俺さまがまだ自分の身を守れるほど強くなかった時、
傭兵を雇っていたことがある。
そいつは寡黙で俺さまが話しかけてやっても
まともな返事が返ってきた覚えがなかった。

いけすかない奴だったけど、剣の腕はたつ。
それが余計にムカついたのは言うまでもない。


もう会うことなんて無いと思ってたのに。


―――いっそ、忘れてしまえれば。―――

久しぶりに見たあいつは、何ひとつ変わってなかった。


そう、何ひとつだ。


最後に奴を見たのは確か6年くらい前だったか。

最もその頃は既にクルシスに出入りしていたから、
あいつが天使だってのは聞いてたけど。
やっぱり見かけが前と全く同じというのはどこか変な感じがして。

奴にしてみれば6年なんてきっと、久しいと感じさえしていない。
俺さまには長くて仕方のない時間だったってのに。

中身も全然変わって無いのだろうとは思ってた。
実際、変わって無いように見えるしな。

でも。


ただひとつ、違ってた。



「あんたは相変わらずみたいだな。さーっぱり変わってねぇし。」
「天使とはそんなものだ。神子こそ相変わらず壮健そうで何よりだな。」
「うわ、何ソレ。嫌味かよ!」

「・・・フ。」

他愛の無い話。
本当に他愛の無い。


けれど、奴は笑った。


・・・正確には微笑だが。


「・・・前言撤回。あんた変わったな。」
「そうか?」
「あぁ、俺の知ってるあんたは、笑わない。」
「・・・そう、か。確かに、あの頃は我ながら屍のような物だったと思うからな。」
「全くね。・・・死んだ魚みたいな目ェしてたくせに。」

そう、あの頃のクラトスと言えば生きている意味を見い出せずに
ただそこに存在し続けているだけだった。

生きている意味なんて俺さまだって持ってないけど。
それは元からだったから。

でもきっとクラトスは違ったんだろうな。
生きる意味を見付けて、奪われた。

そんな感じだった。

でもクラトスはまた見つけたんだ。
生きる意味。
守るべき、大切なもの。

それが何なのかは知らないけれど。

「・・・ロイドくんは俺さまが貰うからな。」
「・・・ならば私はゼロスをもらい受けるとしよう。」

あ、また笑った。

「・・・って、何言ってやがる。冗談じゃねぇ!」
「冗談を言ったつもりはないが?」
「はぁぁ!?・・・お前ってそういうキャラだったのか?似合わねぇぞ!」
「・・・フ。」

あぁ、そうか。

似てるんだ。
ロイドに。

こんなところで、気付かされるとは思わなかった。
でも、やっぱり親子なんだな。

「・・・ロイドくんも大人になったらこんなんになっちまうのかねー。」
「なるとしたら1000年程生きた後だな。・・・昔は私もロイドのようなものだった。」
「ぅぇー・・・想像できねー・・・。」

クラトスが昔話をするなんて。
今日は雪でも降るのだろうか。

そんなことを考えながらもずっとその話に耳を傾けていた。
たまにはこんな日があってもいいだろうと、




ふたりの面影を重ねながら。





















END







02「誰かに似てる」
結局クラゼロお題まで作っちゃったわけで。
クラゼロって難しいね・・・_| ̄|○
というか、これいつの話なんでしょう;
時間設定考えるのは苦手です(´д`|

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