僕は兄貴と一緒に居ることができて、嬉しいよ。
いつだって兄貴は猊下のことばかりかんがえているけど
それでも、いい。
兄貴さえ居れば僕はいつでも笑っていられると思うから―――。





― A crybaby boy ? ―




いつも通りの家、いつも通りの雰囲気。
何も、変わらない一日。

平和、っていうのかな。
それが「幸せ」だってことは知ってる。
でも、ぼくにとってそれはつまらなくて、一番苦手なコト。

『皆殺しのラキ家』

僕等はそう呼ばれている。
聞いての通りそれが、暗殺が、僕等の仕事。

いつも、「死」がまとわりつく。

僕等は幸せであってはならない。
多くの人々を殺してきた報い。
そう、幼いころから教えられてきたんだ。

だから、僕は平和なのが苦手。

何もないと、怖くなる。

だから僕は、静かな時間を少しでも減らそうとして、
「ね、ね、兄貴っ!!」
喋る。

「・・・何だ、ベルドリト。」
いつでもそんな無愛想な返事を返してくれるのは
僕の双子の兄、イェスパー・リヴェ・ラキ。
「こんなに静かだとさぁ、わわっと騒ぎたくならない?」
「ならないな。」

あまりにも呆気なく一言で返されると流石にちょびっと悲しい。

「うー。じゃぁなにさ、兄貴は静かにのーんびりしてるのが好きなわけ?」
聞かなくて、わかっているような質問までしたくなる。
「当然だ。何も無い、ということは俺にとって幸せなことの一つだからな。」

兄貴は、本当に俺とは似ていない。
外見、趣味、戦い方。
双子だなんて、僕等が言わなかったら誰も気づかないんじゃないかな。

「・・・幸せかぁ。」

思わず、呟いてしまった。

それを聞いた兄貴は訝しげに僕の顔を見る。

いつもの、無愛想な顔。

でも、いつもと違う、僕だけを見ていてくれる、顔。

「・・・お前は、何にそれほど脅えているのだ?」
それを聞いた僕の体は一瞬、強張った。

多分、兄貴は、知っているんだ。

僕が、いつも笑っている理由を。

無駄に、よく喋る理由を。

「別に、脅えてなんかないよー・・。」
そう、答えを返しては見たものの、紡がれた声は小さく、微かに震えていた。

笑えなかった。

「そうか。」
それだけ言うと、兄貴は僕の腕を引いて、そっと抱きしめた。
そして、その大きな手で僕の頭を優しく撫でる。

何も、言えなかった。
こんな顔、誰にも見られたくなかったから。

「泣きたいときは、泣けばいい。普段、余計に笑っている分も含めてな。」
「泣かないよ。」
兄貴の胸に顔をうずめたまま、それだけをはっきりと言った。

僕には、1つだけ誓っていることがあるんだ。

兄貴は僕の言葉を聞いて、また顔を顰めているけど。

「兄貴こそ、もっと笑ったり泣いたりすればいいのに。」
そんな兄貴の姿はちょっと想像がつかないけど。
「・・・」

静かな時間が続いた。
でも、今は怖くなかった。
兄貴に抱きしめてもらって、その心臓の音を聞いていると落ちつくから。

「僕が泣くのは、兄貴に何かあったときだけだよ。」

そんなことを言ってみたら、兄貴は少し顔を赤くしてて可愛かった。
そして、僕にとって、これ以上に無いほど嬉しい言葉を呟いてくれた。

本当に、小さな声だったけど。



僕は、また明日も笑うことができると思う。
そして、その次の日も、次の次の日も、ずっとずっと笑っていられると思う。

僕は幸せになってはいけないことを知っている。
だから自分から幸せに手を伸ばすことはない。
でも、わざわざ僕のところに来てくれた幸せには、素直に手を触れるんだ。

それが、僕の喜びの全て。

まぁ、そう簡単には訪れてくれないだろうけどさ。

その代わり、僕のところにぴょっこりとよく現れてくれる不幸や悲しみには
自ら進んで触れに行く。

それに耐えるためにも、僕はいつも笑っているんだと思う。
それなのに、いつもいつも泣いてなんていられないでしょ。

本当に必要だと思うときのためだけに僕の涙はある。

僕の一番大切な人のためだけの涙。
生まれたときから、決まっていたんだと思う。
運命ってやつかな?

僕の涙は、生まれたときからずっと一緒に居てくれた、兄貴のためだけにあるんだ。

兄貴はよく死に掛ける。
そのたびに泣いちゃったりするから、僕は泣き虫って言われちゃうけど。

まぁ、それも僕の幸せ。

そいうえば、明日兄貴は非番だったかな?











―――「俺が泣くのは、お前に何か有ったときだけだ。」―――


され竜小説初書きです。 で、その記念すべき(?)第一弾はラキ兄弟の・・・というかベルドリトの1人語り。 あとは題名どおりです。 ベルドリトは泣き虫なのか?みたいな感じで書きました。 次はギギガユ書ければいいなぁ。(遠い目