§3.ターゲット論
・商品を開発をするにしろ、販売をするにしろ、誰の為に開発するのか、買ってもらうのかと言う事が、大きなポイントである。
(オーダーメイドで注文主から直接希望を聞いてつくり、販売する場合は問題はない。)
・流通業者を通して、不特定多数の顧客を相手に物を作り、物を売ろうとする場合、ことは容易に運ぶものではない。
→同じ品物でも気に入る人とそうでない人が出て来る。
(ex)非常に流行に敏感な先行層の人に数年前から出回ってるバックや服を与えても喜ばない。
(ex)流行にあまり関心のない保守的な人に、最新のモードのタウンウェアやアクセを提供しても喜ばない。
※十人十色で各人好みが違うものである。
※全ての人を満足させる商品などあるはずがない。
・大半の人が購入する日常品や生活基幹商品もある。→多様化の現状→選択できる物なら選び買いしたいという人が増加して来た。
(ex)米:昔→米殻店に行っても殆ど一種類しか売っていなかった。
現在→ブランド米、「ささにしき」「こしひかり」など、10種類以上の選択肢がある。
・1993年〜カリフォルニア米、タイ米、等外米まで加わり、値段もそれぞれに違う。
・それぞれの生活環境、年齢、年代によって好みが異なる。
※物を作る側、物を売る側からすれば、不特定の顧客一人、一人の好みに合わせて生産し、販売できるはずがない。
⇒そこで、商品開発に対して、「絞り込み」「重点化」が必要になってくる。
・どこかの部分を取捨選択しない事には、具体的な商品開発や品揃えなどが出来ない。
・不特定多数の一般顧客の為の開発となると、特に絞り込みが難しくなる。
・『少し人の好みや生活の価値観というものを、大別してグル−プ化する。』
⇒ライフスタイルによる分類。
→これで、顧客対象を絞り込み、重点ターゲットを明確にして、開発して行こうとする。
◆ライフスタイル別の6つのクラスター
1.生活創造自己表現派
2.ニュースタイル順応派
(世の中の動きを先取りする先行層。⇒流行に対して敏感である。)
3.生活充実願望通俗派
4.保守的積極派
(その時々に先行層の影響と保守行動を折衷して採り入れる層。)
(流行を適度に採り入れる。)
5.保守的堅実派
6.消極あきらめ派
(世の中の動きには無関心な保守層⇒流行に無頓着である。)
※「クラスター特性』としての分析。(クラスター特性分析表参照)
・ライフスタイル、生活価値観等から見ての共通項により、グルーピングしたもの。
・一つ、一つのクラスター特性をライフステージでの生活課題の処理の仕方を見つめる。
・人生の節々で出会う課題(⇒出産、子育て、住宅購入、子供の独立)、普通の人なら一度は通過しなければならない生涯の課題を解決しなければならない時、その人なら「どんな道を選ぶのだろうか」と、分析して行く。
これによって、ある程度、その人の行動が見えて来る。
問題解決の方法や選択の好み、その他諸々のライフスタイルが見えて来る。
<<・ライフスタイル・クラスターの人々>>
1.独身時代にどんな生活を志向するのか。
2.家庭を形成する時期にはどんな生活を準備するのか。
3.子供が成長し、夫婦ともに家庭で社会で充実している時期には、どんな生活願望があるのか。
4.子供が自立して家庭が分解期に入った時には、どんな生活状況が起こるのか。
5.夫婦2人だけになると、生活はどうなるのか。
<<・5つのライフステージ>>
1.独身ヤング(15〜24歳) 2.家族形成期(25〜34歳)
3.家族展開期(35〜44歳) 4.家族分解期(45〜54歳)
5.巣立ち期(55歳〜)
・それぞれのステージにおいて全く生活のシーンが変わる。その時期を各々ライフステージと、呼ぶ。
<<・ライフスタイル・クラスターの特性>>
<<ライフスタイル・クラスター特性の分析>>
◆生活創造自己表現派◆
・平均年齢:32.7歳
・世帯預金:平均よりもやや多い。・世帯年収:1番目に多い。
・個人年収:(男)平均的 (女)最も多い
・職業:学生、ホライトカラー、専業主婦
・学歴:高学歴。
・世の中の価値観、ライフスタイルのリーダーである。
・自分らしい個性で、時代の先端を行っている。
・高度情報人間である。
・美意識が極めて高い。(おしゃれからアート、芸術まで)
・街、店、商品に自分のこだわりを持った購買行動をする。
・自分の価値観をしっかり持っている。自分で創造する。
・ファッション、リビング、フーズともに感心度が極めて高い。
・生活意識、価値観のバランスがとれている。
・住生活に対する感心が極めて高い。
・快適な生活空間を目指して、物をあまり置かず、広く低く暮らしている。
・内装やインテリアも個性の表現と考えていて、高付加価値財、感性財をさりげなく取り入れる。
