートになっている部分全面に浅く水が張られていました。客席はそれを囲んで東西と南側。北側はステージになっており、水面ステージまで階段が続いています。舞台奥にはビジョン(プロジェクション)もあり、場面場面でいろんな映像が映し出されてました。 たまにライブ映像も写りましたが、そういうときは会場が明るめなのであまり見えず。正面舞台の対面、南側客席のすぐ前に幅の狭いステージもあり。


・開演時間になると、突然正面ステージに山本寛斎氏が出てきてご挨拶。すでに“暗黒総統”のいでたち。「出てきた時の拍手はもっと大きいよ?」と催促(笑)。


・「僕がデザインした京成スカイライナーがグッドデザイン賞を受賞しました!」とかって。自慢か?と思いましたが、 「スカイライナーにも日本古来の柄を使った。『七人の侍』の衣装デザインが出揃ったときに浮かんだ言葉は『バサラ(婆娑羅)』。織田信長なんて、クリスチャンでもないのに鎧の下にシャツを着て十字架をつけてた。そういう何でもアリでエネルギッシュな感覚が日本には古来からある」みたいなお話。逐一隣の通訳の人が英語に直してました。


・「それじゃあ顔塗ってくるんでこのへんで」とハケる寛斎氏。暗転。画面に地球の映像がでて、それにかぶせて今回の物語のナレーションが入ります。画面には英語で。
語りは柄本明の日本語で。ホームページにあった当初のストーリーよりも大分簡略化された感じですね。奪われた光をを奪還する作戦のなかで、 「七人の侍」が歌舞団となって、暗黒総統の前でいろんな出し物を披露する、という設定に。


・一通り説明が終わると、和太鼓軍団が客席通路のいろんなところにちらばって、一斉に演奏を始めます。会場全体がうわんうわんなる感じ。音がすごい。


・続いて光一さんが登場し、「いくぞーーーーー!!!!」と気合入れ。まずは景気づけということで、原色の袖無し半纏のような衣装を着、 手には花まといのようなものを持って、若衆軍団の担ぐ神輿の上にのって水の上をばっしゃばっしゃと動き回ります。白い服着て頑張ってた男の子たちは日体大の学生らしいですね。


・続いて暗黒帝国の描写。寛斎氏が正面ステージの真ん中の椅子にどーんと腰かけてます。その脇に出川の哲っちゃん。暗黒帝国のナンバー2らしい。 第一声からめっちゃ声枯れてる(笑)。ほぼ裏声。なんで!よりによって!こんな時に!声が枯れてるの!その不運さが面白すぎる。そして案の定カミカミでした。 でも客はそれについてはあんまり笑わず、なんとか緊張感保ってたなあ。エライと思いました。


・黒づくめの暗黒帝国の皆さんの演舞。いや動きは最低限でしたが。みんな女子だったので、「ヤーーーー!!!」っていう声がカワイイ。いいのか。


・「総統様!極上の女を用意いたしました!」(ベタやな…)ということで、ミシャールの踊り。 水の上で長い手に布を持って、ということで、ずっと手を上げてなきゃ状態だったけども、妖艶でした。普通のベリーダンスも見てみたい。


・この辺で「七人の侍」が登場。 正面のビジョンで一人一人紹介された後、左右の客席上から一人一人呼び出しをされ登場します。 客席通路を上から下に歩いて降りてきて、また中段の客席通路をぐるーっと回って、正面客席前の幅の狭いステージに並び、柄本明によって一人一人紹介されます。 …紹介多っ(笑)。これは歌舞伎の勢ぞろいみたいなノリなんでしょうね。 本人らは喋んなかったけど、「りいさっ!」「あきらっ!」とかマイク通して声がかかってた。それも歌舞伎っぽい。見てる時は「寛斎氏がかけ声かけてんだろうなあ」と何の疑いもなく思ってたんだけど、良く考えたら暗黒総統がそれやんのおかしいよな。一体どうなっていたのだろう。双眼鏡持っていかなかったのが悔やまれる。


