労働安全衛生マネジメントシステム
 指針の内容

  労働災害は、年々減少傾向にあるが、労働災害のさらなる減少を図るには、潜在的な危険・有害要因を減少することと組織的・体系的な安全衛生への対応が必要とされる。そのため、「安全衛生マネジメントシステム」に関する指針が平成11年4月30日に告示された。

  労働安全衛生マネジメントシステムとは、労働災害発生の潜在的危険を減少させ、職場の安全衛生水準を向上させるために、経営トップの方針の下に、PDCAサイクル(計画ー実施ー評価ー改善)をまわし、計画的,組織的、かつ、継続的に安全衛生管理を推進するための仕組である。
 指針の内容は、以下のとおりである。

第1条 目的 第2条・3条 適用等
第4条 定義 第5条 安全衛生方針の表明
第6条 危険又は有害要因の特定及び実施事項の特定 第7条 安全衛生目標の設定
第8条 安全衛生計画の作成 第9条 労働者の意見の反映
第10条 安全衛生計画の実施及び運用等 第11条 体制の整備
第12条 文書 第13条 緊急事態への対応
第14条 日常的な点検、改善等 第15条 システム監査
第16条 記録 第17条 労働安全衛生マネジメントシステムの見直し

第1条 この指針は、事業者が労働者の協力の下に一連の過程を定めて継続的に行なう自主的な
   安全衛生活動を促進することにより、労働災害の潜在的危険性を低減するとともに、労働者
   の健康の増進及び快適な職場環境の形成を図り、もって事業場における安全衛生の水準の向
   上に資することを目的とする。
    
第2条 この指針は、危険又は有害要因等を考慮しながら、労働安全衛生マネジメントシステムを
    確立しようとする事業者に適用する。

第3条 この指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の規定に基づき機械、設備、化学
    物質等による危険又は健康障害を防止するため事業者が講ずべき具体的な措置を定めるもの
    ではない。
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第4条 この指針において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところに
    よる。

  1 労働安全衛生マネジメントシステム  事業場において、安全衛生方針の表明、安全衛生目
   標の設定、安全衛生計画の作成、実施及び運用並びに安全衛生計画の実施状況等の日常的な
   点検及び改善並びに一定の期間ごとに行なう当該安全衛生方針の表明から安全衛生計画の実施
   状況等の日常的な点検及び改善までの一連の過程の見直し等を連続的勝つ継続的に実施する
   安全衛生管理に関する仕組みであって、生産管理等事業実施に係る管理に関する仕組みと一体
   となって実施され、及び運用されるものをいう。

  2 安全衛生方針  事業場における安全衛生水準の向上を図るために事業者が表明する安全衛
   生に関する基本的な考え方をいう。

  3 安全衛生目標  安全衛生方針に基づいて事業者が設定する一定期間内に達成するべき到達
   点をいう

  4 安全衛生計画  事業者が、事業場における危険又は有害要因等を踏まえ、一定の期間を限
   り、安全衛生目標を達成するための具体的な実施事項、日程等について定める計画をいう。

  5 緊急事態  労働災害発生の急迫した危険がある状態をいう。

  6 システム監査  労働安全衛生マネジメントシステムが適切に実施され、及び運用されてい
   るかどうかについて、安全衛生計画の期間を考慮して事業者が行なう調査及び評価をいう。
第5条 事業者は、安全衛生方針を表明し、労働者に周知させるものとする。

 A 安全衛生方針には、次の事項を含むものとする。
  1 労働者の協力の下に、安全衛生活動を実施すること。

  2 労働安全衛生関係法令、事業場において定めた安全衛生に関する規定(以下「事業場安全衛
   生規定」という)等を遵守すること。

  3 労働安全衛生マネジメントシステムを適切に実施し、及び運営すること。 
第6条 事業者は、事業場における機械、設備、化学物質等の危険又は有害要因を特定する手順を定
   めるとともに、この手順に基づき、危険又は有害要因を特定するものとする。

