「それから眠ったままのゼロスを洞窟内に残し、ロイドは不本意ながらも一度外へでて現在の状況を確認することにした。
あれからまた雨の音は弱まり、今ではおそらくもう止んでいるのだろう。
薄暗い足元に気をつけながら手探りで入り口へと戻る。
冷たい風が吹き抜けて来たと思えば既に日は沈んでいた。
「・・・皆とはぐれてから結構経ったんだな。」
心配しているだろうか、と仲間達の顔を思い浮かべて気は落ち込む。
ロイドとしては具合の悪いゼロスを動かしたくは無いのだが、自分が仲間達を探しにでてゼロスをひとりにするわけにも行かなかった。
それに、日が沈んでいてはこの鬱蒼とした森を抜けることなど叶わないだろうと思い、今日のところはこのままここに居るしか無いと判断する。
そうと決まれば早くゼロスの傍に戻ってやりたいと結局洞窟から完全に出ることはしないであっさり踵を返した。
しかし、ロイドの体がまた闇に紛れようかという時。
「・・・!?ッ、これは!?」
ドドドドド、とまるで穴に落ちるような感覚がロイドを襲った。
それはつい最近に感じたことのある震動で。
「まさか・・!あの魔物まだ生きてたのか!?」
地震にしてはあまりにも不自然な地鳴り。
そう、これはゼロスを崖から突き落とした原因であるあのとてつもなく巨大な魔物の歩く、というより暴れている時のものであった。
散々攻撃を喰らわせ、あと一息といったところで崖から落ちた魔物。
到底生きていまいと半ば確信していたのだが、どういうことかまた目にかかるだろうとは思ってもみなかった。
それに、この状況で遭遇したとしても、まず勝てるだろうとは思えない。
大体、今ゼロスは負傷してるいるのだ。
これ以上騒動に巻き込まれたら只では済まないことも少し考えればわかることだった。
「・・・くそっ!どうすれば・・!!」
真っ暗な闇に閉ざされた世界。
この闇に紛れて自分達の姿が見つからなければいいとロイドは願った。
しかし、足音は確実に自分達の下へと近づいてくる。
こんなとき、ロイドは自分の無力さを痛感する。
先刻、守ると誓ったばかりだというのに。
「・・・俺は・・・俺はまた、ゼロスを守れないのかよ・・!!」

そんなの、嫌だ。

振り返って闇を見据える。
そこに静かな微笑を向けて。



やがてロイドは、雨の上がった森へ一目散に駆け出した。



















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