・「われら歌舞団がさまざまな芸をお見せします」というようなことを柄本明が暗黒総統に説明。基本的にこういう体(てい)でやるので、七人は暗黒総統の方を向いており、お客はオシリ。斬新。


・「あれ?哲ちゃんじゃない?」「もしかして、竜ちゃん?」ということで、幼馴染だったらしい2人が突然コントを繰り広げます。 なぜか2人とも身体に爆竹をしかけられてて、それが爆発するってやつ。「おまえといるとこんな仕事ばっかり」みたいにもめだして、最後はキスして終わってた(鉄板コンビ芸)。突然のテレビバラエティノリがシュールでした。でもなんだかんだ言って、このショーが一番ハマってたのって竜ちゃんのような気がする。登場の時も、ダチョウさんの「ヤー!!!」をお客さんと一緒になって楽しそうにしてた。


・森山開次のダンス。彼は客席から登場したときから、お面をかぶったりして、楽しげな身振り手振りで周りをすごく乗せてましたね。 そして正面のステージに座った時の座高の低さに驚いた(笑)。「月光の舞」と題されたコーナー。会場が暗くなり、水面に大きな月が映し出され、その真ん中で踊ります。よくわかんないけど、すごかったっす。すごい美しかったっす。 コンテンポラリーダンスなんて見る機会無いもの。しかも森山開次なんて見れる機会ないもんね。途中で衣装を脱ぎ棄てた瞬間が特に感動的でした。水に衣装をばっしゃばっしゃ叩きつけたりして踊ってた。なんか衣装が高いとか聞いてたから余計、「やっちゃったー!」という爽快感がありました。月も白から赤へと変わっていって、激しさを増していきました。


・すっごい途中で気づいたんですけども、ラッパが……生演奏。バックトラックは卓で出してるんですけども、ラッパは生。近藤等則が正面の客席の真ん中で吹いてるんです。 っていうか正面の客席の中断あたりにPAとか照明卓とか全部あったんですけどね。ダンスと生演奏が呼応している。なんてアーティスティックで贅沢な空間なのかと思いましたね。直前までバラエティだったのに。近藤さんの演奏は息をわざと「ブオー」ともらす感じで、狂気とか荒々しさもありつつ、繊細でした。


・「次は、里依紗と光一による空中の舞(七夕伝説)」だったかな。光一さんが水面に登場します。天井からは白く長いリボンが二垂れ。 それを片方はぐるっと手に巻いて、もう片方はつかんだだけで飛び上ります。しかし下は水。 リボンが濡れちゃって、つかんだ方の布がうまく開かない間に飛び立ってしまった感じで、ヒヤッとしました。1回降りて、もう一度布を握り直し、両腕の力で上体を支持したフライングもご披露。どっちもSHOCKでやってる飛び方ですけども、高さも移動距離もすごいあったなー。白い布がヒラヒラヒラーっとなってキレイでした。


・この間、里依紗は宙吊りになったフープに乗って、正面客席上方から徐々に会場中央まで移動してきます。里依紗はあの着物は登場の時だけで、 あとはミニのコルセットドレスみたいなのを着てましたね。さすがにあれで水には入れなかったか。光一さんのフライングが終わると、里依紗がこのフープの中で逆さになったりして、曲芸を披露。勿論命綱のようなものはしてたと思うんですけども…女優さんなのに…こんなことまでして…エライよ里依紗… さすがゼブラクィーンだよ…。しかし光一さんのフライングの後では、「すごいよ(女優にしては)」って感じの拍手になっちゃったかなあ。


・この間、光一さんは水面で里依紗のフライングを見ているのですが、フープが水面近くまで降りてきた時に、いきなりフープをつかんで、ひょいっと乗ってしまいました。勿論命綱無し。出し抜けのスタントにえらいビックリしましたよ。そのままぐんぐん高度を上げ、2人で寄り添ってフープに乗りながら、元来た正面客席の方にハケていきました。なかなかロマンチックな光景。「キレイだ!」とマイク通して寛斎さんの声がかかってた。


