白い、真っ白な雪の広がる場所で誰かが泣く声を聞いた。


その"誰か"の声がする場所だけが紅く染まって見える。

紅く染まる雪に座り込む少年の姿。
その少年の髮の色もまた、鮮やかな紅。

歩けど歩けど辿り着かなかった。

そこに行かなければならない。
そんな想いばかりが大きくなるのに。




「・・・母さま!母さまぁ・・・っ!」

絶えまなく聞こえてくるのは少年の悲痛な声。

その声は俺の頭に直接響いてくるようで酷く痛い。
悲しみが、痛い。

「お前なんて・・・生まなければ良かった。」

そんな言葉が聞こえたのも少年の声が聞こえた場所からだった。

「・・・かあ・・・さま?」





それきり誰の声も聞こえなくなった。








「ろーいーどーくん!朝通り越して昼だぞー?起きろ!」
「んぁ?・・・ゼロス?」

目が覚めた俺の目の前には
紅い髮を垂らして睨みつけてくるゼロスの顔。

「はぁ。やっと起きやがったな。」
「・・・ゼロス。」

似ていると、思った。

「なんだよ。」
「お前の母親って今どうしてるんだ?」


ビクリとゼロスの肩が跳ねた。


それを見た後で、聞かないほうが良かったと後悔する。
俺の予感が正しければ尚更だ。


「・・・どうしたんだよいきなり。」
「・・・いや、やっぱいいや。聞かなかったことにしてくれ。」


言いたくないならそれで良い。
俺も無理に聞こうとは思わなかった。

いつか話してくれると信じているから。



「・・・途中でやめるなよー。
 何でそんなこと起き抜けに聞いたかぐらい教えやがれ!」

そう言ってゼロスは俺の頭を掻き回した。
その行為は動揺している証拠。

「・・・夢だよ。」

「はぁ?」
「夢に出てきたんだ。」
「・・・何がだよ。」

これ以上、言いたくなかった。
きっと俺の言葉はお前の傷を抉る。


傷付いたお前なんて、見たくない。






だから。






「俺はお前と会えて・・・お前が生まれてきてくれて良かったよ。ゼロス。」


そう優しく呟いて、軽く、触れるだけのキス。

「・・・な、何なんだよ一体!?」
「何って、おはようのキス?」

言ってやったらすぐに顔は赤く染まった。
昨日、おはようのキスしろって言ったのはゼロスなのに。

「ああ、ああああんなの冗談にきまってんだろ!?」
「嫌なのか?」
「うっ・・・い、嫌、じゃないけど・・・。」
「じゃ、これから毎朝してやるよ。」
「・・・ロイドくん、俺さまの反応楽しんでるだろ・・・。」






お前が愛を求めるなら、俺は近付き手を伸ばそう。

お前が夢に苦しむなら、俺は優しく口付けしよう。







そして二人で眩しい朝を。



















END







360「夢見た後で口付けを」
うわ短っ。(・・・

というか、前置きの意味が殆ど無いんですが。
大体、セリフ多いよ・・・コレを小説と言っていいものなのか;

家のゼロスくんは絶対ロイドくん勝てません。
ロイドがもの凄い意地悪な感じなだけかもしれませんけど;

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