歩く度にちらちらと目につく紅い色。
風になびく紅い髪が今も俺の頭に鮮明に焼き付いている。
それだけはあいつと出会ったころから全く変わらない。

変えることなどできはしない。

あいつは俺の中で振り返って笑うんだ。
この手に残る感触が嘘だと錯覚させる程、鮮やかに。




ほら、今もまた。






―――記憶に残る血の色は、今でも紅く美しい。―――







「ロイドくんて、赤いよな。」
「はぁ?」

朝、部屋を出て階段の前に紅い髪の奴が居た。

それはこれでもかという程手入れが行き届いて黙っていても目をひく。
そんな綺麗な髪の奴なんか俺は一人しか知らない。
だから普通に近付いて、思いきり引っ張ってやったんだ。

そしたらいきなりそいつが振り向いて。
文句でも言うかと思えばわけのわからないことを言ってきた。

「・・・俺よりお前の方が紅いだろ。」
「いやいや、俺さまのなんかと違って純粋な赤じゃん?ロイドくんは。」
「純粋?」
「そ、純粋に真っ赤なの。」

俺は終始その話が俺の服の色のことだと思っていた。
確かにこの服は真っ赤だから。

それにしても、何故突然ゼロスがそんな話をしたのかわからなかった。
わからなかったけど、特に気にもしなかった。













「ゼロスって、紅いよな。」
「・・・あのなぁ。先刻俺さま、お前の方が赤いって言ったよな?」

階段で話してから3時間後ぐらいだったと思う。
今度は俺の方からそんな話をし始めた。

真昼の太陽に照らされて輝くゼロスの髪が、まるでルビーのように紅くて綺麗だったから。

「まぁ、確かに俺も赤いかも知れないけどさ。ゼロスは紅くて、綺麗だぜ。」
「綺麗、ね。俺さまの髪なんてそんないいもんじゃねぇぞ?」
「何で。宝石みたいでいいじゃん。」
「ルビーみたいで、ってか?よく言われるけどな。」

何が悪いのか、俺にはさっぱり理解できなかつた

もう一度よく見ても、やっぱりルビーのように紅くて綺麗だった。














目の前に真っ赤な血の色が見えた。


紅い髪のあいつの体から流れる、血。

その色があまりにも綺麗すぎて。

「やっぱり、ロイドくんは赤いぜ?」

敵となり、俺たちに笑って刃を向けているゼロスが言った。
変わらずにその髪はだけは紅い。

「・・・お前の方が、紅い。紅くて綺麗で・・・。」
「血、みたいな色だろ?」

戦いの中で血に染まった髪。
ゼロスの顔は笑顔のまま、歪んでいた。

「・・・血って、こんなに綺麗だったんだな。」
「血が綺麗?やっぱ変わってるな、お前。」
「だって、ゼロスは自分の髪の色が血みたいだって思ってるんだろ?」
「あぁ、血みたいで、気持悪い。」

敵として向かい合っている筈なのに、ゼロスも、俺も酷く落ち着いていた。



この紅く染まった戦場にふたりだけ。

そんな錯覚さえ覚える程に。



「気持悪くなんかない。俺は、好きだ。・・・この紅がお前の色なら、余計にな。」
「ははっ。殺し文句だよなぁ、それ。・・・俺はお前の赤い色が好きだぜ?」

歪んだ笑顔は消えていて。
ただ穏やかにふたりでそれぞれの紅を眺めてた。

「・・・紅って、綺麗な色だよな。」
「あぁ、綺麗すぎて俺さまには不釣り合いだ。」
「俺は、お前以上に紅い色が似合う奴なんて居ないと思うけどな。」

本当に。

この紅はゼロスにしか似合わない特別な色。


だから、好きだ。



「・・・お前が好きだと言ってくれるなら、この色も満更じゃないかもな。」

そういって微笑んだ。
その顔が俺の中に刻み込まれる。


一生消えない傷として。


「なぁロイド、俺だけの色に俺を染めてくれ。お前の手で。」

そしてゼロスの身体は俺の剣へと吸い込まれるように倒れこんだ。

囁くように、俺の名前を呼びながら。





もう二度と、お前の紅は見れない。
それを知った心は酷く今も痛んでいる。































俺の心には今でもゼロスの微笑みが。


























お前の色を忘れられずに。






















END







01「紅い髪、赤い服」
というわけで自給自足、書きました。
病んでますね。(私が

突っ込みどころが満載です。
でも書いてて楽しかったから良いんです(良くない

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