・住生活にも創意工夫をする。
◆ニュースタイル順応派◆
・平均年齢:30.3歳
・世帯預金:2番目に少ない。 ・世帯年収:平均よりやや少ない。
・個人年収:(男)最も少ない。 (女)平均よりやや少ない。
・職業:学生、ホワイトカラー、ブルーカラー。若いOL。
・学歴:平均的学歴。
・ヤングを代表するクラスターである。
(年齢が上がると、ニュースタイルの割り合いが減少する。)
・流行性、話題性に「軽く」のり、極めてミーハー的である。
・将来の事や物事の本質を考えない、楽天的感性人間である。
・社会、道徳、慣習が苦手で、好き嫌いで行動する。
・今の生活への満足度は低く、物財、金銭に恵まれたリッチな暮らしをしたいと思っている。
・住生活に対する感心はやや低く、最も金銭をかけていない。
・マンション好きで、プライベートな部屋を充実させたいと思っている。
・使い捨て主義で、先の事を考えての計画的購入が苦手である。
・デザインを重視し、ビジュアルによる差別化志向が強い。
◆生活充実願望通俗派◆
・平均年齢:40.0歳
・世帯預金:平均よりやや少ない。・世帯年収:平均よりやや少ない。
・個人年収:(男)平均よりやや少ない。 (女)平均的。
・職業:自営、商工サービス業。
・学歴:平均的学歴
・流行追及クラスターと本質追及クラスターの両方からの影響を受ける。
・常識的であるが、見栄っぱりでENJOY志向も強い。
・自己の向上、また日常生活の向上に積極的に取り組もうとしている。
・購買に際して、ブランド志向、舶来品志向、本物志向が強く、社会的ステータスを重視する。
・ファッション、リビング、フーズともに関心度が高い。
・住生活に対する関心は高い。
・インテリアは、社会的ステータスと自身のENJOYの為の「物財」と考えていて、住空間のトータルな調和については関心が薄い。
・華やかで立派なデザインを好み、高級品志向、ブランド志向、舶来品志向、本物志向が強い。 
◆保守的積極派◆
・平均年齢:14.5歳
・世帯預金:最も多い。 ・世帯年収:2番目に多い。
・個人年収:(男)最も多い。 (女)平均よりやや多い。
・職業:自営、商工サービス業、会社経営、役員、管理職、ホワイトカラー専業主婦。
・学歴:高学歴
・良識的であり、本物志向、本質追及派で、流行に簡単に飛びついたりしない点で、ニュースタイル順応と大きく異なる。
・肩の力を抜いて、マイペースの生活を送りたいと思っている。
・社会との係わりや、家族を重視した上で、自己向上に極めて積極的。
・購買に際して、シンプルで良質のものを好み、計画的に買う。
・社会の中での自分のポジショニングを確立しようとする。
・良い奥様、旦那様、育ちの良いお嬢様タイプを目指そうとしている。
・住生活にはほぼ満足していて、関心はやや高い。
・家は、人生の目的と考え、庭があって住みやすく寛げる郊外の家が良いと思っている。
・機能的でシンプルであり、更に良質でゆったりとしたものを好む。
◆保守的堅実派◆
・平均年齢:45.0歳
・世帯預金:2番目に多い。・世帯年収:平均的。
・個人年収:(男)2番目に多い。 (女)2番目に少ない。
・職業:農林漁業、無職、専業主婦
・学歴:低学年
・伝統的で堅実な価値観の持ち主で、流行には関心がない。
・人並みの意識が強く、常識を重視する。
・自己向上意欲が低く、将来や家族の事を考えて節約する。
・義理堅い、平凡、心配性、まじめタイプ。
・購買に際しては、機能性、性能を重視して選び、名の知れたメーカーのものを安心して買い、壊れる迄使う。
・ファッション、リビング、フーズともに関心が低い。
・今の住生活に不満がなく、住生活への関心も低い。
・分相応を考えて購買する。
・伝統的で日本的な物が安心で、モダンな物には興味が低い。
※「消費諦め派」については、メーカーにとっても、販売側にとっても、対象顧客にならない。
【ターゲット論のまとめ。】
・ニュースタイル順応派の人々が家族形成期を迎える時、「どんな世帯を持ち」、何を優先順序として、生活道具を揃えて行くのか、また家族形成に際して起きて来る色々な課題に「どんな判断をし」「どんな解決方法」を取るかと、言う事であるのではないだろうか。
・それをいかに分析して、想定してその各々のオケージョン(情況)に「何が必要か」「どういった物が必要なのか」を拾い出して、市場にないものなら開発対象として検討しなけらばならない。
⇒販売店の場合---「ターゲットに近いもの」を仕入れて品揃えをする。
・クラスターとステージの掛け合わせによるニーズの分析は、一人十色というか、時々で人格が変わり、千変万化する昨今の世相の中で、この手法で開発手順を進めてみると、訴求性の高い商品開発に結びつかない結果になる時もあるかもしれない。