会いたい。
そう呟く声がどこかで反響して消えた。
幾度と無くそう声に出して見ても実現することなどない。
どこを探したってお前はもう居ないんだ。
そんなの、わかってるよ。

『信じてくれ』
いつでもそう訴えていたゼロスの瞳がいつまでたっても俺の脳裏から離れようとしない。
決してあいつはそんな言葉を口にしようとしなかったけれど。
いつだってそうだ。
あいつが話すひとつひとつには何か物足りなさを感じていた。
愛してるって、よく口にするんだ、あいつ。
けどさ、皆そんなの冗談だとしか思わないんだよ。俺だって。
ゼロスの愛してるって言葉が薄っぺらいものだとしか思えないから。
でもそれは仕方の無いことだろ?
ただ口々に愛を語ったところでそれは誰にでも分け隔てなく与えられているもので。
そう、あいつが俺に対して使った愛って言葉だって、所詮その程度なんだって、俺は無意識に確信してた。

「・・・あい、して、る。」

俺は誰にもそんな言葉言ってみたことないから。
誰に届くわけでもなく呟くのにだってぎこちなくなるんだよ。
俺、お前ほど愛って言葉を知らないからさ。

でも、お前ほど、愛を求めてもいないんだ。



お前が居なくなった今だからこそわかる。

愛、相、間、合、埃、哀、曖

お前は「アイ」って言葉にすべてを込めて。
愛しさも、信頼も、関わりも、煩わしさも、悲しみも、暗闇も、全部。
愛してるって言うたびに、愛してほしいと願うお前の姿が鮮やかに蘇る。


俺はお前の眠る土の上で泣いてやるよ。

そして呟くんだ。



俺はお前を

相して、間して、合して、埃して、哀して、曖して


愛して、止まない。



「ゼロス・・・。」



あの時この言葉を捧げられずに手放したものは何よりも大きくて

 

「・・・愛してる。」













愛して下さい。
今だからこそお前の愛が、欲しい。







END





09「俺を惑わすな」
もう二度と会えないと考えたときの寂しさが痛い。

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