・続いては「捕り物」をお見せします、ということで、逃げるのが柄本明と森山開次を除く5人、追うのは大量の同心(若衆軍団)。 客席通路もめいっぱい使って、あっち行ったりこっち行ったり。同心をなぎ倒したり(魔裟斗)、無視されたり(竜ちゃん)、長刀で追っ払ったり(里依紗)。意外に池谷が目立ってなかった。魔裟斗のなぎ倒しはなんかインチキ気功師みたいな感じになっちゃってたなー。ガチでぶん投げたりできる人なのにね。受け手を用意できるかどうかって問題なんだろうけど。


・この時、光一さんは客席通路から登場するのですが、そのスタンバイしてるあたりがちょうどワタシが座ってたところでした。目前に光一さん。今年2度目の近距離(SHOCK3列目以来)。いやー、横顔が美しかった。鼻たっけー。あとなんか、軽やかでした。当たり前か。それから佇まいがものすごい落ち着き払ってましたね。 エキストラの人たちも含め、他の出演者が割とテンパってるなかで、光一さんのあの落ち着きはほんとに素晴らしいと思いました。さすが座長。踏んできた場数が違う。そっから飛び出して客席通路を走り回るのですが、その間も「オイ里依紗!」とかって芝居を忘れないのもエライと思った。 あそこらへんのセリフは全部アドリブ。他の出演者がほっとんど口きかない(余裕がない)なか、孤軍奮闘という感じ。


・光一さんは途中で男子の客の膝に座ったりしてましたね。座られた男子、思いっきりガッツポーズ(笑)。 しかし周りでは光一さんを触りたい客がうずうず妙な動きになってきてたなー。「触んなオーラ」でなんとか雪崩みたいになるのは回避してましたが。次の日とか大丈夫だったんだろうか。


・「最後に、総統様のために御祈祷を…」ということで、柄本明が水面中央に、その四方を大きな和太鼓の叩き手が囲んで、太鼓と般若心経のコラボレーション。不思議なバイブレーションでした。太鼓もさることながら、柄本明の声がビンビンに通る。一緒に行ったお友達は「お経が一番良かった」と言ってました(笑)。 水面中央に曼荼羅のような円文様が浮かび上がり、正面のビジョンには般若心経の文字でできた網のような、結界のようなものが映し出され、これが祈祷ではなく、呪術であることが明らかとなります。


・それに気付いた暗黒総統が「図ったな!」(ベタやな…)と叫び、七人の侍と暗黒帝国の戦闘へ。エキストラの人たちも出てきてわーっとなります。 正面ステージ中央にはずっと布がかかかってたんですけども、それが可動式のドラゴン型戦車になってて、水の砲弾みたいなのを出しながら前進してきます。対する七人の侍のほうは、孔雀のような、鳳凰のような山車が出てきてました。「捕り物」とか聞いた時も「ん?」と思ったけど、この龍の山車を見たとき確信したね。寛斎氏とジャニーさんの発想には非常に似たところがあると。そして次回の主演はきっとタッキーに違いないと(笑えねえよ)。


・七人の侍は、里依紗と柄本明を除いてとりあえず全員刀を持って宙吊りに。光一さん以外は基本的に宙吊りはダブルワイヤーです。 しかし大人数では動きようもないし、刀振り回しちゃ危ないし、っていうか肝心の敵が空中にはいないわけで、とりあえず皆さんふわーっと空中にいる、といった感じ。森山開次がなんか逆さまになって動いたりしてたけど、 下の衣装がふんどしみたいな短パンいっちょだったのでちょっとエロス!とか思った。いや一人でやってるときはそうは思わないんですけど。


・そんで光一さんを除く他の方たちは順次下に降りてきて、地上で戦う形に。でも「侍」と言っているわりには皆さん刀の振り回し方が全然サマになってなかったなあ。降り際に池谷がワイヤーでグルグル空中回転をしてた。


