§3.21世紀という時代
1.情報化の進展は何をもたらしたか
●企業という組織を考えてみる…これまで多くは階層別の組織。
(会長・社長から始まって、部長・課長・係長とあり、職位が上がるに従って、一定の権限が与えられていた。)
・そうした権限の多くは、意思決定するに相当する情報が与えられる、もしくは情報が得られやすい。
・与えられた職務とその責任に対して正しい決定を下すには、それに相当する情報が必要。
・勿論、当人の努力と判断力もるが⇒その職位にあることで得られる情報があり、意思決定には有用。
→→→ところが今日の情報化社会にあっては、社長から担当者まで情報は机上の端末機を叩けばたちどころに画面から得られる状況にある。
→→→あるいはインターネットやパソコン通信で一般的な情報や参考資料も見られる。
・ 見ようとする意志があるかないか、必要な情報が何なのかを知っているか、仕事の達成に必要な情報がなにであり、どこにあるかを知ることが意思決定の正しさを決めてしまう。
●情報化の進展…肉体的労働ばかりでなく、事務労働さえも多くはシステムに置き換えられつつある。
・工場は無人化し、事務所もパソコンが通信回線で結ばれた様相を呈している。
・単純作業やルーチンワークはシステムが代行。
・情報化はようやく人間らしい仕事を可能としてくる。
※そこでは人間としての判断力だけが求められている。
・必然的に企業やその組織について、これまでとは異なった方式が考えられなくてはならない。⇒その基本となる考え方が参加なのである。
2.仕事とは何か
●仕事をするとは企業目的のためにある一つの選択をする、意思決定をすることであり、それが企業目的に適合しているかが問われること。
● 一人一人の従業員が意思決定し、選択し、行動するに当たって、正しい行動をとれるかどうかは、会社の企業としての目的は何かを知っているかどうかに係わって来る。これが情報化社会の仕組み。
3.企業目的とは何か
● 人々の生活をより快適に過ごすための様々な道具を、商品またはサービスの形で提供する組織。
●消費者の幸福を実現するツールの提供。その中で『我が社はこういう商品・サービスを提供します。』
という具体的な何かがあるということす。⇒そのための機能的な組織に別れる、製造、販売、販売促進、財務その他となる。
・具体的な目的はさらに細分化されるが、究極的には消費者に奉仕するものだという大きな目的は変わりようがない。
4.参加とは何か
●人は生まれてきたことは所与であり、自我に目覚める頃、なぜ生きるかに悩むが、生きることを選択する以外にないことを知ることとなる。
・自分自身を生きること。→労働力だけを切り売りすることは、どこかで自分の生き方を求めなければならない。
・しかし企業目的も人間全体の目的と同一のものであれば、そこに参加することで自己実現をはかれるのではないだろうか。
・企業目的が人々の幸福に貢献するということになれば、積極的に経営に参加することで自己の目的にも合致するのではないだろうか。
・使用者と被使用者の区別はどこまで必要となるか、同一の目的に向かって努力している組織参加者は役割の相違しかない。
●情報化の進展は階層を必要とせず、個人の参加を高めていくもの。
5.政治も直接民主主義が高まる
●各地方自治体で、住民投票が目立ってきた。
→→これも情報の開示が進めば当然のことと思う。
○重要な情報が一部の権力者に集中していたからこそ、行政者への権力集中があり、代議制度が有効でもあったのはないか。
○今日の情報の公開と入手の方法が容易になれば、代議制度の必要性は低下する一方。→→→ 政治への参加がより密接となり、日常的な仕組みとなることが今後は期待されるようだ。
○意思決定は全住民の参加で行い、行政はその効率的な執行だけで良いのではないだろうか。
6.労働組合も変革が必要
●労働組合も今日の大変革の時代に、その方向を見失っているように思える。
・情報化の進展は、かつての肉体的・苦役的労働は機械に置き換えられ、人間はより人間的な仕事に、つまり創造的な仕事に移っている。
・そこでは人間を回復している。長い間労働運動は少しでも人間的な労働環境と条件の拡大に努力をし続けてきた。
・疎外からの回復が期待される。 →→→それを参加にまで高める運動が必要なのでる。
