俺はずっと、ずっとお前と一緒に居たい。

そう俺は一言呟いたまま黙り込んだ。
もう二度と口をききたくないなんて思ったのはきっとそれが初めてのことだったと思う。
俺はただお前のことを想って。
そんな言葉が自然と出てきたことにも驚きだったけど、
なによりそんなことを考えた俺は馬鹿だと思う。
そんなのあいつのことだ。嫌がるってわかってた。
あいつはひらひらと舞う蝶みたいな奴だから。
束縛なんて言葉、考えもしないような。

「ロイドくんは、この旅が終わったらどーするの。」
そんな言葉で始まった会話。
俺は確か荷物の確認をしていて、ゼロスは意味もなく隣に立っていた。
「どうしたんだよ、突然。」
「・・・別にぃ?ただなんとなく。どーすんのか気になっただけ。」
ぷいっと遠くを見るようにゼロスは顔を背けた。
俺の目の前には太陽に照らされて輝くゼロスの髪。
今どんな顔してるのか気になったりもするけど、敢えて俺も逆を向いて。
「俺さ、旅したいんだ。」
「・・・旅?今も旅してんのにその後も、また?」
俺の答えはどうやらゼロスは考えていなかったものだったらしい。
顔だけこちらを向けて疑問の眼差しを送って来る。
その様子がどこか可笑しくて、可愛く思えた。なんでだろうな。
「そう、ずっと旅してたい。世界を統合した後の世界を見て回りたいんだ。」
「・・・ふうん。」
あ、あとエクスフィアの回収な。なんて言ったのは多分聞こえていない。
ゼロスは悩むようにして今度は下を向いてたから。
昔じゃ考えられないくらい素直な反応。
俺はこんなだから、こいつから離れられない。ずっと、一緒に居たいって思う。
「・・・ゼロスは?」
「ん?」
「ゼロスはどうするんだよ、この旅が終わったあと。」
顔を上げて俺の方をみたゼロスの顔はどこか寂しそうで。
もしかしたら聞くべきじゃなかったのかもしれないけど聞かずには居られなかった。
「・・・俺は・・・どう、するかな。」
「・・・ゼロス?」
顔上げたのは一瞬でそのあとはまた沈むように地面を見つめている。
そしてそのまま呟いた言葉は聞き取るのもやっとで。
泣きそうだ、なんて言ったら起こられそうだけど、
それでも泣きそうでやけにこいつが小さく見えた。
「俺は・・・・多分。」
ゼロスの口から出た言葉。
それに俺は胸が焼け爛れるような痛みを覚えた。
でも嘘だって思える言葉じゃないくて。
それはきっと本音だった。

醜い本音。

別に俺がそう思ったわけじゃないけど。
言ったんだ、ゼロスが。
「・・・俺がお前に言うのはいつだって醜い本音ばっかりだ。
 俺はお前に救われてる。でも俺はお前の役になんて立てない。
 いっつも綺麗ごとばっかり言ってるくせに
 ちゃんと目的を果たしてるお前等の中に俺は要らない。そう、思うだろ?」
なんで、そんなこと言い出したのかわからないけれど。
当然俺はそれを聞いてひどく腹を立てた。
「要らない筈ないだろ。少なくとも俺にはゼロスが必要だぜ?」
「・・・嘘つかなくていいって。お前にはちゃんとコレットちゃんが居るだろ?」
なんでそうなるんだって怒鳴ってやりたい気もちで一杯だった。
でもそのときゼロスはホントに静かに笑ってて。
「俺、ロイドくんが俺のためにそんな嘘ついてくれるだけで凄く、嬉しい。」
「・・・嘘じゃない。・・・嘘じゃないっ!!」
「俺が今ここにいるのはロイドくんのおかげ。
 ホントの予定ならもーとっくに居なくなってる筈だったんだぜ?
 今じゃ雪だって怖くない。なーんにも怖くない。」
「・・・ゼロス。」

やめろ。

やめてくれ、それ以上は。


「でも、ひとつだけどうしても怖くて怖くて仕方ないんだよ。
 ・・・・俺、お前が俺から離れていくのだけは絶対、耐えられない。」
だから。
そう呟いたゼロスはまだ静かに笑ってた。
笑ってたけど、泣いてるようにしか見えなかった。
「俺も、お前が居ないのは嫌だ。絶対に。」
「・・・うん。ありがと。」
「だから・・・」
「でも、ごめん。」
ゼロスは俺が最後まで言葉を発するのを拒んだ。
その声があまりに真剣で。
俺にはもう、どうすることもできないんだって、思い知らされた。
「お前にはコレットちゃんも、しいなも、皆、皆が居る。
 ・・・だから、お前は俺なんて居なくたって大丈夫なんだよ。」

嫌だ、って。
大声で叫んで泣きたかった。
でもお前はそれすら許してくれないんだな?
俺に生きろと。
お前の居なくなった世界で。

俺はもうお前しか要らないのに。

繋いだ手は既に離れてしまったんだ。
これから俺が生き続けるべきとされた世界は、平和。
その中で俺は聞き続けるんだろう。
見ることのできないお前の静かに泣く声を。

誰もが平和で幸せな世界なんて無い。
誰よりも平和と幸せを願う俺が、
一番よくそれを知ることになるのかもしれない。

この世界がお前を必要としないのなら。


俺にこの世界はもう、必要無い。




















END


05「笑い顔が泣いてるぜ?」 ネットに繋げなかった時間に即効で書いた代物です。 本来ならヘイムダールでしてる筈の話なんですけどね。 分岐前にしてくれてたら良いなとか思いつつ。(汗 そろそろネタがマンネリ化してきたのをなんとかしたい・・・;