「仕方ないだろ・・・わかんないし。」


勉強を始めて30分もたたないうちに
ロイドの手の動きが止まることは珍しいことではない。
それはゼロスも承知していることで
今回もまた始まったとばかりに肩を竦めて真っ白な紙を覗き込む。

「わかんないしって・・・せめて1問くらいは解いてから言おうぜー、ハニー。」

「うるせぇ・・・人間には得意不得意ってもんがあるだろ?」
「・・・ロイドくんが得意なのは剣術くらいっしょ。」

はぁ、と態とらしく盛大に溜息をつく。

ロイドからペンを奪ってなるべくわかりやすく問題の説明をする。
一通り説明し終えてから、わかった?と尋ねて見れば返ってきたのは適当な返事のみ。

これもいつものことだ、と殆ど諦めたようにロイドを見やれば案の定。
その視線は紙に向かっておらず、ゼロスの顔をじっと見つめていた。


睨み付けてくるわけでもなく、観察するでもなく、ただまっすぐに。


「・・・いくら俺さまの顔が美しいからって、そんなに凝視しないで欲しいんだけど・・。」
「勉強、飽きたし。」



この目が、苦手だ。


ロイドはいつでもまっすぐな瞳をゼロスに向けてくる。



「・・・飽きてもちゃんとやらないとリフィル先生に怒られるぞ?」
「仕方ないだろ、飽きたんだから。」



ただ食い入るようにゼロスの顔を見つめてくるロイド。

自分から視線をそらそうにも、蛇に睨まれた蛙みたいに動けない。
その視線から逃れたくて無理にでも勉強に集中させようとする。

「俺さまの顔見てたって楽しくないだろ・・・。」
「いや、楽しいぞ?」

勉強をしている時の嫌な顔とは全く正反対な笑顔。

「ひ、人の顔見てたらそれこそ飽きるだろ!」


何故かだんだんと体温が上昇。

そろそろやばい、とゼロスはわけもわからず逃げ腰になる。


「お前の顔、綺麗だし。飽きねぇよ。」


「はぁ・・!?」



もう、顔が真っ赤だった。



ついに耐えられなくなったゼロスは後ろに一歩下がる。

正確には下がろうと、した。



ゼロスが行動を起こそうそとした次の瞬間には目の前にロイドの顔。




「・・・・えぇと。」

腕を強く引かれた気がした。



「気晴らしに外行こうぜ。先生には見つかんないように、な?」



何がなんだかさっぱり理解できていないゼロスの手を引いてロイドは歩き出した。


そして、突然振り返っていつもの笑顔で一言。



その日、ゼロスの顔はずっと真っ赤で不気味なほどに大人しかったらしい。






「お前の顔ってホント見てて飽きないよ。・・・綺麗だし、可愛いし、な。」




END




308「飽きた!」
なんか、お題と逆の方向に・・・。(汗
というか最初はゼロスが誘い受けっぽい話だったはずなのに;
ロイドは素でサラリとゼロス口説いちゃう子だと思う。

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