● 階層別組織からネットワーク型組織、自立した個人によるそうした組織の確立、あとは資本と企業人との融合をどのように図っていくか、最近のベ ンチャービジネスは、今後の組織と資本のあり方を考えさせる新しい仕組みが見え始めている。
※来るべき新たな社会へ向けて、大胆な理念と方向を示さなければならない時期であるといる。
7.企業組織も大胆な変革が必要
● 企業の従業員が企業の理念と目的を正しく明確に把握していれば、そして必要な情報が入手できれば、意思決定はできるだけ現場に近いところで行ったほうが迅速で正しい意思決定ができるもの。
※できるだけ階層の少ない、フラットな組織がこれからは必要であり、常態化する。
→その 代り企業理念の明確化と全従業員への浸透が極めて重要な要素となる。
→そしてまた企業自身もスリム化が必要。
→専門的に特化した企業それぞれがネットワークとして事業を推進する時代に変化す
るのではないだろうか。
○情報ネットワークは企業の国籍や立地位置を超えてネットワークが成立。
○規模の大小よりもその企業のもつ専門性が独自性が注目される。
§4.マーケティング新時代は 消費者参加
1.原点は消費者志向
●マーケティングなる概念がアメリカで生まれてから1世紀がたつ、しかしその出発点は消費者志向であることは変わりがない。
●日本でもマーケティングの考え方が導入されて半世紀が経過するが、その時々で、 マーケティング・リサーチが主題となったり、セグメンテーションが、あるいは販売促進が論議を呼んだりと、なかなか捉えどころがない広範な概念と見られてきたりもした。
●やがて4Pつまり、製造、価格、販促、流通に集約されてきたが、それは多くは製造メーカーの
⇒しかし今、情報システムの発達はマーケティングにも新たな時代を招来しようとしている。
2.製販同盟
●景気は回復過程にあるとは言いながら、実態は低迷ないしは不況感をぬぐえない状況にある。
・企業は将来を模索をしている。
→→→その中で小売業と卸・メーカーを情報システムで結び、小売業の情報に基づいて、生産を決め、物流を決めていくシステムが浮上している。→→→より一層消費者の声を取入れ、生産に結びつけることが可能になってきた。
●ECRやQRなどの普及が見込み生産の無駄を排除し、全地球的資源節約をも視野に入れた。
※これも出発点は対消費者においてのコスト低減にあった。
・徹底した消費者志向の推進といえる。
3.もの作りへの消費者参加
●今や主婦や女子高生などのグループインタヴュー、試作品提供などが盛りだ。
・小売業段階での数量的データの収集・加工だけでなく、定性的データの収集もようやく盛んになった。
・デパートの顧客情報も、店内での買物行動、次の買物行動からの予測。
・顧客の行動を読み取る方向への転化が見られる。
◎ここから更に一歩を踏み出す試みが必要となる。
(ex)花王やソニーなどの顧客のクレームその他の情報がどこの部署でも見られ、それを製造・開発に反映されるのは、直接的な消費者参加への萌芽といえなくもない。
●生産でも販売でも現場は情報の宝の山である。
・販売の現場、売り場での顧客とのやり取りの中で、潜在的な消費者の欲求をいかに引き出すか、販売における重要な要素となる。
・それを組織的に実施して、製品の開発・改良につなげていけるか。
・より一層の消費者の参加を求められるかが企業の招来を決めるものともなり兼ねない。
・今後は消費者参加の方法を競うこととなるであろう。
§5.マルチメディア通販は成長するのか?
1.マルチメディアの特徴
●インターネット、パソコン通信などの電子的メディアの特徴のまとめ。
◆ 双方向性、つまり一方通行のメディアではなく、顧客と対話ができるメディアである。
◆時間と空間を
超える、これは時間と場所に制約されないで、消費者は、何時でも、どこからでもアクセスでる。
◆即時性、電話回線とパソコンがあれば、即時に見られる。
◆コストが安い、紙カタログの膨大な印刷・製本・配布費を考慮すれば、写真撮影とコピーさえあれば、直ちにアップロード出来る。
◆データは最初から電子処理、郵便による注文は一度入力しなければデータとして使えないが、電子メディアのケースは、直ちに電子処理が可能。
◆ 語学上の制約はあるが、英語を使用すれば国際性がある。
◆24時間営業できます。
●現在での問題はインターネットでは決済に不安があること。
・しかしいずれ解消する????????
