それでも俺が俺であると信じていられる、お前へ。



フラノールに居るわけでもないというのに目の前に振る雪の白さに気分が悪くなる一方だった。
それは今から救いの塔へと向かおうとしている俺さまにとっちゃ、最高に残酷な死刑宣告。
きっと神サマってもんが存在するなら、この日、この雪が降るのはきっと計算ずくであるのだろう。
俺さまはどこまでも嫌われているのだ。

世界に。

「うわー!寒っ!・・・折角フラノール出てきたっていうのになー。」
「・・・・ホントにな。あ、さてはロイドくん雪に飽きたんだろ?」
「べっ、別に飽きたって訳じゃないけどさ!」
「けど?」
「・・・やっぱり、寒いのより温かいのの方がが良いじゃん?」
そうやって今から死のうとしてる奴に笑いかけるお前は残酷な奴だよ。
確かに寒いのより温かいのが好きだって意見には俺さまも賛成。
けれど、この無慈悲な世界に生きるもの全てが日溜りに浸っていられるわけじゃない。
お前はどんなに凍て付いたものでさえ溶かしてしまいかねない太陽だから。
だから、ずっとこの日の下に居てもいいんだ。
「確かに寒いのは御免ー。・・・でもなぁ。」
「でも?なんだ?」

「俺には雪の方が似合ってると思わないか?」

今まで必死で雪を振り払おうともがいてきた人生。
でも、俺さまが嫌だというのとは裏腹に、どうやら雪は俺さまが好きらしい。
あぁ、最後の最後まで雪が付き纏うのか。
「んー・・・、まぁ、お前紅いからな。確かに似合ってるよ、雪。」
「・・・だろうな。」
「?・・・ゼロス?」
お前には、太陽が似合うよ。
そんなこと今更言葉にする気もないけれど。
「・・・だから・・・俺はお前の傍に・・・居られない。」
「・・・?」
下を向いて小さく呟いたのだから良かった。
だが、もしも。もしも今の言葉をお前が聞いていたとしたら?
お前はなんて言うんだ?・・・怒るのか?
「どうしたんだよ、ゼロス。」
「・・・べっつにー?それより早く行こうぜ、ロイドくん。」
今更何を考えているのかと自分を笑いたくなった。
もう、決めてしまったのだ。全て。
心地よいと感じてしまったこいつの隣に居る時間も投げ捨ててしまおうと。
そう思って先に立った俺さまに掛けられた言葉は只一つ。

「確かに雪は似合ってると思うけど、お前は温かいから太陽の傍に居るべきだと思うぜ?」

俺にとって温かいんじゃなくて熱過ぎる、言葉。
なぁ、俺さまお前と一緒に居ても良かったのか?
気づいたときには、紅い、紅い雪が見えて。







やがて俺は雪と共に溶けて、消えた。






END





07「紅い雪が見える」
深読みしないと何がなんだかわからないような・・・;

back