俺はいつでも死ぬ為の理由を探していた。 お前はいつでも生きる為の道を探していた。 何でここまで正反対なんだろうか。 そう思うと自然に自虐的な笑みがこぼれた。 ―――お前の為の、誰か。――― 「なぁ、ゼロス。」 「んー?何よ、ロイドくん。」 街の中を並んで歩いていた。 ゼロスはいつものようにスペクタクルズを使って女の子を観察。 それをロイドは呆れたように眺めている。 そんなとき、思い付いたようにロイドはゼロスに後ろから声を掛けた。 「お前、楽しい?」 何を聞くかと思えば、そんな単純なことだった。 「そりゃー、美人の女の子を見てて楽しくないワケないでしょうよ。」 振り返るわけでもなく楽しそうな顔をして答える。 ゼロスの楽しそうな顔。 ロイドからみればそれは全然楽しくなさそうで。 只の作り笑い以外の何物にも見えなかった。 「・・・じゃあ、生きてるのは楽しいか?」 ロイドのその一言で、ゼロスの表情が一瞬こわばった。 当然、ロイドはそれを見逃さない。 「・・・ロイドくんは生きてて楽しいのー?」 「当たり前だろ。・・・そりゃ、村を追放されたり、 コレットに辛い思いさせたりで嫌なことも多いけどさ。 それでも、生きてなきゃ楽しいことも無いだろ? 皆や、ゼロスとだって会えたし。旅してるのだって、楽しい。少なくとも俺はそう思うぜ。」 少しでも自分の言葉がゼロスに届けばいい。 そうロイドは思った。 「前向きだなー。・・・じゃあ、俺さまも楽しい。」 「じゃあってなんだよ。」 軽くゼロスを睨みつけてやる。 「んなこと言ったってさー。 実際世の中なんて楽しいことより辛いことの方が多いのが普通だろ。 お前みたいに前向きで一直線な奴じゃない限りは、 みんなそんなに楽しいなんて思ってないんじゃねーの?」 これはまだ本音じゃない。 直感でそう悟る。 ゼロスの顔は相変わらず通りすがる女性達の方を向いていた。 けれど、声はどこか寂しそうで。 今後ろから抱きしめてやったら、少しは本音をぶつけてくれるんじゃないかと思った。 (・・・そんなに、どころか、全然思ってないんだろうな・・・。) いつまでゼロスは独りでいりつもりなのだろう。 生きることに楽しさを見い出せずにただ独りでもがいている。 それは決して生きる為にではなくて、言ってしまえば、死ぬ為に。 何か、それこそ仕事だとか、任務だとかといったものがなければ きっとゼロスはこの世界に留まることを放棄するのだろう。 誰かが留めてやらなければならない。 その「誰か」になること。 それがロイド願いだった。 「折角生まれてきたんだから、ちゃんと楽しんで生きようぜ?」 「・・・じゃ、生きる楽しさってヤツ、俺さまに教えてくれる?」 「いいぜ。・・・・ゼロスが生きてて良かったって言うまで俺が徹底的につきまとってやる!」 「・・・変なトコでもアツイなぁ、ハニーは。」 馬鹿にしたように俺をみて笑う。 でも、ゼロスのちょっとした言葉にチャンスがあるんだ。 下手に悩めばお前はどんどん離れていく。 「俺は、お前を逃がしたりなんかしないからな。」 「・・・なんかロイドくん、最近旦那って感じだよな。」 「お前限定の、な。」 「・・・は?」 俺の一言一言に動揺すればいい。 その中に少しでも楽しさを見つけて欲しい。 生きる為に、生きて欲しいから。END
201「生きる為に死ぬ為に」 主観と客観がごっちゃになってます; ロイゼロっていうよりロイ→ゼロな感じ。