■■■マーケットの若返りがもたらす、ユーティリティなファッション■■■

2000年春夏のファッション・トレンドは実用的な機能性だ。

ただ便利さを追求するだけではなく、被服本来の意味(包む、防護す
る、装飾する)を認識し新たな価値を見出すことがポイント
となる。
例えば、

(1) ヒーリング ……快適な着心地、リサイクルやリプロダクト等、人と地球に 優しいアプローチ。

(2) ハイテク技術……医療・自動車用資材など異分野との技術提携による体温調節、UVプロテクト、超軽量化技術。

(3) ライフ・コーディネート……インテリア・生活雑貨も含めたシンプルかつ無駄のないベーシックな組み立て。

(4) ストリート・ファッションの急伸……ヤング・ゾーンでは、ユニセックス、ハンドメイド、スポーツ・カジュアル等、停滞する
マーケットを自由な発想で牽引している。
 

マーケットの若返り化に対応するため、従来のパラダイムに捉われない、

「楽観的な遊び心」「使いまわしの利く機能性」のバラ
ンスがこれからの課題になる。

時代を彩どる爽やかなカラー・パレット

新世紀のスタートを告げる“色”の時代ヘ。 グレー一辺倒だった先シーズンまでとは違い、ロマンティック・ピンク、ベビー・ブ
ルー、レモン・イエロー等のソフトなヒーリングカラーは、'80年代バブル期に流行した原色以上にインパクトを人々ヘ与えるだろ
う。
また“光”を感じさせる黄色系に注目。淡いクリーム〜べージュ〜オークル〜ブライト・イエローまで、デリケートなバリエーショ
ンが展開。
'99/'00秋冬に引き続きスポーツ・カジュアル化が進み、ピュア&クリーンな白の使い方がより重要に。異素材によるホワイト・オ
ン・ホワイトのレイヤードが多くとりあげられる。
インク・ブルー、インディゴ等、紺系もニュー・ベーシック・カラーとして久々に登場。色味を加えニュアンスをもたせたグレーや
黒、カーキと共に商品構成のコアに。これらに今までアクセント的に使われていた明るいヴァイタル・カラーを異なるトーンで配色
することにより、盛夏用の主力商品へ色付けされていく。
第一印象の決め手が“色”になるといってもいい程、豊富なカラー・コーディネートが楽しめるシーズン。

感覚テーマ
Spiritual
(スピリチュアル)

型紙に近いシャープなデザイン、その完結された潔さが、着
る人の個性や素材自体の持ち味を際立たせてくれる。純白、
オフ・ホワイト、アイボリーと透明感のある白の着こなし
が、禅の精神にも通じるシンプルなストイシズムを表現。

Cyber Uniform
(サイバー・ユニホーム)

生活目的にあわせた機能性を備える近未来のユニフォーム・ル
ック。
適度なゆとり、実用性、更にファッション性とのバラン
スがポイント。ハイ・ブリッドな糸の活用ペーパー・クロス
と呼ばれる新素材を使いベーシック・アイテムを新鮮に。

Chic Hippy
(シック・ヒッピー)

既成のモラルの否定から始まったヒッピー・ムーブメントが
時代の変り目に再びクローズ・アップ。ポップ・カルチャー
背景にエスニック色強いジプシーサイケデリックなグ
ラム・ロック
の2つのファッション・スタイルを形成してい
く。

Fragile
(フラジール)

繊細な少女の面影に隠された力強い意志。女性の二面性を描い
ニュー・フェミニティ。小花プリント、クロス・ステッチ、
レース等のノスタルジックなアイテムにコーティングやボンデ
ィング加工
を施こして、今風にアレンジ。

 
■■■2000年春夏 特に注目すべき素材群■■■

後加工(1)
ウレタン、オイル、テフロン、シリコン等による各種コーティング加工や、ワッシャー、ボンディング等の後加工により、新しい質
感を表現した素材グループ。

後加工(2)
オパール、プリーツ、エンボス、フロッキー、塩縮等、表面変化、表情感に富んだ後加工グループ。

ニット(1)
ライト&コンフォートなリラクシング性のある素材傾向の中で、細番手使いのべーシック(天竺、フライス等)で軽く、汎用性の広
いニットが重要。

ニット(2)
中番〜太番のミドルゲージ、ローゲージの光沢感、透明感、シワ感のニットが先染への展開も合め、バリエーション豊かに登場す
る。

〈コットン複合、麻複合〉
薄手から厚手まで、クリーンな表面感からラスティックな表情まで、様々な綿素材がイージーケア性、ストレッチ性等の機能性をプ
ラスして拡大される。

〈ウール複合〉
ハイ・ツイスト効果、異番手複合、組織変化等に、ストレッチ性、防水、防シミ、防シワ等の機能性を加味し、アイテムの軽量化に
伴い、コンパクトなコア素材としてリクルート向け等に注目。ウールといえどもカジュアル(着こなし)素材として重要。

〈化合繊複合〉
プレーン&シンプルなものが多い中で、スラブネップ使いや組織変化の工夫を凝らし、ナチュラル感を表現した、霜降り、無地調ミ
ックス、先染チェック等の化合繊複合素材タイプが登場。

〈先染プリント・パターン〉
明るく澄んだ色合いで、多色使いのストライプ、ボーダー、タータン、マドラス・チェック、さらに、エスニック・パターンまで、
ヤングを中心にカジュアル全般に幅広く展開される。

■■■ターゲットマインド■■■

自然へと融合する衣服
全てが細分化されすぎ、物や人があふれる現代
ぎりぎりの精神状態で戦っている人が
ふと、‘‘自然と同化しよう’’と今にも現実逃避に、走り出しそうな人々
いわば、‘‘ウェアリング セラピー’’を必要とする人々のための衣服。