「辞典って、痛いよな。」
「はぁ?」
何を言い出すかと思えば。
窓際にぼーっと手を付いて外を眺めていた俺さまにかけられた言葉。
それはあまりに唐突で理解不可能なもので、ポーカーフェイス、とかそんなことも忘れて思わず素で呆れてしまった。
辞典が痛いのか?わけがわからん。
話をするときはもうちょっと相手を労って下さい。
「だって、重いし、厚いし、絶対痛いだろ。」
んーと、もしかして、もしかしなくてもそれは殴られた時のハナシ?
・・・そりゃぁ痛いでしょうよ。
角で殴られたときにゃ気絶は必至だと思うしな。
「・・・辞典は正しく使おうぜハニー。」
「むっ。お前、俺が辞典を使ったことないとでも思ってんだろ!!」
「違うのか?」
「・・・ち、違わないけどさ。」
俺さまのロイドくんに関する勘はここのところ百発百中なわけで。
今もまた予想してみれば、お勉強中だったこいつの課題がよくある語句の意味調べだとかそこらだったんだろうな。
んで、面倒くさくなって結局その分厚い辞典を使わないでずーっと投げたりなんかしてた遊んでたってってとこだ。
じゃなきゃ先刻みたいな感想が出てきてたまるか。
「・・・ロイドくん。それで[馬鹿]って言葉でも調べてみたら?」
「どういう意味だよっ!!」
「・・・じゃ、ソレ漢字で書ける?」
「・・・うっ・・・。」
即座に言葉を無くすほどに正直なこいつはやっぱりどうしようもなく馬鹿だと思う。
でも、その馬鹿さが堪らなく愛おしくて。
「なぁ。」
「・・・なんだよ。」
「その辞書使っていいからさ。・・・・書けたらキスしてやるぜ?」
そう真顔で言ってやったら一瞬ロイドくんの思考は停止したみたいだった。
けれど、すぐにその内容を理解したのか何なのか。
顔を真っ赤にして辞典を開く。
「・・・痛て!」
・・・慌てすぎて足に思いっきり落としたよこいつ。
思いっきり笑ってやりたいのは山々だけど顔真っ赤にしながらも真剣な顔してるから、やめとく。











こうやって俺さまだけを見てくれるこいつが、すき。








END





318「勘」
ロイゼロな筈なのにゼロロイっぽい。

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