 A 事業者は、労働安全衛生関係法令、事業場安全衛生規定等に基づき実施すべき事項及び前項で
  特定された危険又は有害要因を除去又は低減するために実施すべき事項(以下「実施事項」とい
  う)を特定する手順を定めるとともに、この手順に基づき、実施事項を特定するものとする。
第7条 事業主は、安全衛生方針に基づき安全衛生目標を設定するものとする。
第8条 事業主は、安全衛生目標を達成するため、第6条第2項で特定された実施事項、危険予知活
   動等の日常的な安全衛生活動に係る事項等を内容とする安全衛生計画を作成するものとする。
第9条 事業者は、安全衛生目標の設定及び安全衛生計画の作成に当たり、安全衛生委員会の活用等
   労働者の意見を反映する手順を定めるとともに、この手順に基づき、労働者の意見を反映する
   ものとする。
第10条 事業者は、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施し、及び運営する手順を定めるとともに、
   この手順に基づき、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施し、及び運用するものとする。

 A 事業者は、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施し、及び運用するために必要な事項について
  労働者、関係請負人その他関係者に周知させる手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全
  衛生計画を適切かつ継続的に実施し、及び運用するために必要な事項をこれらの者に周知させる
  ものとする。

 B 前条の規定は、安全衛生計画の実施及び運用について準用する。

 C 事業者は、機械、設備、化学物質等の譲渡又は提供を受ける場合には、第6条第1項の危険又
  は有害要因の特定等に資するよう、これらの取扱いに関する事項を記した書面を入手するよう努
  めるとともに当該事項のうち必要な事項を労働者に周知させる手順を定め、この手順に基づき、
  労働者に周知させるものとする。
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第11条 事業者は、労働安全衛生マネジメントシステムを適正に実施し、及び運用する体制を整備
    するため、次の事項を行なうものとする。

   1 システム各級管理者(事業場においてその事業の実施を統括管理する者及び生産・製造部
    門、安全衛生部門等における部長、課長、係長、職長等の管理者又は監督者であって、労働
    安全衛生マネジメントシステムを担当するものをいう。以下同じ)の役割、責任及び権限を
    定めるとともに、労働者、関係請負人その他の関係者に周知させること。

   2 システム各級管理者を指名すること。

   3 労働安全衛生マネジメントシステムに係る人材及び予算を確保するよう努めること。

   4 労働者に対して労働安全衛生マネジメントシステムに関する教育を行なうこと。

   5 労働安全衛生マネジメントシステムの実施及び運用にあたり、安全衛生委員会等を活用す
    ること。
第12条 事業者は、次の事項を文書により定めるものとする。

   1 安全衛生方針
 
   2 安全衛生目標

   3 安全衛生計画

   4 システム各級管理者の役割、責任及び権限

   5 第6条、第9条(第10条第3項において準用する場合を含む)、第10条第1項、第2
    項及び第4項、次項、第14条第1項及び第2項並びに第15条第1項の規定に基づき定め
    られた手順。

 A 事業者は、前項の文書を管理する手順を定めるとともにこの手順に基づき、当該文書を管理す
  るものとする。
第13条 事業者は、あらかじめ緊急事態が生ずる可能性を評価し、緊急事態が発生した場合に労働
    災害を防止するための措置を定めるとともにこれに基づき適切に対応するものとする。
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第14条 事業者は、安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施する手順を定めると
    ともにこの手順に基づき、安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施するも
    のとする。

 A 事業者は、労働災害、事故等が発生した場合におけるこれらの原因の調査並びに問題点の把握
  及び改善を実施する手順を定めるとともに、労働災害、事故等が発生した場合には、この手順に
  基づき、これらの原因の調査並びに問題点の把握及び改善を実施するものとする。

 B 事業者は、次回の安全衛生計画を作成するにあたって、前二項の規定により実施した事項の結
  果を反映するものとする。
第15条 事業者は、定期的なシステム監査の計画を作成し、システム監査を実施する手順を定める
    とともに、この手順に基づき、システム監査を実施するものとする。
 
 A 事業者は、前項のシステム監査の結果、必要があると認めるときは、労働安全衛生マネジメン
  トシステムの実施及び運用について改善を行なうものとする。
第16条 事業者は、安全衛生計画の実施及び運用の状況、システム監査の結果等労働安全衛生マネ
    ジメントシステムの実施及び運用に関し必要な事項を記録するとともに、当該記録を保管す
    るものとする。
第17条 事業者は、第15条第1項のシステム監査の結果を踏まえ、定期的に、労働安全衛生マネ
    ジメントシステムの妥当性及び有効性を確保するため、安全衛生方針の見直し、本指針に基
    づき定められた手順の見直し等労働安全衛生マネジメントシステムの全般的な見直しを行う
    ものとする。
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