恋をした。
そんな自覚をしたのはいつのことだったか。
ただ、あの時あいつは酷く機嫌が悪かった。
それだけははっきり覚えてる。
―――笑って、泣いて、―――
昨日からゼロスの奴がおかしい。
何がおかしいかといえば、そんなにはっきりとした違和感は感じられない。
ただなんとなく、いつもと違う。
そんな気がしたんだ。
「ゼロス、昨日、何かあったか?」
「へ?・・・別に?いつも通りだったぜ?」
ゼロスはそう答えるとすぐに俺から視線を反らした。
何かあったかと聞いたところでゼロスの奴が誤魔化すのは目に見えていた。
でも、俺には何か話してくれるんじゃないかって、心の底で期待してるから。
そんなの自惚れでしか無いけれど。
あいつにとって俺は特別なんだって、思いたい。
少なくとも俺にとってゼロスは特別だ。
他の誰とも当てはまらない、大切な人。
「・・・お前さ、嘘つくとき絶対人の目見ないよな。」
「う、嘘なんてついてねぇよ!俺さまいつも通り、可愛い女の子たちと遊んでたって!」
「・・・はぁ。」
「んな!?なんだよその溜め息!信用してないな!?」
「お前、馬鹿だな。」
「なんだとー!?」
視線反らすことと嫌に饒舌になる癖。
どちらも注意していれば直ぐに気付く。
こいつは嘘が下手。
今は、特に。
自分では気付いてないんだろうけど。
「兎に角!俺さまいつも通りだからな!」
どこが?
いつものお前なら嘘もっと上手く嘘つくよ。
どんなことでも笑って誤魔化して。
なのに何でそんなに必死なんだ?
そんなに強がって何になる。
本当に馬鹿、だよな。
「ゼロス。」
「しつこいと嫌われるぜ、ロイドくん・・・?」
直ぐそこに有ったゼロスの頭を掴んで、思いきり引っ張ってやった。
そしてそのまま力強く、抱きしめてやった。
「・・・ロイドくん?」
「あんまり強がるなよ、ゼロス。」
「・・・俺さま強いぜ?」
「どこがだよ。お前、俺のこと信用してないのか?」
「まさか。・・・ロイド以上に信用できる奴なんて居ねぇし。」
その言葉がとても嬉しくて、誇らしかった。
自惚れでもいい。
ゼロスを守ってやれるのは自分だけだ。
その時不意にゼロスが口を開いた。
「・・・ごめんな、ロイド。」
「・・・何がだ?」
「全部。今までのことと、これからのこと。・・・ごめんな。」
「・・・わけわかんねぇ。」
一瞬ゼロスが酷く儚く見えた。
目を放した瞬間に消え去ってしまいそうなくらい。
そんなこと、させない。
そう思って俺はゼロスの頭を優しく撫でる。
今ここに居ることを確かめるように、何度も。
何度も。
END
02「抱きしめて、頭を撫でて」
下手したらゼロスルートにも行けるっていう
微妙なトコで終わらせる自分の馬鹿っ!
でも、守る守る言って結局守れないわけですね、ロイドくん(・・・
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