30億年におよぶ地球の歴史の中で、これまでに生物種の大きな絶滅は5回ほどあった。
それは、オルドビス紀(4.6億年前)、デボン紀(3.8億年前)、二畳紀(2.7億年前)、
三畳紀(2.3億年前)、白亜紀(6500万年前)である。白亜紀の絶滅は恐竜の絶滅として一般
に良く知られている。
化石などの調査から、これまでの自然絶滅の速度は、100万種につき1年に1種程度である
と推定されている。一方、現在起こっている絶滅は、1年に数万種類の生物が絶滅している考
えられていることから、この6回目の絶滅は、これまでの大絶滅をはるかに凌ぐものである。
野生生物の大絶滅が人類に及ぼす影響は大きい。それは、人類を育み、人類の現在の生
存を可能にしている生態系の破壊を意味するからである。ヒトと同じ生理的仕組みで生きて
いる他の生物を死滅させる環境は、ヒトの身体にもダメージを与える。
他の生物が滅んで人間だけが生き延びることはありえないのである。
[参考文献:地球環境読本(小林朋道)を改変]
1980年代後半、イギリスの牛たちの間に牛スポンジ状脳症(狂牛病)が流行し始めた。イ
ギリスで報告された発症頭数は14万3109頭に上った。当時のイギリス政府は「狂牛病は人には
感染しない。」という基本姿勢を崩そうとしなかった。同国の主要産業である牧畜業や食品加
工業へのダメージを最小限に抑えたかったからである。1996年の春、とうとうイギリス政府
は「狂牛病が肉食を通じてヒトに感染する。」可能性を認めた。その間、知らず知らずのうち
に狂牛病に感染した牛の肉を食べたヒトの数はどのくらいに上ったか明らかではない。
狂牛病の病原体は細菌でもウィルスでもないプリオン(感染性をもつタンパク質)である
といわれている。プリオンの驚異的な生命力(360℃で1時間にわたって熱処理をしても感染
力が弱まらない。)と潜伏期間の長さ(ヒトの体内で潜伏する期間は平均20年)を考えれば
今後、2010年前後にスポンジ状脳症患者が大発生する恐れがある。スポンジ状脳症が発症し
てしまえば、現代医学ではなす術は無く、致死率は100%で確実に死に至る。
狂牛病問題を踏まえて、21世紀は、消費者が公正な食品危険度情報のもとで、自らの『責任
』で食品の良し悪しの判断を下さなければならない時代となる。
[参考文献:地球環境読本(及川敬貴)を改変]
現在の地球の大気を組成しているのは主に、窒素78%、酸素21%、アルゴン1%で、二酸化
炭素は第4番目で0.036%ときわめて微量の成分となっている。世界の二酸化炭素排出量は、
1950年で16億トンであったが、1995年で60億トンになったと推計されている。約4倍に増え
ている。また、H12環境白書によると、CO2濃度は1850年に310ppmであったが1990年で
370ppmと1850年頃から急上昇している。これは化石燃料利用急増による二酸化炭素量の
急増である。近い将来、50〜100年後には、ミネラルウォーターを買うように、空気(酸素)
を買う時代がやってくるかもしれない。
最近、『メタンハイドレート』が新たな燃料資源として注目されている。これは、メタン
と水の化合物で、一定の低温・高圧のもとでは安定を保っているが、水の中に入れると瞬間
的にガス化した無数の泡になる。この泡に火がつくと爆発的な火力をもたらす。日本近海に
は無限に近い量のメタンハイドレートが眠っており、日本にとって魅力的なエネルギー源と
なりうるとの見方がある。しかし、その一方で、大量のメタンガスが空中に放出されること
になれば、地球の温暖化はますます加速していく。そして、地球温暖化はハイドレートの崩
壊を誘発していく“悪魔のサイクル”の始まりになる可能性が考えられる。
[参考文献:地球環境読本(篠原 勲)を改変]
30億年かけてつくられ、地球上の生物を紫外線から守ってきたオゾン層に大きな穴(オゾ
ンホール)が見つかった。1987年以降、南極上空では春(9月〜10月頃)にオゾン量が従来の
平均値の50%以下にまで減少するオゾンホールが毎年現れ、1990年代にはその大きさが南極
大陸の大きさを超えるようになったいわれている。
世界のフロン総生産量の10%強を占めていた日本も、フロン生産を1995年に中止した。し
かし、現在までに対流圏に溜められたフロンによるオゾン層破壊はまだ数十年は続くと考え
られる。フロンの回収と破壊も思うようには進んでいない。
なによりも難しい問題は、冷蔵庫をもつこと、安く手に入れることが夢であるような発展
途上国の人々に対して、オゾン層破壊物質の使用規制に協力してもらうことである。地球上
の人々の間にある資源、技術、資金、貧困などの不平等をいかに無くしていくかが、地球環
境問題に大きく関わっている。 [参考文献:地球環境読本(武田喬男)を改変]
人間の経済活動(焼き畑耕作,農用地造成,過放牧,過剰な伐採,エビ養殖場開発など)
が原因で、毎年約1400万ヘクタールの森林が減少している。これは日本の国土の3分の1に相
当する。森林の消滅は、土壌の劣化,侵食,荒廃につながりやすく、ひとたび荒廃地化した
土地を森林に戻すことは極めて難しい。そこに生息していた多様な動植物をベースとした生
態系が変状し、熱収支,水収支,二酸化炭素循環機能が不安定となり、気候変動等が生じて
くると考えられる。
世界的に減少が著しい森林は、高緯度地域の針葉樹林、中南米,アフリカ,東南アジアに
広がる熱帯林、その中でも特に海岸、河口地域に生育するマングローブ林があげられる。
[参考文献:地球環境読本(岡崎 誠)を改変]
一般にはPH(ペーハー)が5.6以下の雨を酸性雨という。1852年のイギリスではすでに
酸性雨という言葉が用いられていた。産業革命に伴い、ヨーロッパのさまざま都市では強い
酸性雨が降っていたものと考えられる。日本でも1930年代に東京で酸性雨が降っていたこと
報告されている。
化石燃料の燃焼などにより発生した気体状の硫黄酸化物,窒素酸化物は、複雑な化学反応
の結果、硫酸塩、硝酸塩の微粒子を作り、これらの一部は雲粒の核となり、雲粒が酸性化し
ていく。雨粒はたくさんの雲粒が集まってできたり、雪やあられが落下中に溶けてできるが、
落下中にさらに汚染物質を取り込むことにより酸性度が強まる。酸性の霧、あるいは酸性の
雪もある。酸性化により魚が死滅していく原因は、まず食物連鎖の崩壊があげられる。植物
プランクトンが減少すると、動物プランクトンが影響を受け、それらを食べる小魚が減少し、
小魚を食べる大形魚類にも影響が出る。早春の雪解け時に一気に放出されるいわゆる酸性シ
ョックも原因の一つである。湖沼や河川が酸性化すると、受精卵の孵化や稚魚にも影響が現
れて、世代交代のメカニズムが壊れる。寿命の短い魚類ほどこの影響が大きい。さらに重要
な影響は、酸性化によりアルミニウムなどの有毒な金属が湖底,川底の土壌から水中に溶け
出すことである。 [参考文献:地球環境読本(武田 喬男)を改変]