§3.視覚伝達におけるシンボルの機能

・人に何かを伝える時は、伝えようと思う事柄を、意味作用のある言語などの記号を用いて伝える。

・チャーチル・モリス(Ch.W.Morris)は、記号等を用いて伝える。
記号(sign)シグナル(signal)シンボル(symbol)に分類している。

●シンボル「象徴」を意味する。その対象(事物)を示すのではなく、対象についての表象を表すものと、考えられる。
(ex)
・バラの花→→→「バラの花」という語は、現実のバラの花を表すのではなく、現実のバラの花から離れ、バラの花についての表象(概念)を示すものである。
・目の前にバラの花がなくても、バラの花を心の中に思い描く事ができる。
・この場合、「バラの花」は、言語的シンボルである。

⇒これに対して…。
・シグナルは、表象を呼び起こさず、また表象を媒介とせずに、直接反応をひき起す信号(シグナル)として、シンボルと区別される。

(ex)
・ベルを鳴らして列車の発車合図とする場合、ベルは直接間隔に動くシグナル(信号)である。
・シグナルは、直接的意味表示行為であるという点で、ランガー(S.K.Langer)は、これをサインと呼んでいる。

●ランガー(S.K.Langer)・「シンボルは、それらの対象の代理ではなく、対象についての表象(conception)を選ぶものである。

・ある事物、または状況を表象する(心に描く、conceive)ことと、”それ に対して”はっきりと”反応する”こと、あるいは、それの現存に気付いていることとは、同一ではない。事物について話す場合、われわれは、事物についての表象を持つけれども、事物はそれ自体を持ってはいない。 そして”意味する”ものは、表象であって事物ではないのである。 表象に対する行為は、語が通例引き起こす ところのものであり、これが 思考の典型的過程である。」

・「語」そのものは、外部的に存在する事物や事象に直接連合しているのではなく、 表象と連合している一個のシンボル。
サインとシンボルの違いはこの連合の相違である。 
                              

●サインとシンボル
・サインとシンボルとの根本的相違→連合の相違。
・意味機能について、第三者である主観が、それらを利用するその用い方の相違である。
「シンボルは主観を導いて、それの対象を表象(心に描く)させる」
 のに反して、
「サインは主観を導いて、それの対象を報告する」
 ものと定義している。

※サインは行動の基礎。あるいは、行動を命ずる手段であるのに対して、シンボルは思考の道具である。

●言語
・言語は、声帯から出しうるそれ自体意味を持たない音素(音の単位)があり、その組み合わせ、並べ方の変化によるパターンの重複性から単位を作り、音の形で記号になる。
・意味の単位、語彙が構成される。音は、視覚(文字)に置き換えられ、抽象性記録性普遍性を増し、膨大な意味を獲得してきたのである。

(ex)『水』
w-a-t-e-r…五つの音素の反応でできた単語は、言語の記号的性質を得て、示すものと示されるものの関係が明らかになる。
・「水」は、全く、独立した意味を持ち、目の前に水がなくても、冷たさや感触を思 い描く事ができるといった働きを持ち、ランガーが指摘する対象の概念の担い手として、シンボルの意味を獲得する事になる。

◆言語的シンボル⇒⇒⇒単語を結合する構文法があり、言語の推論的性格を強調している。
◆視覚的シンボル⇒⇒⇒絵画や、写真、映像等の視覚的記号を指し、直感的な形によって感情や情緒のような人間の内面的感情世界を表現しようとする。

・見る事は、光の物理的性質や心理的傾向など見る人の興味や心構え、態度、信条などによって左右される。

・個人的な連想や感覚の差、図形や色彩、場所と時間によって反応の仕方も異なる。

・人間の感覚が多様性を持つにも関わらず、人間の持つ視覚文化のパターンや共通概念の存在がお互いに理解を促して言語の壁を乗り越えて国際性を高める基盤となっている。