⇒現在でもパソコン通信との併用その他の方法で解決している事例も多々ある。
2.資源節約と時間節約
●膨大な年間カタログの制作費と紙資源の使用と電子メディアでのペーパーレスを考えれば資源節約が理解される。
● 一方で利用者側でも、わざわざ時間をかけて店舗が開いてる時間に合わて買物に出かける必要もない。
●深夜でも昼食の休み時間でもヴァーチャル店舗は開店している。
※日本でも21世紀は人口は減少を始め、労働力人口は少なくなることは明白な事実。
※時間節約的買物を好む人々が増加することも見えて来る。
3.CD-ROMとパソコン通信の併用
●紙のカタログからCD-ROMへの切替えも始まっている。
商品の検索はCD-ROMで行い、目当ての商品が見つかれば、パソコン通信に切り替えて、注文するという方法。
・これだと回線をつなぎっぱなしで検索するという顧客にとつての費用負担が軽減される。
・回線費用が大幅に低減され、容量も増大して動画も送れるようになれば、本格的普及となるが、それまではこうした併用もかなり進むものと考えられる。
4.CATVとデジタルテレビ
●今深夜テレビは通販が盛りだくさんである。
・これはCATVや多チャンネルのデジタルテレビなどの普及への地ならしといった趣。
・将来の電子映像による通販をにらんでのノウハウ開発であろうと推測される。
・一挙にインターネットというよりもまだ日本では回線料金の高さ、家庭のパソコン普及率の低さなどから直ちにすべての商品がインターネットという訳ではない。
・しかし着々とその方向へ向かって周辺の準備がなされてきていることは事実である。
5.2010年には8兆円から10兆円か
● 新旧メディアを含めて2010年頃には10兆円前後の市場規模に達するだろうというのが大雑把な予想。
・将来の人口予測からと現在の通販市場の2兆円を基礎としたもの。
・この市場の成長は間違いのないもの。
・既存の有店舗販売にもその自店ではかなりの影響が現れるものと予想している。
6.ここで消費者参加
●電子的メディアの通販は→双方向性があるから、消費者の参加は他のメディアより一層可能性が増す。
●注文時に合わせて、フォーマットの工夫により、消費者の意見を収集することは容易。
●すでにパソコン通信の例でも、個人的な相談やリスと以外の買物の例がある。
●この双方性こそが、新しい消費者参加のマーケティングを可能とするもの。
7.マルチメディアは人間を変える
(1).書斎がオフィスに変わる、人間関係も変わる
・ 企画・調査・開発その他の一般事務作業は、都心部の高層ビルに集中させる必要性は 全くなくなる。
→→→国内の文字だけの通信であれば、パソコン通信で十分である。
→→→画像が入ったり、海外との連絡等があれば、インターネットを使うなど、通信システムを使用すれば、家庭の書斎で十分に仕事はできる。
→→→自分の会社のデータは言うに及ばず、社外の各種データベースからも引用・照会などもできる。
→→→完成した仕事も送信して完了だ。同僚との事前打ち合わせ、上司への連絡も通信で可能だ。
・仕事に当たっての会社の理念と今回の仕事の意義、目的など、十分に上司とのメールのやりとりで一致した考え方で進めることができる。
・途中の状態も通信で見てもらえば、修正も追加も問題なく可能だ。
・スケジュールさえ守られれば全く問題なく業務は進行する。
●こうした仕事の進行は、否応なく人間関係も変えて行く。
・上司と部下、同僚との昔ながらの日本的人間関係は次第に失われて行くのである。評価はまさに仕事でだけ評価される。縄暖簾での一杯やカラオケによるコミュニケーションは死語るだろう?
