「ゼロス、好きだ!」
「はいはい、そりゃどーも。」
なんでこんなんことになったのかは寧ろ俺さまが聞きたいくらいで。
三日前、ロイドくんとその他大勢の連中と食堂で飯を食ってたときの話。
何を思ったかいきなり俺さまの両手をがっちりと掴み、そらせないくらいの視線を向けて大声で今と同じセリフをその口から吐きやがった。
はぁ?とかそんな驚きとか呆れ方じゃ足りないくらい信じられない話だったんだけど。
ここで取り乱したらジゴロの名が泣く。
ってことで吹っ飛びそうな意識を無理矢理地面に這い蹲せて、我ながら気持ち悪いくらいの営業スマイル。
そんでもって祟ってやるよ、くらいな雰囲気漂わせた声でしっかりはっきりくっきりとお断りしてやった。
当然理由は男なんざ興味ねぇよ、ってことで。
でもそんなんあいつだってわかってるわけだ。
それ覚悟しての告白。俺さまってばつくづく罪な男だよなー。
なんて思えるほどの余裕も与えてくれずに今に至る。
結論言えば、ロイドくんがスケベ大魔王サマから告白大魔王サマに大変身ってこと。
「っ、マジメに聞けよ!」
「俺さまいつでも大マジメですけど〜?」
「ゼロス!!」
口調はこんなんだけどホント、今まで無いくらいにこの状況を打破すべくぐるんぐるん脳味噌フル回転させてるんですよ。
これ以上いくとオーバーヒート確実。そりゃもうオーバーリミッツなんて目じゃないね。
「・・・あのなぁ、俺さまこの前ちゃーんとお断りしたでしょうよ。」
「男同士だからとかそんな理由で断られたって納得できるわけないだろ。」
「・・・しつこい奴は嫌われるぜ?」
「だったらマジメに考えてくれよ。」
マジメも何もねぇだろうが。
そんなセリフが喉元までたどり着いていたがこれ以上話をややこしくするのはこちらとしても願い下げなので飲み込んでしまうことにする。
どうせすぐに飽きるだろうなんて思った俺さまが馬鹿だったよ。
まさか三日も持つなんてな。ロイドくんの興味対象になったもののうちで最高記録なんじゃないか?
少なくとも俺さまの知る限りでは最高だ。そんなの全く嬉しくないけど。
でも、やっぱりロイドはロイドだった。

「なぁゼロス。数学教えてくれ!」
「・・・今度は何だよ。」
翌日には何事もなかったかのように俺さまに接してくる奴が居たわけで。
一体何が起こったのかリフィルさまもかなり驚いてた程のことで、今度は自主的に勉強したいと言い出す始末。
そこまでは俺さま的にも解放されて万々歳な感じだった。
でもロイドが教えてくれと言い出したのは数学。しかも俺さまご指名。
なんでリフィルさまじゃないのかと聞けばなんとなくとしか言わないし。
となれば驚きつつも喜んでるリフィルさまのご命令で俺さまは結局奴に数学を教えなければならないわけだ。
これってある意味地獄じゃないか・・・?
「ゼロス、この問題は?」
「ん?あぁ。これはこーやって・・っと。」
案の定夢でも見てるんじゃないかってくらいにロイドはマジメにお勉強。
すぐに頭良くなるってわけでもないのはわかってるから、教える内容は簡単で宜しい。
だけど、俺さまにしてみればこの空気が嫌で嫌で。
だってさ、昨日まではそれもそれで信じられないくらいにべったりくっつかれてだんだぜ?
それなのに今度は急にお勉強。色気のかけらもなく。
いや、別に何か期待してるなんてことは断じて無いのだけれど。
それでもやはりちょっと、ほんのちょこーっとだけ、寂しいと思うのは間違いだろうか。
矛盾してるとは思うのだけれど、そんな気分はすぐに晴れる筈も無く。
はぁ、と普段ならロイドの方がつきそうな溜息をつく。
「・・・どーした?」
「別にー。」
「・・・もしかして俺に勉強教えるの、嫌か?」
「へ?あ、いや、そんなことは無いって。ロイドくんが頭良くなるのには俺さま大賛成ですし?」
「そっか。」
振り向いて話していたロイドの顔はまたすぐにノートへと移る。
その至極マジメな顔つきが格好良いなんて思ってない。思ってないからな。
「なぁ。」
「ん?何よ、またわかんない問題でもあった?」
今度は振り向かなかったロイドの傍へと寄り、俺さまもノートを覗き込む。
丁度俺さまの顔がロイドの顔の横に来たときその横顔が目に映って。
不覚にもドキリとしたことを悟られていないことを願いつつ、また不自然でないくらいのスピードで顔を上げようとした。

その瞬間に小さく囁かれた言葉を聞かなければよかったと今更ながら後悔している。

「お前!あ、あ、飽きたんじゃなかったのかよ!!」
「いつ、誰がそんなこと言ったんだ?」

真っ赤になった俺さまをみて悪戯っぽく笑ってみせるその顔に泣きたくなるほどの敗北感を覚えたのが情けない。
でも、俺さまこいつに勝てる気もしないんだよな。







あんまり悔しかったから、これから三日間、嫌いだって言い続けてやろうと思う。


















END







110「確信犯」
接続詞の使い方がわからない今日この頃・・OTL