ただちょっと思いついたから。ただ、それだけのことだ。



朝、目が覚めると、ロイドくんが居なかった。
当然俺さまは何処に行ったのかと辺りを見回す。
でもやっぱり居ない。
結構ロイドくんが朝にいなくなってることなんて良く有るんだけどな。
ほら、剣の稽古だとかなんとか。
日課なんだってよ。真面目だね。
で、どーせまたソレで居ないんだろーからさ。
気が向いたら付き合ってやらないこともないんだけど、いかんせん腰が痛い。
・・・なんでかなんて聞くんじゃねぇぞ?

でも、ここでただ寝たフリでもして待ってるってのも暇だ。
俺さま暇なのキライなワケよ。
じゃーどーするかってぇと。

あ、イイモノ発見。

机の上には・・・何だ?コレ。
木片に何か彫ってある。
んーと、えーと・・・読めねぇ。
作りかけってことか?つまんねーなぁ。
出来上がったらまたこっそり見るか。
あくまでこっそり、な?
あいつ途中の細工物見ると怒るんだもんよ。
聞くに聞けないっての。

はぁ、と深い溜息をひとつついてから、また先程の机の上にそれを戻す。
戻すとほぼ同時?兎に角そんくらいのタイミングで、
すぐ傍の部屋のドアが静かに開くのが見えた。
誰だかなんて言わずもがな。
すっげー微妙なタイミングだなオイ。

「あれ?ゼロス、起きてたのか。」
「おーぅ。お早うハニー。」
「あぁ、お早う。で、朝飯できたってさ。早く降りて来いよ?」
「了解ー。」

そんだけの短い会話が終わるとまたロイドくんはドアを閉めて出て行った。
朝から元気な足音が聞こえたりなんかすると、自然と笑いたくなっちまう。

さて、着替えようか。と思ったその矢先だ。
また先刻の細工物に手が触れた。
その瞬間、ちょっと見なきゃ良かったかなって思った。

だって。

ソレが何なのか。増してやそれに彫りかけてある文字の意味がわかっちまったんだもん。
あるだろ?突然それまでわかんなかったことを理解できるときってさ。
ちょっと固まったよ、俺さま。
ショックなことってわけじゃないのは確かなんだけど。
俺さま、ロイドくんに愛されてる自身はあるし。
直ぐにもへし折れそうな自信だけどな。
ああ、で、何が彫ってあったかってーとぉ。

「・・・何やってんだよ、ゼロス。」
「うぎゃぁ!?」
突然ドアが開いて顔面打つところでした。
ホント、突然。驚きました。マジで。
「あぁ・・・えーと。どーしたの?ロイドくん。」

俺さま今心臓バクバクいってる?

自覚無いけどそんな気がする。しかもこれこの上ない程顔引き攣ってる。
うわー、美しくない。寧ろ、馬鹿っぽい?
「お前が降りてこないからだろ。で、手に持ってるソレ、なんだ?」
「へ?・・・あ゙・・・え、えへ?」
引き攣ってる顔を更に引き伸ばすしかないこの状況。

ロイドくんは素晴らしく晴れやかな笑顔だよ。
晴れやか過ぎて悪寒が走るんですが。
つーか怒ってる?怒ってるよね?
火を見るより明らかな程ピンチな俺さまどーしましょ。
笑って誤魔化すには顔の筋肉が働いてくれないわけで。
「ゼロスー?」
あ、イイモノ発見。手の中に。
「・・・はいはい。ほらよ。」
「・・・あれ?」
今回はホントに俺さま自分を誉めたい。俺さま格好良いー!
「これさー、前からロイドくん探してた奴だよな?
 ・・・俺さまの持ち物に入ってたり・・して。」
「・・・ふーん。」
おお、視線が痛々しい・・。
そう、俺さまってば超ナイスタイミングで握ってたのよ。ボタン。
何でボタンかってーと、それはそれは波乱万丈なエピソードが
詰まりまくってたりするわけです。
短く言えば女子学生とかが卒業ん時に男子のボタン欲しがる事然り。
お守り代わりに持ってました。
ほら、俺さまってば恋する乙女だから!
自分で言っててキモいと思うけどな!
まぁ、つまりだ。
それが見事お守りの役目を果たしちゃったりなんかしちゃったりするわけよ。
じゃー、細工物は何処へって話だよな。
当然俺さまのポケットの中。早業万歳。

「・・・早く降りて来いよ?」
「おーけーおーけー。」
ひらひらと大げさに手を振ってみる。
もの凄く疑われてるよね、コレ。確実に。
・・・ドア閉める音も妙に静かだし。

それから直ぐに、階段を下りていく足音が聞こえた。
でも、先刻上ってきた音聞こえなかったんだよなぁ・・・気をつけよ。
んで、今俺さまのポケットに入っているだろうソレ。

どうするよ。

こんなん俺さまがもってんのはマズイっしょ。
だってさ、彫ってあるんだぜ?
あ、そーだ。イイコト思いついた。
今日、かなり冴えてるよ俺さま。
これならきっとお互いサマ。ついでにオマケみたいなハッピーエンドだ。


ただちょっと思いついたから。
俺さまはロイドくんの工具と先刻のアレを持ち出した。
指とかいっぱい切っちゃったけど、
「愛してる」なんて有り勝ちな文字の横にもう一つとっときの言葉、刻んでやった。


ただ、それだけのことだ。
















END







56「付加価値」
つまりは相思相愛だと。
というか基本的にそればっかりのサイトですが(苦笑
ゼロスがなんて彫ったのかといえばやっぱり別窓で見て頂ければわかります。
因みにロイドが作ってたのは髪留めとかだったらいいな(遠い目

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