・ 一方で、メールのやりとりによる意思疎通の確かさ、目的の同一化の意識は、新しいコミュニケーションを作る。⇒むしろ同志的結合と言えるものとなる。
⇒そのことは、もし意見の相違が解けず、対立が激しくなれば、退社して新しいグループを見つけると言う行動を妨げないものともなる。
※つまり独立した個人がそこにあることとなる。
・もはや上司・部下と言う関係ではなく、ネットワーク構成者としての個人が存在するのである。
●通信回線の大量・高速・低廉化が進めば、オフィスの家庭化、いわゆるSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)は問題なく進行する。
●会社の中の個人の独立性の強化と共に、SOHOによる個人事業主も増加する。
●この急速なマルチメデアの進展は、人間の労働を頭脳労働に集中させ、肉体的労働から解放する。
・創造的労働への凝縮が始まる。
・人間がやっと人間らしい仕事にのみ、打ち込める時代がやってくる。
・それは、人 間の具体的暮らしから始まって行動、思想にいたるまで変革することとなるに違いない。
(2).通勤地獄の解消と住みやすい都市へ
●都心の事務室が大幅に縮少すれば、通勤する人々が減る。
・朝夕の通勤時の混雑は次第に解消へ向かうであろう。
・これは省エネルギーへも通ずることとなる。
・道路や鉄道への膨大な投資も必要性が薄まる。
・都心の地価、家屋の賃貸料も低価格へ向かう。
・現在都心部からは全く住居部分が失われ、昼間人口と夜間人口の落差が激しい。
・地価が下落すれば、再び居住者が戻ってくる可能性も高まる。
・再開発も容易性が増し、オフィスと住居と商業地との適度な融合が帰ってくる。
・東京23区内は一部を除いてまだまだ低層建物が多い。再開発により、中層ないしは 多層階の建物とすることで、店舗・事務所・住居を包含する建築物が可能となり、居住人口を増やすことも可能となる。
・都市には、それなりに人が介在する仕事、その他サービス業などが必要である。
⇒それらの人々には職・住接近が実現できる。
・中・多層階化することで、空いた面積を公園・緑地・道路とすることで、快適な都市空間を形成することも可能となる。
・一方また、都市を離れた住宅は、通勤を前提としないから、思い切って田園地帯を選ぶこともできる。地価上昇もなく、明るい緑に囲まれた空間でのSOHOは快適な業 務をこなす。
(3).高齢者と女性の仕事も容易
● 家庭のオフィス化と、頭脳労働の増加、そして通勤地獄の解消は、高齢者にも仕事の機会が増加する。
・パソコンの操作には体力はいらない。知識と経験、そして創造性だ。
・思索力が衰えていなければ、それまでの知識・経験は役に立つ。
・問題解決の創造性があれば、立派に仕事はできる。
◎日本の高齢化は急速に進んでいる。
◎日本がより一層の豊かさを維持・向上していこうとすれば、飛躍的に生産性が向上しなければならない。
・合わせて労働力率の向上が必要なのだ。
・特に女性と高齢者の労働力率の向上が期待されなければならない。
・力は指先だけという仕事の状況は高齢者と女性には最適とさえ言える。
・マルチメディアは生産性を向上させ、高齢者と女性に仕事の機会の多くを与えるものとなる。
(4).ショッピングが変わり、流通革新が進行する
●インターネットのショッピング・サイトはこれまた急速に増加中。
・現在は決済に不安を残すが、暗号処理その他の技術でまもなく解消するであろう。
・人間の知恵には限界はない。解決しない問題はない。
・高齢者と女性が働く機会が増えれば、ますます昼間買物をする時間は少なくなる。24時間何時でも、どこからでも通信でき、買物ができるマルチメディア利用通 販が増加するのは当然の話である。
●価格と品名で購買決定可能な商品は殆どがマルチメディア通販で買うことになるだろう。
・高額商品、趣味的商品、販売員の助言と説明が必要な商品を除く商品は殆どが、通販で購入されるだろう。
・通信料金が高い現状では、通信状態での商品検索はコストが高い。
・検索はCD-ROMで行い選択後通信に切り替えという方法も、普及の途中経過では成立するだろう。伸び悩んでいるCATVもようやく進展の兆しが見える。これが通信衛星による全国配信が可能となれば、ショッピング市場 としても広がる。加えて双方 向性が実現すれば、ショッピング・メディアとして成立する。