・水のガトリング砲とかばしゃばしゃ出たりして、とにかく水浸し。正面の客席はあまり濡れなかったと思うんですが、左右の客席はまとまった水量が何回も降ってきたので、もう足元までびしゃびしゃだったと思います。私は正面と左右のカドあたりの、さらに中段ぐらいだったので、ほっとんど濡れませんでした。 2、3回霧吹きでシュッとされたぐらいのしっとり感でしたね。


・この間、光一さんだけはずっと宙吊りのまま。「光一を狙え!」とかって敵に言われていた。しかし、いかんせんこのフライングには動きがないので、 光一さんは上空でブラーーーーンとしたまま、時間だけが過ぎていきます。きっと寛斎氏は「SHOCK」を見たことが無いに違いない。 そして竜ちゃんの芸能生活25年も知らないに違いない(笑)。


・最後は水面ステージで光一さんと暗黒総統(寛斎氏)の一騎打ち。特に立ち回りはなく、暗黒総統が「グサッ」と刺されて、大量の白い紙吹雪が落ちてきて、ジ・エンド。寛斎氏が、大部屋俳優のようにずいぶん倒れるまで粘ってたのがオモロかった。ちょっと「グサッ」の音もズレたように見えたけど…会場広いから時間差ついちゃったのかもしれない。


・最後に再び「夢が大事!」みたいなナレーションが入って、カーテンコールへ。エキストラの皆さんもワイワイ出てきます。 開口一番、寛斎氏が「いやー、出演はいい!」って言ってたんだけど(出演するのは初めてらしい)、「いやー、主演はいい!」っていう風に一瞬聞こえちゃって、 「え?!寛斎氏が主演だったの?!」とか思ってしまった(笑)。まあ、あの特等席でずーっとこのショーを見てたんだから、間違いなく一番楽しかったに違いない。


・最後にもう一度、寛斎氏によって出演者が一人一人紹介されます。しかし、デッカいカンペを持ったスタッフが寛斎氏の横につきっきり。……不安。と思ったら、 やっぱり魔裟斗の名前が出てこなかったみたい。水上ではズルズル衣装を着てることもあり、寛斎氏には基本、両脇を支えるお付きの人が2人。 老いを感じずにはいられなかったですね。彼に何か言える人っていないんだろうな…。


・じゃあ、さいなら!って感じにスパッと終わらず、いつまでもワイワイやってるのは、ファッションショーの最後のあのへんの感じをひきずってるからでしょうか。
周りに手を振ってハケかけてた光一さんに、寛斎氏が突然「何か喋って」とふり、光一さんがご挨拶。 「このショーで自分が何ができるかいろいろ考えて、シルクを使ったフライングをさせてもらった。寛斎さんがすごいパワフルで、こっちがパワーを吸い取られそうでした」とかって。ジョークですけど光一さんにとってはギリギリの毒だったんではないかと(笑)。


・キャストがはけると観客がゾロゾロと席を立つわけですが、その間も近藤さんはずっとエンディングを生演奏。なんか申し訳なかった。


ライブ感があり、かつスペクタクルなものを目指していることはハッキリとわかりましたが、この2つってなかなか相容れないんだなー、というのが率直な印象ですね。スペクタクルなものを見せたければ、入念に段取りを仕込まなければならない。ライブ感を大事にしたいなら、それなりの規模でないと伝わらない。 結局段取りの悪さで間延びしてる部分が多くて、ライブ感が損なわれてる部分が多かったのが残念です。そのどっちも取りたい、何も諦めたくない!って感じなんでしょうね。「KANSAI SUPER SHOW」ってのは。そういう寛斎氏のいい意味での貪欲さはものすごく伝わりました。普通だったら絶対見れないであろうものもいろいろ見れた。それは間違いない。光一さんのプロフェッショナルさも深く印象に残りました。


以 上



KANSAI SUPER SHOW 「七人の侍」


at 有明コロシアム, 2010.11.20(soiree)